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ものがたり

『宇宙級初恋』先行連載 第7回 こ、告白?


となりのおうちにひっこしてきたのは、地球でいちばんカッコいい男の子!?

学園ラブコメ「ぜったいバレちゃいけません!!!」で大人気♡ 水無仙丸さんの新シリーズは、
反則級にときめくカレと、地球でいちばんステキなロマンチックラブ♡

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運命の人っているのかな?
そもそも、出会ったその人が運命の人ってどうやってわかるんだろう?

だけど。
この地球の遠くの向こう、
何光年も先からやってきたキミと出会って、
ひと目見て分かったよ。

キミがわたしの運命の人だ、って──

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前代未聞の宇宙級「ご近所」ラブ♡♡♡
となりの家に引っ越してきたルカくんと、もっと仲良くなりたい――とは思ってたけど、このドキドキは反則です!!!

7.こ、告白?

「──お、お、おじゃましますっ……!」

 何度もおじぎをしながら、上がらせてもらう。

 お庭もきれいだけど、おうちの中もきれいだ。

 というか、ふつうの家だ。

 地球では見たことのない機械とかがあるのかなあ~と思っていたけど。

 家の中のものもぜんぶ、地球の人たちが用意したんだろうな。

「紅茶でよかったかな」

 ルカくんが、紅茶を運んできてくれた。

 私は、ソファーにおそるおそる座る。

 うわあ、ふかふかだ。

「……ル、ルカくんは、バイオリンがひけるんだね。さっきの、すごく上手だったよ!」

「ありがとう。今日はじめてさわったから、見よう見まねだけどね」

 ……今日、はじめて?

 いやいや、バイオリンって、はじめてであんなにひけるような楽器じゃなかったはず……。

「僕の星にも楽器はあるけど、地球の楽器もすごくおもしろいね。宇宙船の中とは、音の響き方もぜんぜんちがうし。ほかの楽器もひいてみたいな」

「さっきひいてたのは、なんていう曲なの?」

「ごめん、知らないんだ。地球の動画で流れてたのを聴いて、そのままひいただけだから」

「そのまま……? 楽譜を見ながらひいてたんじゃなくて?」

「ううん。動画で聴いただけ」

「え、聴いただけでひけるの!?」

「一度聴けば、大体の曲は演奏できるよ」

「ええええすごいっ! それって、ラーナ星の人はみんなできるの?」

「いや……僕のまわりには一人もいないかな」

「じゃあルカくんは、ラーナ星でもすごいんだね!」

「どうかな。こんなことができても、なんの役にも立たないって、言われたことあるし」

「えっ、なにそれひどいっ!」

「両親や友だちは、いつもほめてくれたんだけど。音楽家になる予定がないのであれば、まったくのムダな行為だって、ある人に言われたんだ。それからは、音楽が好きってこと、あまり言わないようにしてた。だから今日はひさびさに演奏できてたのしかったよ」

 ルカくんが、眉を下げて、ちょっとさみしそうにほほえむ。

 なにそれなにそれっ、そんなひどいこと言うのは、どこのどいつよ!

 お兄ちゃんとか竜晴が言いそうなセリフだわ!

 ぐあーっ、ひどい!

「あのねルカくん! 好きなものを『好き』って言ったら、もっと好きになれるんだよ!

 お母さんが言ってた。

 だから、かくしたりせずに、どんどん言っちゃいなさいって。

 ルカくんが、大きな瞳を、さらに大きくさせた。

 ──あれ、私、なんか変なこと言っちゃったかな?

「……じゃあ、告白しちゃおうかな」

 ドキッとした。

 ──こ、告白?

 ルカくんの瞳と、視線が合う。

「実は、地球に来てすぐに……好きになってしまったんだ

 ドクリ、と心臓が大きくはねる。

 とっても真剣な表情だ。

 星空みたいにきれいな瞳に見つめられて、目がそらせない。

 かなしばりにあったみたいに、体もうごかせない。

「頭からはなれなくて、昼も夜も、ずっと考えてしまうくらいに好きなんだ……

 どうしよう、どうしよう。

 そんなこと急に言われても。

「……メロンパンが」

 メロンパンだった────!!

