新装版が発売予定の『マジック・ツリーハウス』シリーズ第１話「恐竜の谷の大冒険」丸ごとためし読み！　第5回

みんな知ってる大ベストセラー児童書『マジック・ツリーハウス』は、この11月から4冊連続で〈カラー新装版〉を発売いたします！
カバーイラストは甘子彩菜さんの新規描き下ろし＆挿絵フルカラー化、そして巻末には勉強に役立つ学べる資料が大充実。そんなリニューアル版の発売を記念して、第１話「恐竜の谷の大冒険」を丸ごとためし読み公開いたします。

わくわくドキドキ、小学生のみなさんの心をつかみつづけた、ジャックとアニーの大冒険！　ぜひお楽しみください。

あらすじ

ジャックとアニーは、アメリカ・ペンシルベニア州に住む、なかよしきょうだい。
ある日、ふたりは、森の大きなカシの木の上に、ふしぎなツリーハウスを見つけた。中で本を見ていると、とつぜんツリーハウスがまわりだし、本のなかの世界へ行ってしまう。
ついたところは、恐竜の時代。本物の恐竜たちと、なかよくなったり、追いかけられたり。ハラハラどきどきの大冒険がはじまった。
はたして、ふたりは、ぶじに帰れるのか!?

※これまでのお話はこちらから

ジャック、空を飛ぶ

　地面にまいおりたプテラノドンは、キラキラした、するどい目で、ジャックを見た。

　ぼくに、どうしろというんだろう。乗れ、と言っているように見えるけど、でも、ぼくが乗ったら、重すぎて飛べないんじゃないか？

〝まよってないで、やってみて！〟さっきのアニーの声が、聞こえたような気がした。

　ティラノサウルスは、もう、すぐそこまでせまって来ている。大きな歯が、ギラリと光った。

　よし、まよってないで、やってみよう！

　ジャックは、プテラノドンの背中によじのぼり、首にしがみついた。

　プテラノドンが走りだした。大きなつばさを広げると、からだがふわりと宙にういた。はじめ、右に左に大きくゆれて、ジャックは、あやうく落ちそうになったが、プテラノドンはすぐにバランスをとりもどし、空高くまいあがった。

