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――さあみんな、アナタのチカラでセカイをおどろかす準備はオーケー?
自称「ひらめきの天才」元気いっぱいでたくさん食べる 小学生社長――萌黄くらら
通称「センスの王子」スポーツ万能で絵もスゴイ! クールな天才――青羽 玄
通称「交渉のプロ」どんな情報もおまかせあれ♪ おだやかな切れ者――白瀬 凛
あたしたち「ペーパー・エア・プレイン社」ってホンモノの会社をやってるんだ!
見てて☆ この3人なら、どんなに「売れないよー!」って思われてたものでもヒット商品にできちゃうし、すっごい強敵なオトナ相手の勝負にだって勝てちゃうんだから!
そんなあたしですが――ただいま、超・超・超ピンチです!!
1.くらら、走る!?
うわああ〜! ねぼうしたあああ〜!
お店がたちならぶ街中を、ただいま爆走中!
もー、ぜったいちこくだ。こんな大事な日にかぎって〜。
早起きするつもりだったよ? でも、わくわくしてねむれなかったんだもん……!
「今の子、なに!? 足はやくない!?」
「竜巻かと思った……」
すれちがう人たちの、おどろいたような声が聞こえる。
ゴメンなさーい! でも、目的地まであと少しなんですっ。ここで止まるワケには──。
「社長! こちらです」
「え? ハイ!」
とつぜんそう呼ばれて、急ブレーキ。
ふり返ると──、
「どうぞ、お乗りください」
な、なんと! すぐうしろに、おむかえの車が……。
「すまないね」
スーツを着た、大人の男の人があらわれる。
さっそうと乗りこみながら──チラッ、つめた〜い目であたしを見た。
ガクッ。なんだ、人ちがい。
ていうか、「お前だれだよ?」って顔されたんだけど。ちょっと失礼だよねっ。
……あれ? みんなも、あやしいやつだと思ってる!? まって、まって!
あたしこと、萌黄 くららも、ホンモノの 『社長』 ですから〜〜〜!
ちゃーんと、証拠もあるし──。
「くららちゃ〜ん!」
数メートル先の目的地=パン屋さんの前で、青いエプロン姿の店長さんが手をふっている。
みんなゴメン。社長には、急ぎの用があるのだ。話は、またあとで!
「凪咲さ〜ん! あ〜、やっと着いたあ」
「おそかったわねえ……って、なにかあったの? 髪、タイヘンなことになってる」
「へっ? はっ!」
店のガラス窓に映るじぶんを見て、びっくり。
髪の毛が、ヘビみたいにうねうねしてる……いやいや、それよりも!
「髪かざりがない……!」
ひこうきのカタチをした、トクベツなかざり。いつも、頭の左右につけているのに。
「どこかで落とした!? わ〜、どうしよう」
「それなら大丈夫よ。ほら」
凪咲さんの手のひらに、その髪かざりがころがっている。
「店の前に落ちてたわよ」
「よかった〜、助かった〜」
「髪、セットし直してあげる。これから、大事な人たちと会うんでしょ?」
そう言いながら、天井──待ち合わせ場所の、二階のカフェを指す。
「いいの? じゃあ、お願いしますっ」
イスにすわらせると、ブラシでゆっくり、からんだ髪の毛をほどいてくれる。
あせっていた気持ちも、落ちついていく。
「髪かざりでとめて……ハイ、オッケ〜」
「ありがと! じゃあ、あたし行くね──」
イスからおりて、ふり返る。
「……って、お〜〜い。どーしたの?」
凪咲さん、ぼーっとしている。
気になって、足が止まった。
「……ん? ああ、ゴメン。ずーっと、考えごとしてて」
「なにか、こまってるの?」
「う〜ん」
にがい顔をしながら、首をひねる。それから、「あっ」と声を上げた。
「そうよ! くららちゃんに、聞けばいいんだわ」
「えっ? 聞くって?」
あのね、と話しながら、レジ横に置いてあるトレーを持ってくる。
「この、新しいパンたちのことで、なやんでいるんだけどね」
「わあっ! ナニコレ〜!」
ピンク、黄色、オレンジ……カラフルで、どれもミニサイズなのがかわいい!
