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ものがたり

『社長ですがなにか?』1巻無料公開 第2回 はじめての商品開発!

――さあみんな、アナタのチカラでセカイをおどろかす準備はオーケー?

自称「ひらめきの天才」元気いっぱいでたくさん食べる 小学生社長――萌黄くらら
通称「センスの王子」スポーツ万能で絵もスゴイ! クールな天才――青羽 玄
通称「交渉のプロ」どんな情報もおまかせあれ♪ おだやかな切れ者――白瀬 凛


あたしたち「ペーパー・エア・プレイン社」ってホンモノの会社をやってるんだ!

見てて☆ この3人なら、どんなに「売れないよー!」って思われてたものでもヒット商品にできちゃうし、すっごい強敵なオトナ相手の勝負にだって勝てちゃうんだから!

すべてのきっかけは、去年の夏――凛のとつぜんのおさそいからはじまったんだ!

2.はじめての商品開発!

「「商品開発イベントぉ?」」

 

 はじめて聞く名前に、あたしと玄はそろって首をかしげた。

「そう! 三人で参加しようよ。ぼく、ぜったいやりたいんだ」

 めずらしい〜。凛がじぶんから「コレがしたい!」って言いだすなんて。

 ふだんは、だれかの「したいこと」のためにテキパキ動く、デキすぎる『右うで』だから。

 でも、そもそも、その前に……。

しょーひんかいはつって、ナニ?」

「フフフッ。なんだと思う? 十秒でお答えくださいっ」

 クイズがはじまった! 凛、なんか、おもしろがってる?

 え〜、開発ってことは……なんか、博士っぽいカンジ? 博士といえば……バクハツ?

「あっ、理科の実験だ!」

「ハイ、ちがいます。玄は分かった?」

「お前が、そんなニタニタ顔をしているときは、おれたちがぜったいに答えられないって分かってるときだ。からかってないで、さっさと言えよ」

「ホント、いつもノッてくれないね。まあいいや。すごーくカンタンに言えば、『ものをつくる』イベントだよ」

「図工ってこと? うわ〜、それもニガテだ〜」

「くらら。このイベントは学校の授業とはちがうんだ。『もの』っていうのは、お店で売っているような『商品』のことだよ。ランドセルやふだん着ている服……ピザやドーナツみたいな食べものとか。でもだからって、ぼくらが糸でぬったり、料理をしたりするわけじゃない」

「じゃあ、なにをするんだよ?」

「テーマに合った商品をつくるための、アイデアを考え出すんだよ」

 ピンッと、人さし指を立てる。

「優勝すれば、審査員の会社が、そのアイデアを形にして、お店にならべてくれるんだ」

「ん〜。じゃあ、あたしのパパとママのおしごとみたい……ってこと?」

 パパたちは、お菓子メーカーの『企画部』っていうところで働いている。

 そこで毎日、アイデアを出し合って、新しいお菓子をつくっているんだ。

「そうだね」凛が大きくうなずく。「イメージはそのとおり。どう? やってみたくない?」

「それなら、うん! アイデアを出すのは好きだし」

 それに、夏休みにしかできないことは、なんでもやってみたいもんね。

「おれはパス

 玄は、ズバッとことわる。

「なんで? 夏休みなんだし、いっぱい思い出つくろう!」

「お前が計画した花火大会とバーベキューと潮干狩りで、じゅーぶん」

 むぅ〜、手ごわい。まあ、ふだんから、イベントごとに、はしゃぐタイプじゃないもんね。

 参加しても、たんたんとしてるっていうか。負けずぎらいではあるけど!

「野球の練習もしたいんだよ」

「え〜」

「ヒトごとみたいな言い方すんな。お前ら二人も、同じチームだろーが」

「うぐっ。そうだけど……でもでも、練習づけはイヤ!」

「まあまあ。玄の言うことも、分かるよ。でも、だからこそ、今年のテーマを聞いてほしいんだ。玄にとっても、トクになることだからね」

「なに……?」

 玄の目が光る。おおっ、いよいよ発表タイム。あたしも、わくわく。

 夏だから、アイスとかかな? それなら、みんなにおトクでしょ。それとも──。

「今年のテーマは……勉強ドリルなんだ!」

 ズル────ッ! 

 えええっ! マサカすぎて、ズッコケちゃったんですけど!?

 凛はちっとも気づかず、ニコニコ。

「テンション上がるよね!」

 むしろダダ下がりで、地面にゲキトツ寸前です! (だれか助けて〜!)