「すごくおいしいよね! あんな味の食べ物、ラーナ星にはないからびっくりしたよ!」

 ひえええええー。

 なんかムダにキンチョーしちゃったあー!

 そうかそうか、メロンパンかあー!

 気に入ってもらえてよかったよー!

「あ、そうだ、母さんが焼いたケーキがあるんだ。持ってくるからちょっと待ってて」

 ルカくんがキッチンにむかうと、リビングはしんとしずまりかえった。

 スーハースーハーと大きく深呼吸してから、部屋の中をゆっくりと見まわす。

 棚の上に、目がとまった。

 トロフィーや表彰状、なにかを受賞した時のルカくんの写真が、たくさん飾られている。

 これ、ぜんぶルカくんがとったものなんだ?

 すごいなあ、スポーツ系の賞から、論文やスピーチの賞、いろんなのがある。

 こうやって表彰されるってことは、やっぱりルカくんはラーナ星でも優秀なんだね。

「──おまたせ」

 ルカくんが持ってきてくれたのは、ふわふわのシフォンケーキだった。

「うわあ、おいしそう! 見た目もめっちゃきれい!」

「ありがとう。これも地球の資料データを見ながら、母さんがつくったんだ。クリームをつけて食べると、よりおいしいって書いてあったよ」

「やってみる!」

 そえてある生クリームをつけて食べると、とろけるようなあまさが口いっぱいにひろがった。

「おいしい~~~~っ! ルカくんのお母さんも、料理の天才だね!」

「あはは、大げさだよ」

 ルカくんが、ころころと笑う。

 不思議だなあ。

 ルカくんが笑うと、体がふわっと宙にうかぶような感覚になる。

 これって、なんだろう?

「つばさちゃんは、シフォンケーキって、よく食べるの?」

「うーん、最近はあんまりかな。お母さんが生きてたころはよく食べてたけど」

「つばさちゃんのお母さん……亡くなったの?」

「うん、あのね──」

 ──シフォンケーキを食べながら、いろんな話をした。

 私のお母さんのこと。

 それから、ルカくんのことも。

 ルカくんのお父さんは、お薬をつくる薬学博士で、お母さんは刑事さんなんだって。

 なんか、わかるう~!

 お父さんは知的な感じがしたし、お母さんは背筋がまっすぐで、きりっとしてたもん!

 ルカくんたちはみんな、宇宙船で生まれて、宇宙船で育った

 宇宙船の中には、学校やスーパーマーケット、マンションや公園もあって、街のようになっているんだって。

 すごいよね、私も一度行ってみたいなあ!

 種類は地球よりすくないけど、植物もあるし、動物もいるらしい。

 じゃあ、地球の生活とそんなに変わらないよね。

 なんの不自由もなさそう。

 でもラーナ星の人たちは、「自分たちの住める星をずっとさがしてた」んだって。

 そりゃそうか。

 いくら快適でも、宇宙船がいつこわれるか、わからないしね。

「──宇宙ってね、本当に真っ暗なんだよ。どこまで行っても色がない、音もない」

「音も聞こえないの?」

「空気がないからね。音は、空気の振動でつたわるものだから」

「あ、そっか。でも宇宙船の中は、聞こえるんでしょ?」

「うん、宇宙船の中はね。でも窓の外は、いつ見ても闇だけがずっとひろがってる」

 紅茶を飲みながら、ルカくんがしずかに言った。

「宇宙を、『生命の源』なんて表現する人もいるけど、僕にはそう思えなかった。どちらかというと、宇宙には『死』のイメージしかない。僕たちラーナ星人は、死の世界をさまよってるんだって、ずっと思ってた」

