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となりのおうちにひっこしてきたのは、地球でいちばんカッコいい男の子!?
学園ラブコメ「ぜったいバレちゃいけません!!!」で大人気♡ 水無仙丸さんの新シリーズは、
反則級にときめくカレと、地球でいちばんステキなロマンチックラブ♡
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運命の人っているのかな?
そもそも、出会ったその人が運命の人ってどうやってわかるんだろう?
だけど。
この地球の遠くの向こう、
何光年も先からやってきたキミと出会って、
ひと目見て分かったよ。
キミがわたしの運命の人だ、って──
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前代未聞の宇宙級「ご近所」ラブ♡♡♡
私、紺野つばさ。となりの家にやってきた超かっこいい男の子・ルカくんが、ちょっぴりワケアリだったんですが!?
5.つばさちゃん、おはよう
『つばさが大人になるころには、宇宙船の中で結婚式とか、月で暮らす人もいるかもね』
『宇宙空間で生まれた人は、地球をながめて育つのよ。それって最高にステキじゃない?』
『地球以外にも住める星がきっと見つかるわ。宇宙人にも会えるわね! たのしみ!』
──宇宙の話をする時、お母さんはいつも、子どもみたいにはしゃいでた。
プラネタリウムで働いていたお母さんは、空や星、宇宙の話が大好きだった。
だけどそのころの私は、あんまり興味がなくて、
『宇宙人よりも、運命の人に出会いたいよ』
なんて言っていた。
だから、お母さんに聞いたんだ。
運命の人って、どうすれば見つかるの? って。
そしたらお母さんは、こう答えてくれた。
『運命かどうかはわからないけど。おたがいの気持ちを、大切にしあえる人と出会えたらステキだよね』
『おたがいの気持ち?』
『そうよ。つばさの気持ちを大切にしてくれる人に出会ったら、つばさも、その人の気持ちを大切にしてあげるのよ』
『それが私の運命の王子さまってこと!?』
『恋愛のことだけを言ってるんじゃないのよ。相手の気持ちを大切にするっていうのは、友だちや家族のことも──』
『わかってるけどお~! やっぱり運命の王子さまには会いたいじゃん!』
『ふふ、つばさらしいけどね』
『お母さんは、お母さんの気持ちを大切にしてくれる人と出会えたの?』
『うん、それがお父さんだけど』
『ええ────ッ!?』
『なんでそんなにおどろくの?』
だって、あのお父さんだよ!?
私は、それまでずっと疑問だったことを、おもいきってぶつけてみた。
『お母さんはさあ、なんであんなダメな感じのお父さんと結婚したの?』
『あはは、ダメな感じかあ~』
『前からずっと聞いてみたかったの!』
『あのね、お父さんに、地球最後の日になにがしたい? って聞いたら、その答えがすごくおもしろくてね。こんな人と結婚したらたのしいだろうなあって思ったの』
『地球最後の日に、なにがしたいか……?』
『つばさも、好きな人ができたら聞いてみるといいよ』
『それを聞いたら、その人が自分の運命の王子さまかどうかがわかるのっ!?』
『うーん、どうかなあ。でも、その人がどんな人なのか、なにを一番大切にしているのかが、すこしだけわかると思うんだ』
『そっか。じゃあその質問で、私だけの運命の王子さまを見つけてみせる!』
『つばさはどう?』
『え?』
『つばさなら、地球最後の日に、なにがしたい?』
『ええー? そんなの、急に言われてもわかんないよ』
あの時は、なにも答えられなかったけど。
今、あらためて考えてみる。
地球最後の日に、なにがしたいか。
やっぱり──大切な人を守りたい。
私の大切な人たちが、痛い思いや、こわい思いをしないように。
それから、みんなが住める新しい星をさがしたいな。
地球が最後をむかえるころには、お母さんが言ってたみたいに、見つけられるかもしれない。
新しい星が見つかったら、お母さんよろこぶだろうなあ。
そう、ラーナ星みたいな……。
……あ、そうだ思い出したあっ!
