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――さあみんな、アナタのチカラでセカイをおどろかす準備はオーケー?
自称「ひらめきの天才」元気いっぱいでたくさん食べる 小学生社長――萌黄くらら
通称「センスの王子」スポーツ万能で絵もスゴイ! クールな天才――青羽 玄
通称「交渉のプロ」どんな情報もおまかせあれ♪ おだやかな切れ者――白瀬 凛
あたしたち「ペーパー・エア・プレイン社」ってホンモノの会社をやってるんだ!
見てて☆ この3人なら、どんなに「売れないよー!」って思われてたものでもヒット商品にできちゃうし、すっごい強敵なオトナ相手の勝負にだって勝てちゃうんだから!
会社を立ち上げるまで、実は楽しいことだけじゃなかったんだ。聞いてくれる……?
3.倒産のピンチ!?
「ウソでしょ!? なんでなのお〜」
ショーゲキの事実が、ハッカク!
三人で野球の帰りによったコンビニで、悲鳴を上げる──すかさず、玄に口を手でふさがれた。
「声がでかい。店の中だぞ」
「ほふっ! ほんはほ、ほふひい!」
「だから、しゃべるな」
「まるで人質にとられてるみたい……玄、手をはなしてあげなよ。くららも、落ちついて」
「落ちつけないよ!」
スポーツバッグから、クリアファイルに入れていた紙の束を取り出す。
「コレのためのアイデア、バッチリまとめたんだよ?」
指さすのは、スイーツフェアのコーナー。
初取材のあと、風間さんから《ヒットメーカーの共演》っていう対談コーナーに、呼ばれた。
その相手が、このコンビニで商品開発をしている坂口さんっていう男の人だったの。
対談のさいごに、こう言われたんだ。
「スイーツフェアのための、新商品を考えてほしいです」って。
会社をたち上げて、初のおしごと! 張りきって、三人で一所けんめい考えたよ。
そして完成したテーマが、『コーデみたいなスイーツ』。
ショップのマネキンが着ているようなコーデを、チョコレートやゼリー、スポンジケーキのスイーツたちで表現しちゃうの。
かわいいし、手にとりたくなるはず。坂口さんもきっと「スゴい!」ってよろこんでくれる。
そう、わくわくしていた。なのに、フェアはもうはじまってる……どーなってるの!?
「その対談って、くららだけが行ったんだよな。おれと凛は、用事があったし」
「確認するけど、聞きまちがいはしてないよね?」
「それは、ぜったいにない。あたしたちのこと、いっぱいホメてくれたし」
「ホメられすぎてうれしくなって、言葉のイミをカンちがいしたとか……」
「凛! あたしはそこまで、浮かれてなかったよ」
「ちょっと、きみたち」
さわがしい声を聞きつけて、店員さんがコワ〜い顔をしてやって来た。
「店内でさわぐのは、やめてくれ。ほかのお客さんにメイワクだ。ほらほら」
追い出されるように、店をあとにする。
なにがなんだか、さっぱりだよ。「連絡します。楽しみにしています」って握手までしたのに。
今は空っぽな手のひら。太陽にかざして、見つめる。
なんだか、夢みたいに思えてきた。
「やっぱり、カンちがいだったのかな……」
思わず、声に出た。その場がシーンッとなる。
「あ、ゴメン。なんか、暗くなっちゃって。ハハハッ……」
かなしい目を、帽子のツバでかくした。そして、むりやり笑ってみせる。
社長のあたしが、弱音をはいちゃいけない。
こんなときこそ、明るくふるまわないと──。
「凛、スマホ貸せ」
とうとつに、玄が右手を差しだす。
「えっ」
「くらら。坂口のおっさんから、はっきりお願いされたんだろ?」
「う、うん」
「じゃあ、どーなってるんだって、堂々と聞けばいい。分かんないことを、うじうじ考えるよりマシだろ。だから……」
玄が、あたしの帽子をとる。
まっすぐで強い視線と、ぶつかった。
「ヘンな笑いかたして、ごまかすなよ。らしくねえことすんな」
バレバレだ……。でも、気づいてくれてうれしい。
にやけそうになるほおを引きしめて、大きくうなずく。
「うん……! 分かった!」
「なるほどね。いきなり、なにを言いだすのかと思ったよ」
「分かったなら、はやくよこせ」
「待って。提案は大賛成。だけど、電話をかけるのは、ぼくのしごとだからね」
というワケで、凛に坂口さんの名刺をわたす。
受けとるなり、手早く番号を押す。
「……もしもし。とつぜん、すみません。ぼくは、ペーパー・エア・プレイン社の白瀬です。前に、雑誌のコーナーで対談させていただいて……ええ? おぼえていない?」
そんな! やっぱり、あたしのカンちがいだったの?