「いちごパンに、レモンパン。それから、りんごパン。くだものシリーズよ。いろんな味を、おやつ感覚で食べてもらおうと思ってつくったの」
「いいじゃん、いいじゃん。なにに、なやんでるの〜?」
「それが、あんまり興味をもってもらえなくて、売れないのよ。なにか、方法がないかなあって……。ねえ、くららちゃん。いいアイデア、思いつかない?」
「え? そっかあ。ん〜……」
おでこにしわをよせて、考える。
おもしろくて、かわいいパンなんだけどなあ。それがもっと、はっきり伝われば……。
「あっ、分かった!」
にんまり笑って、パンを指さす。
「串にさして、お花見だんごみたいにしたらどうかな?」
「それって……三色のだんごのこと?」
「うん! 組み合わせによって、カラフルな色がもっと目立つと思う! それから……」
まだまだ、アイデアが雲みたいにふくらむ。
「お客さんに、どれをさすか選んでもらってもいいかも! あと、アイスみたいに串にアタリを書いて、それを買った人はもう一本タダでもらえるとか……」
「すごいわ!」凪咲さんが、手をたたく。「目にとまりやすいし、買うのも楽しくなるわね」
「そう思う? やった」
「くららちゃんに聞いて、正解だった。さすが、ひらめきの天才ね!」
「も〜、天才は言いすぎだよ〜」
と、ケンソンしつつ……あたし唯一のトクギではあるかな!
友だちや家族からも「くららなら、どうする?」って、よく聞かれるんだ。
そのたびに、おもしろい方法を考えたり、楽しい企画を立てたり。
アイデアを出すのは、むかしから好き。楽しいし、みんなによろこんでもらえるもん。
「照れなくていいじゃない。やっぱり、社長になれるだけあるわよ」
みんな、今のセリフ聞いた?
まさに、あたしが、ホンモノの社長だという証拠です!
きっかけがあってね。じつは──。
「……って、急いでるんだった!」
今から、重要なしごとがあるんだよ。
「じゃあ、行ってくるね!」
カフェへとつづく階段に向かう。
どこまで話したっけ。ああ、まだなにも教えてないね。
じつはあたし、親友たちといっしょに、とんでもないアイデア商品を思いついたの。
しかもそれが、大人気バク売れ!
も〜っといっぱい、おどろくようなアイデア商品を、みんなに見せたいと思った。
そこで、
大、
大、
大、
決断しちゃいました。
「じぶんの会社、たち上げます」
というワケで、社長やってます!
そして、今日は、わが社初めての取材日!
雑誌をつくってる記者さんから、ぜひ話を聞きたいってねつれつオファーがあったの。
いよいよだよ〜。ドキドキしてきた。
むねに手を当てながら、階段に足をかける。
そのとき。
「えー!!」
二階から女の人のさけび声(?)が聞こえて、あわててかけ上がる。
「玄くんのご両親って、あの有名なイベント会社のトップなの!?」
まん中のテーブル席で、スーツ姿の女の人──記者の風間さんが興奮している。
その目の前にすわっているのは、二人の少年──青羽 玄と、白瀬 凛。
さっき話した親友で、会社の大事なメンバー。三人で計画して、たち上げたんだ。
うわ〜、取材はじまっちゃってるよ〜……って、ちこくしてきたくせに、文句は言えないよね、スミマセン。
「どうりで、白馬の王子様みたいな品があると思ったら……将来は、ご両親の会社をつぐの?」
「おれ、プロ野球選手になるって決めてるから」
「少年野球チームに入っているものね! チームで一人だけ、国際大会の代表メンバーに選ばれたこともあるんですって? バツグンのセンスの持ち主だって」
「べつに。まだまだだし」
クールな顔をくずさない玄。質問にも、短く、はっきり答えてる。
コレ、おこってるわけじゃないから。いつもこんなカンジだから。
「次は、凛くんね。いろいろ伝説を聞いたんだけど……まず、エスパーなんじゃないかってウワサはホント? いつでもなんでもお見通しってカンジで、みんな一目おいてるらしいじゃない」
「フフッ。直接、言われたこともありますよ。ちがうって、キッパリと否定しましたけどね」
「それじゃあ、二つ目の伝説。入学してから、成績はずっと学年一位っていうのは──」
「それは、本当です」
玄とは真逆に、ほほ笑みをたやさず、やさしい口調で話を合わせている。
ウーン。あらためて聞いてると、うちのメンバー、めちゃくちゃスゴくないですか?
