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大人気!「お天気係におねがい! 運動会を晴れにせよ!」先行ためし読み連載 第9回

「空ちゃん、よかったね。ちゃんと、解決して」

「……」

「なんか、かたまってない? おーいっ」

 フウくんが、わたしの目の前で手をひらひらふる。

「あっ、ごめん。ちょっと、ぼーっとしてた」

「つかれたの?」

「ううん。わたし、心強いとか、かっこいいって言ってもらえたの、初めてで……」

 それも、一年生のときからわたしを知っている柴くんに。

「なんか、こう……すごくいい気持ちっていうか。今までなったことがない、新しい気持ちっていうか。なんて言ったらいいんだろう?」

「外に出れば、どんな気持ちか分かるだろ」

「そ、外? ハレくん、なんで?」

「いいから、行くぞ」

 ハレくんを先頭に、みんなで校庭に出る。

「ほら、見てみろ」

 ハレくんは、上空を指さす。それは、きれいな水色の空だった。

 おばあちゃんが、わたしの名前の由来を教えてくれたときの空と似ている。

 風はやさしい音を立てて流れて、ふりそそぐ太陽の光はやわらかくてあったかい。



「よく覚えておけ。この天気は、今の空の心をあらわしている」

「こんな、すっきりした天気が?」

「そうだ。この天気が──今の天川空の心の天気だ」

「わたしの、心の天気……うん」

 素直にうなずけた。今のわたしの心の中をのぞいたら、きっとこんな色をしている。

 初めてちゃんと、じぶんの心が天気とつながっているって感じられた。

「スゴい……天気の神さまって、やっぱりスゴいね!」

「スゴいのは、神さまじゃなくて空だ。空があきらめないで、じぶんの気持ちとたたかったから、こんな天気になったんだ」

「えっ、ハレくんがほめてくれてる? もしかして、ぜんぶ夢?」

「オレをなんだと思ってるんだよ。がんばったら、ほめるのは当然だろ。……空、よくがんばったな」

 ひとみも声も、いつもよりうんとやさしい。心の底から言ってくれてるって、伝わる。

 うれしすぎて、にやにやしちゃう……はっ、だめだめ! 油断するなっておこられちゃう。

「運動会も、こんな晴れにできたらいいね」

「ちがうよ、アメくん。いいねじゃなくて、するんだよ。ぜったい、かなえるのっ!」

「空、お前も言うようになったじゃん」

「そらりん、かっこいい~」

「そうだな。だけど今は教室にもどらないと、遅刻してかっこわるいことになるぞ」

「あっ、ほんとだ! 行こう」

 くるっと、回れ右をする。そのとき、雨がふってきた。

「うわ、いきなり? もう梅雨だっけ?」

 広げた手のひらに、雨つぶが落ちる。

 あれ? この雨つぶ、なにかおかしい……。

「ねえ、みんな。この雨、キラキラ光ってない? 気のせいかな」

「いや、気のせいじゃないよ」

 アメくんが、めずらしく顔をしかめている。

「これは、ニセモノの雨──悪天蝶がふりまいている、悪天粉だよ」

「悪天蝶? じゃあ、もしかして──」

 みんなで同時に、上を見る。

 すっきり晴れていた校庭の空に、黒い雲が集まってきている。

 その周りでは、やっぱり悪天蝶が飛んでいた。こんどの悪天蝶は、青く光っている。

「出てきたか……。黒雲を集めて、悪天空をつくろうとしているな」

「でもなあ、こっちは、お前らがジャマしに来るのは分かってて──」

「みんなあれ見て!」

 フウくんが、べつの方向の空を指さす。そこにも、悪天蝶が飛んでいる。



「二匹……! ううん、あそこにもいるよっ」

 わたしが、反対の方向にも一匹見つける。

「どういうことだ? 今までは、一匹ずつしか見たことないぞ」

「なんで、三匹も……。一匹でさえ、たいへんなのに!」

 これじゃあ、運動会が──。

 ばたんっ。とつぜん、アメくんがたおれた。

「アメくん! わ……スゴい熱」

 顔はまっ赤で、汗が浮かんでいる。息もすごくあらい……。

「アメ! しっかりしろ! どうしたんだ!?」

「はあ、はあ……ぼくは、はあ、だい……」

 アメくんは、そのまま気を失った。

「アメくん! アメくん!」

 どれだけ名前を呼んでも、もう返事は聞こえなかった。


第10回へつづく


書籍情報


作: あさつじ みか 絵: しそこんぶ

定価
858円(本体780円+税)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046323736

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