「いえ、対談したのはぼくじゃなくて、うちの社長です……そう、女の子の……」
凛が、どうする? って目であたしを見た。あたしは、玄をふり返った。
コクっと、うなずかれた。
よ、よし。堂々と、聞けばいいんだよね。
「かわって」凛に向かって、うでをのばす。「あたしが話す」
「分かったよ、ハイ」
「もしもし、かわりました。あたしが、社長の萌黄 くららです」
「ああ、きみの声はおぼえて……ゴニョゴニョ」
電波が悪いのか、声が聞こえづらい。スマホを、ギュッと耳に押し当てる。
「対談のさいごに、言いましたよね? 新しいスイーツを考えてほしいって」
「ええ!? あっ、そういえば……うん、言った……かな」
ホラ、聞きまちがいじゃなかった!
でも、なんだか歯切れがわるい。
「あたしたち、フェアのためのアイデアをまとめたんですけど。連絡、待ってました」
「い、いそがしくてね。悪いけど、フェアはもうはじまっちゃってるから。今は、大事なお客さんもいるし。じゃあ、これで──」
「待ってくださいっ。じゃあ、つぎのフェアのときに、どうですか?」
「いや〜。うちの商品については、今後も、じぶんたちで考えるからべつに……」
「対談のときは、いっしょにつくりましょう! って何度も言ってくれました!」
「声が大きいんだよ! も〜、分からないかなあ。それは、ぼくの言葉じゃないんだよ」
……へっ? スマホを持ったままかたまる。
なに? 坂口さんは、言ってないって……どういうこと?
「ぼくは、記者からわたされた台本どおり、受け答えしていただけだ」
「台本? 記者って……風間さんが? 信じられない」
「本当だ。相手は小学生。マジメにしごとの話をするより、気分があがるような会話をしてほしいから、と。だから、ホンキで、いっしょにつくりたかったわけじゃない」
じゃあ、ぜんぶ、仕組まれてたってコト? ヒドい、ヒドすぎる……。
「みんなで、あたしをだましていたってことですか?」
「そうじゃなくて。まったく、話が通じない。いや、そもそも、子どもと、マトモな会話ができるわけないか……とにかく、こっちはいそがしいんだ。それじゃあ」
ツーツーツー。
切られちゃった……ていうか、『話が通じない』はこっちのセリフ──。
ザワッ。
とつぜん、むねに気持ちわるさがこみ上げてきた。
この感覚、初めてじゃない……ああ、そうだ。あのときと、同じなんだ。
会社をたち上げるまで、楽しいことだけじゃなかった。
まるで、正反対の世界にいるみたいに、ツラい思いもした。
すこし、聞いてくれる? あたしたち三人以外は知らない、ヒミツのウラ話。
ウソつきドリルの第一弾が売れたあと、すぐに、第二弾の発売が決まったの。
もちろん、あたしたちは『第二弾のためのアイデア』を出し合った。
それから、出版社に電話をかけたんだ。
イベントのときみたいに、あたしたちのアイデアのおもしろさを伝えられれば、それを形にして、みんなに届けられる──また、商品開発ができると思って。
だけど、
「──これは、イベントとはちがうんだ」
はっきり、言われた。
さいしょは、ゴカイされてるんだと思った。ふざけて電話をかけてるって。
だから、すごくマジメな気持ちだってことを、必死で伝えた。
「あたしたち、シンケンに考えました。ちゃんと聞いてもらえれば、分かります」
「こっちは、いそがしいんだよ。そんなヒマはないんだ」
「でも、イベントのときは、聞いてくれて……」
「だから、子ども用のイベントはもう終わったんだ。ここからはわたしたち、大人のしごとだ」
あっさり、電話を切られた。
このとき、分かったんだ。
あたしたちのアイデアなんて、まったく必要とされていないんだって。
どれだけ一所けんめい考えたって、ぜったいに聞いてもらえない。
くやしくて、くやしくて、たまらなかった。
「くそ、なんだよっ!」
「どなっても、しかたないだろ」
いっしょに電話を聞いていた玄がおこって、それを凛がたしなめる。
「お前は腹が立たないのか? ジャマ者みたいに言われたんだぞ」
「ぼくだって、くやしいよ。だけど、やっぱり、しかたないのかもしれない……」
凛の言うとおり。あたしたちが、あきらめるしかない。
でも、それってなんで?