社長として、鼻が高いです〜。
「じゃあ、三人目の子は……って、まだいなかったわね。いつ来るのかしら」
ほら、もう一人はドコですか〜? 呼ばれてますよ〜……って、あたしじゃん!
「ハイハーイ! あたしです!」
「「くらら!」」
いきなりの登場に、二人がいっせいに立ち上がる。
「ごめ〜ん、おくれて〜」
「よかった。カゼやケガじゃなくて」凛が、ホッと息をはく。
「体はぜんぜん大丈夫! じつはね……」風間さんに聞こえないよう、声をひそめる。「ねぼう、しちゃったの」
「そうだったのか。じゃあ、言いたいこと言ってもいいか」
「なに、玄? 急にあらたまって……」
ベッコ〜ン彡☆
「イターイ!!」
思いっきりデコピンされた〜〜!
「言いたいことって、コレ!?」
「ちがう。言いたいのはなあ、こんな大事な日にねぼうすんなってことだ!」
「あのね、忘れられない大事な日だからこそ、ねぼうするんだよ?」
「なワケねえだろ、マジでバカだな」
「ちょっと! すぐにバカって言うのやめてくれない!?」
「まあまあ」凛が、間に入ってくる。「くららのことだから、取材の受け答えをあれこれ考えて、ねむれなかったんだろう?」
「すごい、凛! そのとおり!」
やっぱり、エスパーなのかな?
「きみたち〜、まだ取材の途中なんだけど〜」
風間さんが手をあげている。
いけない、いけない。今は、しごとに集中しなくちゃ!
「おくれてすみません! あたし、社長の萌黄 くららです!」
「あなたが社長なの?」と、風間さんが目を丸くする。それから、「ちょっと意外ね」と苦笑い。
もしかして、バカにされてる?
たしかに、ちこくしちゃったし、二人ほど得意なことはないよ? でも──、
「待てよ。会社をたち上げるってはじめに言い出したのは、コイツだぞ」
「きっかけの、ヒット商品のアイデアを、思いついたのもね」
あたしを間にはさんで、二人が堂々と紹介してくれる。
そーいうことですっ。カンペキなフォロー、ありがとう。
やっぱり、持つべきものは友。そして、優秀な社員だね〜。
ドンッ!
思いっきり、じぶんのむねをたたく。
「これからの質問は、社長のあたしが答えます! さあ、どうぞ!」
「じゃ、じゃあ……。会社をたち上げようと思ったきっかけから、くわしく教えてくれる?」
「ハイッ!」
あれは、去年の夏休み。
セミの声が鳴りひびく、すご〜くすご〜くアツい日のこと。
凛のとつぜんのおさそいから、はじまったんだ。
<第2回へつづく>
【書誌情報】
小学生、会社をつくって、商売対決(ひらめきバトル)に勝て!
第11回角川つばさ文庫小説賞《金賞》受賞作は「起業」&「商品開発」! 小5の夏に会社を立ち上げたくらら。コドモだからと取り合ってもらえず倒産寸前の中、新商品コンテストでの共同開発を持ちかけられる。
作:あさつじ みか 絵:はちべ もつ
- 【定価】
- 814円(本体740円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 新書判
- 【ISBN】
- 9784046322609
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