 ドリル? トーゼン好きじゃありませんっ。 むしろ、見るとゾッとする……。

「あれ? 二人とも、どうしたの。さっきより元気ないよ?」

「あたりまえだろっ。なんでドリルの開発が、おれのトクになるんだよ?」

「だって、そうだろ。いいドリルを開発できたら、勉強も宿題もはかどる。そうすれば、さらに野球に集中できるよ」

「そ、そう言われると……そうなのか?

「あたしにはトクがない〜」

「そんなことないよ。ほら、くららは……みんなにいっぱいホメてもらえるよ、うん」

「テキトーに言ってない!?」

「まさか。ていうか、くららはもう、参加オッケーなんだから」

 ドキッ! いや〜、ドリルの開発だと話が変わってくるっていうか〜。

 ホントに、バクハツしちゃうかも。あたしの頭が。

「やっぱり、キャンセルしようかな〜なんて……」

「なに弱気なこと言ってるの?」

 凛が、まっすぐ見つめてくる。

自信をもって。くららは、ひらめきの天才だろ?」

 うずっ。

「このイベントは、くららのためにあるようなものなんだよ」

 うずうずっ。

「なにより、くららがいてくれなくちゃ……。ぼく、さみしいな……

 ぐわっ! 

 さいごは涙目で、トドメをさされた……凛のコトバの魔法、強すぎる!

 そんなに言われたら、やらないワケにいかないじゃん……!

「分かった。あたしに任せて──ううん、三人で、めちゃくちゃスゴいドリルを開発しよう!

「待て。おれは、まだやるとは……」

「ドリルといえば、表紙のイラストが命なんだけど」玄の反論を、すかさず凛がさえぎる。「それには、玄の力がいるんだ」

「はあー? なんでだよ」

「またすっとぼける。コンクールで入賞するくらい、絵も上手いくせに。図工の先生が、玄はセンスのかたまりだって。あ、ちがう。みんなからは、センスの王子って呼ばれてるんだっけ」

「そのあだ名は言うなっ。おれはぜったい、お前のあくまのささやきには負けねーからな」

「ひどいなあ。あくまなのはむしろ、玄のほうだよ。くららが計画したイベントには、ちゃーんと参加するのに、ぼくの提案はムシするんだから」

「べっ、べつにそんなつもりは……つーか、ムシはしてねえだろ」

「くらら、聞いてよ〜。玄がね、ぼくのさそいはことわるんだって〜」

「それはダメですっ」

 今まで、なにをやるにも三人いっしょだったもん。

 今回だけ例外なんて、みとめません!

「いっしょにやろーよ? 玄がいなかったら、つまんないし

「はっ、はあ?」玄の声が上ずる。「ヘンなこと言うんじゃねえよ!」

「どこが!? いっしょじゃなきゃつまんないって言っただけじゃん」

「それがヘンなんだよ! もう、しゃべるな!

「ヒドい! やっぱり、玄がいなくても、つまんなくなくなくなーい!」

「どっちだよ」

「どっちかえらぶのは、玄のほうだよ。どうするの?」

「くっ、また分かってるような顔で聞きやがって……やればいいんだろっ、やれば!」

「そうこなくっちゃね! コレで決まり!

 ポンッと、凛が両手を合わせる。よーいスタートの、合図みたい。

「さっそくだけど、一番大事なことを決めておこうか。まずは、どんなドリルをつくりたいか……ズバリ、一言で!」

「えっと……カワイくてキラキラしたのをつくりたい!」

「んー、カッコイイやつ?」

「ぼくは、やさしいカンジの──って、バラバラすぎるんだけど。みんなの目指す方向が同じにならないと、完成させられないよ」

 三人で、ハア〜ってため息。

「おい。さいしょから、時間をムダにしたくねーんだけど。やるからには……」

「あたしだって、バチッと決めたいよ。だってゴールは……」

「この三人で、目指してるんだけどなあ……」

 「「「ぜったい優勝」」」

 三人の声が、かぶった。

あたしの決めゼリフだったのに!」

「べつに決まってない」

「息ピッタリで安心したよ。もう一度、考えようか。この三人で、いっしょにつくるなら─」

わくわくするのがいい!」

クールなやつ

分かりやすさが一番の──って、やっぱりぜんぜんそろわないよ……はあ」

 こうして(かなり不安アリ!?)、あたしたちの、はじめての商品開発がはじまった。

 夏休みの間、毎日のように、三人であつまって話し合ったよ。

 でも、コレだ! っていうアイデアが、なかなか出てこない。

 考えれば考えるほど、頭がまっ白になっていく……(バクハツ五秒前、けむりモクモク状態)。

 ドリルをつくる人は、もっと頭がよくてしっかりした人の方がいいのかも?