あたしたちが、ただの小学生だから?
商品開発のプロでもないし、会社も持っていないから?
しごとの大変さやむずかしさを、知らないから?
ウソつきドリルは、どんどん有名になっていく。
でも、新シリーズを目にするたび、知らない商品になっていく。
「もう、きみたちのドリルじゃない」って、言われているみたいで、またくやしさがこみ上げる。
やっぱり、あたしたちのアイデアは、あたしたちで完成させたかった……。
さいしょからさいごまで、じぶんたちの力でやる方法はないの?
そのとき、ひらめいた。
「ただの小学生」をやめればいいんだ。
大人たちと同じ土俵に立てばいい。
「玄、凛。あたしたちも、会社をたち上げよう」
決断を打ち明けたとき、二人にはすっごくびっくりされた。
でも「ジョーダンだろ?」なんて笑ったりしない。
「負けっぱなしは、イヤだしな。リベンジしてやる」
「ぼくらのアイデアが、世の中に通用することは証明されているしね」
三人の気持ちは、かたまった。
こうして、あたしたちの会社はできたんだ。
「どうした?」
玄にかたをたたかれて、ハッとする。
「よく聞こえなかったけど、イヤなことでも言われたのか?」
「なんていうか、ぜんぶウソだったみたい。ホンキでいっしょにつくる気は、なかったって」
「ふざけてやがるな」
「大人ってすぐに、子どもだからムリだろうって決めつけるよね」
「ホントそう! ずーっとバカにしたカンジで……思い出しただけで腹立つ〜!」
たまっていたイライラを、二人の前で思いっきりぶちまける。
でもさいごは、「はああ〜」って重たいため息しか出てこない。
「会社をたち上げても、ぜんぜんうまくいかないね……」
このままじゃあ、なんにもつくれないし、だれにも届けられないよ。
「……ねえ。一つも商品開発ができなかったら、会社ってどうなるのかな」
「まずは、休業する手もある……でも」
凛の顔つきが、さらにきびしくなる。
「家族が、もうやめろって言いだすかも。目標を持って、計画的にやるようにって約束だからね。今のところ、なんの計画もないし……」
「つーことは、倒産──」
「それはイヤ!」
玄の言葉をかき消すように、さけんだ。
このまま、「やっぱりダメだった」って、終わらせたくない。
ほかに、依頼があれば……。
でも、あたしたちとしごとをしてくれる会社なんて、見つからないかも。
いったい、どうすれば──。
プルルル! プルルル!
とつぜん、スマホの着信音が鳴りひびいた。
画面には、まったく知らない番号が表示されている。
「だれ!? コワい!」
「あっ、くらら!」凛の目の色が、パッと明るくなる。「しごとの依頼かもしれないよ?」
「だってさっき、ことわられたばっかり……」
「べつの会社からだってあるよ。ホームページには、その番号をのせているんだし」
「そうだ。切れる前に、はやく出ろよ」
「うっ、うん」
二人にうながされて、えいっと、受話器のマークを押した。
「も、もしもし……?」
「ああ、はじめまして。わたしは──」
とつぜん電話をかけてきた、ナゾの人物。
あたしはその正体を知って、息をのんだ。
つづきは、本で読んでね♪
【書誌情報】
小学生、会社をつくって、商売対決(ひらめきバトル)に勝て!
第11回角川つばさ文庫小説賞《金賞》受賞作は「起業」&「商品開発」! 小5の夏に会社を立ち上げたくらら。コドモだからと取り合ってもらえず倒産寸前の中、新商品コンテストでの共同開発を持ちかけられる。
作:あさつじ みか 絵:はちべ もつ
- 【定価】
- 814円(本体740円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 新書判
- 【ISBN】
- 9784046322609
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