 たしかに……宇宙は真っ暗だもんね。

 色も音もないなら、死の世界って思うのも、わかる気がする。

「燃えてる星や、公転してる星もたくさん見たけど、どの星も『生きてる』って感じがしないんだ。月だって、ちかくで見ると、ただの石のかたまりだし」

 え、そうなんだ。

 地球から見ると、月は光っててすごくきれいだけど……。

 そっか、月は自分で光ってるワケじゃないんだもんね。

 ちかくで見ると、石のかたまりなんだ……。

「僕たちはこのまま、真っ暗な中で、絶滅するんだって思ってた」

 一億年もの長い間、宇宙船で旅をしていた、ラーナ星のひとたち。

 真っ暗な宇宙をさまようって、どんな感じなんだろう。

 そりゃあ、不安にもなるよね。

 私のお母さんは、宇宙の話をいつもたのしそうにしていたけど。

 宇宙って、たのしいだけじゃないんだね。

「だから、地球はまさに希望の星だったんだよ!」

 ルカくんの瞳が、急にかがやきはじめた。

「はじめて見た時はおどろいたよ。黒い宇宙に、青い地球が一つだけうかんでてさ。よく見ると青だけじゃないんだ。黄色とか白とか緑とかピンクとか、たくさんの色が混ざりあって、それぞれが光をはなっていて、『あの星は生きてる!』って、一目でわかったよ!」

 すっごくうれしそう。

 ルカくんの大きな瞳が、私をまっすぐにとらえている。

「やっと出会えた。ずっとさがしてたんだ、ずっとずっとさがしてたんだよ!」

 星よりもキラキラした瞳が、私の目の前に。

 ど、どうすればいいの。

 胸のドキドキが止まらないっ。

 お……落ちつくのよ、私。

 ルカくんは、地球のことを言ってるんだからね!

「その時の写真、こっちのスマホにも転送したんだ、ほら見て!」

 見せてくれたスマホに、ルカくんが撮影したという地球の写真が、いくつも保存されてあった。

 へえ、たしかに、こうやって見ると、地球ってすごくきれいだ。

 ふだんは地球の姿なんて、あんまり見ることないからなあ。

「これ、ルカくんのスマホ?」

「うん。地球の人たちが用意してくれたんだ。これがないと地球での生活が不便だろうって」

「いいなあ。私もスマホほしいって、ずっとお父さんに言ってるんだけど」

「つばさちゃんのお父さん、たのしい人だよね。お兄さんと弟くんもやさしいし」

「ええー! どこがあ?」

「つばさちゃんには、なんでも言いあえる兄弟がいて、うらやましいよ」

 そう言ってほほえむルカくんの表情は、どこかさみしそうに見えた。

 ルカくんは、ひとりっこなのかな?

 私が聞こうとした時、

「──あ、虹だ!」

 ルカくんが窓に駆けよる。

 窓の外を見ると、虹がかかっていた。

「つばさちゃん、あれ虹だよね!」

「そうだよ。見るのはじめて?」

「うん! 写真では見たことあったけど、この目で本物を見るのははじめてだよ! すごい、本当に七色だ……!」

 ルカくんが、窓から身をのりだして、感動している。

 もともとキラキラしている瞳を、さらにかがやかせて。

「きれいだなあ。どこまでつづいてるんだろう」

 虹に見とれていたルカくんがとつぜん、いきおいよくむき直った。

「──ねえ、つばさちゃん、虹のはじまりをさがしにいこうよ!

 びっくりした。

 びっくりしすぎて、かたまってしまった。

「あ、ごめん、とつぜん変なこと言って……」

 うごかなくなった私を見て、ルカくんが頬を赤くした。

「虹のはじまりに、たどりつけるかはわからないけど……。でも、つばさちゃんとなら、さがしてみたいなって。虹のはじまりには、なにかステキなものがあるんじゃないかなって。そんな気がしたんだ」

 そう言って、ルカくんがほほえむ。

 私の胸が、高鳴った。

 

私が大切にしているものを一緒に大切にしてくれる人って、もしかして――……。


第8回に続く>

【書誌情報】

1月発売予定の胸キュン新シリーズ『宇宙級初恋』!
地球でいちばんステキな男の子と、ウルトラ級にときめく初恋がはじまります!


作:水無仙丸  絵:たしろ みや

定価
814円(本体740円+税)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046322593

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