 あたしは、忘れっぽくって、だまされやすくて、しっかり者とはほど遠い……。

 そうやって、なやんでいたある日、

「くらら。ヒット商品は、あんがい、欠点から生まれるものなんだよ」

 って、パパからアドバイスをもらった。

 ビビッ! ときた。

 そうだよ。あたしの欠点を、ドリルにしちゃえばいいじゃん! って。

 そして──、

ウソつきドリルって、どうかな?」

 思いきって、二人に提案してみた。

「ドリルって、正しい問題が書いてあって、正解を答えるのがフツーだよね? でも、ウソつきドリルはその。問題も答えも、ウソばっかりにしちゃうの! そして、あたしたち子どもはだまされないように、なにがウソなのかをさがして当てる……どう?」

 二人とも、さいしょは、きょとーんとしていた。

 でも数秒後、声をそろえてこう言ってくれた。

「「それ、ナイス」」

 イベント当日も審査員たちに気に入ってもらえて、目標どおり優勝たっせ〜い!

 出版会社がじっさいにつくって、『ウソつきドリル』は、商品としてお店にならべられた。

 出だしはビミョーな反応だった。でも、子役で有名な立花 カレンちゃんが「楽しく勉強できちゃう、おススメのドリルです」って宣伝してくれてから、ぐーんっと売れはじめた。

 友だちも買ってくれたし、《子どもにすすめたい学習ドリルランキング》の一位にもなった。

 でも一番うれしかったのは、手紙をもらったこと。それも、同じ五年生の女の子から。

 

「ウソつきドリルのおかげで、テストの点数が、めっちゃくちゃアップしました! 中学の受験をあきらめていましたが、今はがんばれそうです。ていうか、ぜったい合格します。このドリルを開発をしたみなさんは、天才です!」

 

 読んで、じ〜んときちゃった。そして、このとき気づいたんだ。

 じぶんのアイデアから生まれた商品が、だれかの力になってる。

 商品開発って、サイコーに楽しい! って。

 もっと、やってみたくなった。それから、三人で会社をたち上げることにしたの。

 ただ、実現のためには、親の協力がぜったい必要だった。

 いろいろルールがあって、小学生だけで会社設立は、むずかしいんだって。

 さいしょは、とまどわれた。でも、ねばってねばって、さいごは協力してもらえることに。

 学校の先生たちにも、話したよ。

 何人かの先生には反対されたけど、校長先生の「わが校は、自主性を大事にしているからね」の一言で、オッケーってことに。

 うちのパパが【代表取締役】になって会社を設立。

 そして、子どものあたしが【社長】になった。

 玄は【副社長】、凛は【広報】で、役割分担もバッチリ!

 そして、カンジンのおしごとは……ズバリ、アイデアを生み出すこと!

 新しい商品を考えている人に、「コレは、ぜったい形にして売りたい!」って思ってもらえるようなアイデアを、頭の中の工場でどんどん生み出しちゃうヨ〜。

 あ、コレも言っておかなくちゃ。

 会社の名前は、《ペーパー・エア・プレイン社》 (※紙ひこうきって、イミだよ)。

「紙一枚でひこうきをつくれるくらいのアイデア力を、世界中のみんなにお届けします!」っていう気持ちをこめて、名づけたんだ。

 あとね、パパたちが、記念に会社用のスマホとタブレットを買ってくれたの。

 それを使って、玄と凛がさっそく会社のホームページを作成。

 アイデアの相談は、電話でもメールでも受けつけます!

 さて! なにもかも、準備は万全。

 これから、バンバン新しいアイデアを出して、ドドドーッとわくわくする商品をつくっちゃうからね!

 みんな、おこづかいをためて待っているように! ヨロシク☆

 

第3回へつづく>

【書誌情報】

小学生、会社をつくって、商売対決(ひらめきバトル)に勝て!
第11回角川つばさ文庫小説賞《金賞》受賞作は「起業」&「商品開発」! 小5の夏に会社を立ち上げたくらら。コドモだからと取り合ってもらえず倒産寸前の中、新商品コンテストでの共同開発を持ちかけられる。


作:あさつじ みか  絵:はちべ もつ

定価
814円(本体740円+税)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046322609

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