「──宇宙船が地球に来たんだよお母さんっ!」
ぱちっと目を開けて見えたのは、白い天井。
カーテンのすきまから、朝日が射しこんでいる。
(……なんだ、朝かあ)
のそりと体をおこす。
お母さんの夢を見ていたような気がする。
ニュースで宇宙船とか見たからかな。
昨日はいろいろあったし。
いろいろありすぎて……それこそぜんぶ夢だったんじゃないかなあ、なんて。
「……おなか空いたな」
朝ごはん、なんだろ。
今日の朝ごはん当番は、たしかお兄ちゃんだ。
なんて考えながら、キッチンにむかった。
「──つばさちゃん、おはよう」
キッチンで、ルカくんがエプロン姿で朝食をつくっていた。
「えええええええッ! なにこれええええっ!?」
「あ、ごめん。パンよりごはんのほうがよかったかな?」
「ちがうちがうそうじゃなくてっ! ルカくん、うちのキッチンでなにしてるの!?」
「え……地球では新しい街にひっこしたら、となりの家の朝ごはんをつくることで、家族の健康と長寿を願う風習があるって、教えてもらったから……」
「だれにッ!?」
「つばさちゃんのお兄さんに」
「コラァ────ッ! 腹黒兄貴どこだ出てこお────いッ!」
家中をさがしまわったけど、お兄ちゃんの姿が見つからない。
お父さんに「飛隆なら、もう学校行ったぞ」と言われて、私はうなだれる。
「一足おそかったか……!」
今日は、お兄ちゃんが朝ごはんの当番だ。
朝ごはんつくるのがめんどうになったお兄ちゃんが、ルカくんに押しつけたにちがいない。
なんてやつなの!
「まあ、せっかくだから、みんなで食べよう!」
お父さんの一声で、翔もやってきて、全員でテーブルに着いた。
もちろんルカくんも一緒に。
(──昨日のことは、夢じゃなかったんだね……)
ルカくんの横顔を、そっとぬすみ見る。
どこも変わったところのない、ふつうの男の子なのに――。
「──朝からすごいごちそうだなあ」
お父さんの声に、私はテーブルの上の料理をあらためて見て、おどろいた。
「こ、これっ、ルカくんが一人でつくったの!?」
カラフルなサラダに、たまごとベーコンがのったマフィン、おいしそうなスープまで!
すごいっ、おしゃれなカフェのメニューみたい!
あ、このたまご、テレビで見たことある!
黄身がじゅわ~って出てくるやつだ!
「このたまご、なんて言うんだっけ! なんとかエッグ……だよね!」
「ポーチドエッグだよ」
ルカくんがやさしく教えてくれて、思わずドキッとする。
だってクラスの男子だったら、「そんなことも知らねえのかよ」ってバカにしてきたり、「しょーがねえな、俺が教えてやるよ」って、えらそうに説明してきたり、だもん。
私はますますうれしくなった。
「すごい! 一度食べてみたかったの! ルカくんなんでこんなすごいのつくれるの?」
「地球側の宇宙省の人が、地球の資料をたくさんくれたんだ。地球で生活するなら、必要だろうって。その資料の中に、料理のデータもあったから」
──そう、ルカくんは地球人じゃない。
ラーナ星という、遠い星から宇宙船でやってきた男の子なのだ。
『──われわれ地球人がっ、長年待ちのぞんでいたっ、歴史的瞬間をっ、目の当たりにしてっ──ゲホゲホゲホッ!』
「リポーター興奮しすぎだろ」
お父さんが、マフィンをかじりながらテレビにツッコミを入れた。
どのチャンネルも、この話題ばっかりだ。
日本のえらい人と、ラーナ星のえらい人が、あくしゅをしている映像が、何度も流れる。
『えー、ラーナ星はですね、今から一億年ほど前に、小惑星がしょうとつしたのですが、その時に、住人たちは、宇宙船で脱出したそうです。それから宇宙を旅しつづけ、ようやくこの地球に、たどりついたということなんですね!』
リポーターの人が、鼻息をあらくしながら説明している。
ルカくんたちは、すっごく長い時間をかけて、地球にやってきたみたい。
一億年前に星を脱出したってことは……。
「宇宙船、こわれないの? 一億年も旅してるんだよね?」
私が聞くと、ルカくんが「大丈夫だよ」と答えてくれた。
「何度も修理しながら旅をしてるんだ。でも、そろそろ限界かもって話が、最近になって出てたらしい。そんな時にちょうどこの地球を見つけたんだ」
「うわあ、いいタイミングだったんだね」
宇宙船がこわれる前に、地球が見つかってよかった。
『──ラーナ星の総人口は、一億二千万人ほどだと聞いていますが、どの国に、どれほどの人数を住まわせるのか、政府はちゃんと考えているんでしょうかねえ?』