　下を見ると、ティラノサウルスが空に向かって、口をグワッとあけていた。

　ジャックを乗せたプテラノドンは、丘をひとまわりして、谷の上をすべるように飛んだ。たくさんのアナトサウルスが、巣の中の赤ちゃんを、まもっているのが見えた。

　谷のむこうの草原では、さっきのトリケラトプスが草を食べている。

　すごいぞ！　恐竜の国の大冒険だ！

　ジャックは、鳥になった気ぶんだった。あまいかおりの、気もちのいい風が、ほおをなでていく。

「ヤッホー！」ジャックはうれしくなって、さけんだ。翼竜の背中に乗って、空を飛んでいるなんて、ほんとうに夢のようだ！

　やがて、プテラノドンは、川をこえ、シダのしげみをこえて、ゆっくりと、カシの木の根もとにまいおりた。

　ジャックが、地面にすべりおりると、プテラノドンは、すぐにまた空へ飛びたっていった。

　ジャックは、ずり落ちためがねをなおすと、プテラノドンを見上げて、つぶやいた。

「ありがとう……ヘンリー」

「お兄ちゃーん、だいじょうぶ？」木の上から、アニーがさけんだ。

　ジャックは、息をはずませながら、こたえた。

「アニー、助けてくれてありがとう。すばらしい冒険飛行だったよ！」

　だが、ジャックの足は、ガクガクして力がはいらない。もたもたしていると、アニーがさけんだ。

「早くのぼってきて！　あの恐竜がこっちへ来るわ！」

　ふりかえって見ると、ティラノサウルスが、ものすごい顔で突進してくる！

　ジャックは、あわてて、なわばしごに足をかけた。

「早く、早く！」

　アニーが声をかけるが、あせればあせるほど、足がもつれて、のぼれない。

　やっとのことで、ツリーハウスにたどりついたとたん、ドシーンという音がして、カシの木が大きくゆれた。ジャックとアニーは、たくさんの本のなかに、頭からつっこんだ。

　アニーがさけんだ。「『帰りたい』って、早く言って！」

「本がいるんだ。フロッグクリークの写真がのってる本だよ！　どこだ！」

　ふたりは、ペンシルベニア州の本をさがした。

　床の下から、ティラノサウルスのおたけびが聞こえる。本は、いったいどこなんだ！

　あった！

　ジャックは、いそいでページをめくり、フロッグクリークが出ているページを見つけると、写真に指をおしつけて言った。

「フロッグクリークに、帰りたい！」

　風が、静かに吹きはじめた。

「いそいで！」ジャックがさけんだ。

　風が、ピューピューと音をたてはじめ、ツリーハウスがまわりはじめた。回転がどんどんはやくなる。ジャックはアニーにしがみついて、ぎゅっと目をつぶった。

　とつぜん、なにもかもが止まり、静かになった。

　なにも聞こえない。

ふたりだけの秘密

　小鳥の鳴き声が聞こえて、ジャックは、目を開けた。窓の外をのぞいてみる。まちがいなく、フロッグクリークの森だ。

「帰ってきたんだわ」と、アニーが言った。

　夕日が、森のむこうにしずもうとしていた。

　ということは、あれから、ぜんぜん時間がたっていないのか？　

　ジャックは、くらくらする頭で考えた。いったい、なにがおこったんだろう。

「……ジャーック、……アーニー」遠くで、ふたりを呼ぶ声が聞こえた。

「ママだわ！」

　ママが、家の前に立っているのが、小さく見える。

「……アーニー、ジャーック」

　アニーは、窓からのり出してさけんだ。

「ママ―！　ここよォ！」

　ジャックは、ひとりで考えこんでいた。

「ねえ、アニー・いったい、なにがあったんだと思う？」

「恐竜の国に行ってきたんでしょ？」アニーは、あっさりとこたえた。

「でも、ぜんぜん時間がたっていないんだよ。そのあいだに、どうやってあんなところへ行けたんだろう」

「お兄ちゃんが、『プテラノドンに会いたい』って言うから、このツリーハウスが連れていってくれたのよ。これは、魔法の小屋“マジック・ツリーハウス”なのよ」

「マジック・ツリーハウス？　そんなもの、いったいだれが作ったって言うんだ？」

「魔法使いよ」

「魔法使いなんか――」

　そのとき、ジャックは、金のメダルをひろったことを思いだした。ジーンズのポケットをさぐると、メダルはちゃんとそこにあった。

「これ、恐竜の丘でひろったんだ。だれかが落としたらしい。ほら、Ｍの字がほってあるだろう？」

　アニーが、目を丸くして言った。

「これ、魔法使いが落としたんじゃない？」

「まさか。でも、すくなくとも、ぼくたちの前に、あそこへ行った人間がいた、っていうことだよ」

「……ジャーック、アーニー！」

「いま、帰りまーす！」アニーが、もういちど、窓からのり出してさけんだ。

　ジャックは、メダルをポケットにしまうと、リュックから恐竜図かんを出して、ほかの本のなかに返した。

　アニーは、ツリーハウスに向かって、「バイバイ、またね」と、声をかけた。

　ふたりは、もういちどツリーハウスの中を見まわして、なわばしごをおりた。

　カシの木の下から、ツリーハウスを見上げて、ジャックが言った。

「こんなこと、だれも信じてくれないだろうな」

「だから、だれにも言わないでおきましょうよ」アニーはけろっとしている。

「パパも、信じないだろうな」

「夢でもみたんだろう、って、言うわ」

「ママも、信じないだろうな」

「にこにこ笑って、聞いてくれるかもしれないけど」

「先生も、信じないだろうな」

「本のなかのお話だろう、って、言うわ」

　しばらくだまってから、ジャックが言った。

「だれにも、言わないほうがいいね」

「だから、そう言ったでしょ」

　ジャックは、ため息をついた。

「なんだか、自分でも、信じられなくなってきたよ」

　ふたりは森をぬけて、道路に出た。

　いつものけしきのなかを歩いていると、恐竜の時代に行ってきたことなど、ますます夢のような気がしてくる。

　ジャックは、もういちどポケットに手を入れた。ひろったメダルが手にふれた。ジャックは、メダルをにぎりしめ、Ｍの文字をなんどもなぞった。

　夢じゃない。

　このメダルは、ほんとうに、恐竜の丘で見つけたんだ。

　ジャックは、だんだん、ゆかいな気もちになってきた。

　おとなは、だれも信じないだろうけど、きょう、あのツリーハウスでおこったことは、現実だ。

　ふたりは、ほんとうに、恐竜の時代に行ってきたんだ！

　ジャックはアニーに言った。

「あした、また、森へ行ってみよう」

「もちろん」

　アニーがこたえた。

「そして、あのツリーハウスに、のぼってみよう」

「もちろん！」

「また、信じられないようなことがおこるかな！」

「もちろん！　マジック・ツリーハウスだもの」

　アニーが言った。

「お兄ちゃん、うちまで、きょうそうよ！」

　ふたりは、街灯がともりはじめた通りを、なつかしいわが家めざして走っていった。

続きは、『マジック・ツリーハウス　第１巻 恐竜の谷の大冒険』を読んでね！

【予約受付中】みんな知ってる大ベストセラーが、生まれ変わって再登場！

11月刊『[カラー新装版]マジック・ツリーハウス　恐竜の谷の大冒険』発売予定！

12月刊『[カラー新装版]マジック・ツリーハウス　女王フュテピのなぞ』発売予定！

リニューアルポイント
☆カバーイラストは、甘子彩菜さん新規描き下ろしの壮大なビジュアルで！
☆本文全文フルカラー！　カラフルな挿絵と読みやすいページで作品世界を楽しめます。
☆巻末には学べる資料がたっぷり！　探求学習の導入にも最適な内容、教材としての利用もどうぞ！

『マジック・ツリーハウス』シリーズ紹介中！