テレビの中で、タレントや政治家、専門家たちが話しあっている。
むずかしいことはよくわかんないけど、とにかく……。
私たちが知らない間に、宇宙船が地球に到着していて。
さらに、私たちが知らない間に、地球に住むことにきまった。
ということだね。
ルカくんたちラーナ星人は、見た目も、体のつくりも、私たち地球人と一緒。
テレパシーとか、空をとべるとか、そういう不思議な能力も持っていない。
だから、地球人となにも変わらないんだよね。
でも、ラーナ星人の体が、地球に合わない場合も、あるかもしれない。
なのでまずは、少数の人だけが、地球での「おためし生活」をすることに。
それが、ルカくん一家だ。
ちなみに宇宙船は、月面にとめて、ラーナ星人たちはその中で待っているらしい。
おためし生活で安全だとわかれば、すこしずつ地球にやってくるんだって。
そうそう、今朝になって、宇宙省ってとこから、うちに電話があったみたい。
「おたくのとなりにラーナ星人が住みますのでいろいろよろしく!」だってさ。
いやいやもう……連絡がおそいし、丸なげ感がすごい。
まあ、ハチャメチャに混乱してるんだろう、地球全体が。
宇宙省ってのも、昨日、あわててつくったみたいだし。
(──でもまさか、本当に宇宙船が地球にやってくるなんて……)
お母さんが生きてたら、泣いてよろこぶだろうなあ。
世界中が混乱している様子をテレビで見ながら、ぼんやりと考える。
「──つばさちゃん、おいしくなかったかな?」
ルカくんが、不安げに顔をのぞきこんできた。
星空みたいな瞳に見つめられて、心臓がはねあがる。
「そそそんなことないよっ! こんなおいしい朝ごはん食べたのはじめてだよ!」
「本当に? それならよかった」
心の底から、安心したように笑う。
うれしそうな笑顔に、ドキリとした。
私がおいしいと思ってることを、そんなによろこんでくれるなんて……。
ルカくん、やさしいっ!
「……あの、でも、ごめんねルカくん……お兄ちゃんが言ったことぜんぶウソなの。となりの家の朝ごはんつくって家族の健康と長寿を願う風習なんて、ないから……」
私が言うと、ルカくんが、じっとなにかを考えこむ。
お……怒ったかな。
そりゃ怒るよね。
ルカくんもクラスの男子みたいに、どなったり、ものをけったり投げたりする……?
「──そっか。でもそのおかげで、こうしてつばさちゃんと一緒に朝ごはん食べられたし。地球の料理も覚えられて、つばさちゃんにおいしいってよろこんでもらえたし。僕にとってはいいことづくしだよ。お兄さんは、僕のためにウソをついてくれたのかもね」
ルカくんが、にっこりとほほえんだ。
クラスの男子と、ぜんぜんちがった……!
そして笑顔がまぶしいっ……!
「あ、つばさちゃん、たまご」
「え、たまご?」
ルカくんの指先が、私の唇のはしっこに、ちょんとふれた。
「たまご、ついてたよ」
ルカくんが、またにこっとほほえんだ。
ひいええええっ!
私は口を押さえて、思わずのけぞった。
顔面に、熱が一気にあつまっていくのが、自分でもわかる。
私、今、ぜったいゆでダコより赤いと思うっ!
「いやあ~、ほんと悪いねえルカくん、いろいろありがとうねえ~」
お父さんが、サラダをモッシャモシャ食べながらあやまってる。
……ほんとに悪いと思ってんの?
お父さんの顔を見たら、一気に熱が冷めていくわあ……。
「しっかしうまいねえ~、ルカくんもしかして料理の天才じゃないか?」
お父さんが言うと、ルカくんは「いえ」と首をふる。
「料理は昔から好きですけど、地球の料理は、まだ覚えたてですから。地球のみなさんにはとうてい敵いません」
「いやいや、こんだけつくれるのは、スゲーことだよ。つばさなんてさあ、生まれてからずっと地球に住んでるけど、地球の料理なんにもできないんだよ?」
「やめてお父さん」
「うちは家事が当番制だけど、つばさには料理担当はさせないことになってるからね」
「やめてってば」
「つばさにおにぎりつくらせたら、形がぜんぶアメーバになるしな」
「お父さん、マジでやめて」
「朝、顔洗ってたら、小指が鼻の穴にいきおいよく入って鼻血出して学校休んだことあるしな」
「なんの話よッ! 料理の話じゃなくなってるじゃん!」
お父さんよけいなこと言いすぎっ!
ルカくんが、クスクス笑ってる。
うわああ、もお~、はずかしいよぉ~っ!
【書誌情報】
1月発売予定の胸キュン新シリーズ『宇宙級初恋』!
地球でいちばんステキな男の子と、ウルトラ級にときめく初恋がはじまります!