第13回角川つばさ文庫小説賞受賞作『ナゾ世界いってきます! ふしぎな道具と海の底へ!』が発売前に69ページもためし読みができちゃう!
小学5年生のリコ、学校トップの成績の内斗、リコの親友の涼夏は3人だけで深海へ! おもしろさ保証(ほしょう)つきの大冒険ストーリー!
リコのおじいちゃんは冒険に出たまま帰ってこない! リコに残されたのは、ガラクタみたいな、だけどふしぎな力を持つ道具たち。そんなある日、内斗が神社の水たまりに飛びこんで、消えちゃった? なんと、その水たまりは、海につながっていた!? リコ、内斗、涼夏は、伝説の海底都市を発見し、さらには命がけのバトルや大脱出! わくわくドキドキの物語!
『ナゾ世界いってきます! ふしぎな道具と海の底へ!』
(深草ゆにえ・作 うちゃコ・絵)
2026年2月12日発売予定
プロローグ ここは、どこでしょう?
見わたすかぎりの青、青、青!
そこで泳ぎまわるのは、お日さまにてらされて赤に黄色にキラキラかがやく魚たち!
他にもピンク色のサンゴに、イソギンチャク! あ、オレンジ色の魚がかくれた!
「きれい……」
ウットリしているわたしの目の前に、銀色にかがやく小さな魚の群れが集まってきた。
横を見ると、そこにも魚! 後ろにも、もちろん魚! どこを見ても魚だらけだよ!
「すっごぉ! こんなの最高の回転寿司だよ! おいしそ〜っ!」
ガラスのかべに手を当てて大声を出したのはわたし、小泉(こいずみ)リコ。
「知ってますか? 動きまわる魚を見て、おいしそうと思うのは日本人くらいです」
あごに指を当てながらそう教えてくれたのは、青っぽい黒髪(くろがみ)の男の子、星月内斗(ほしづきないと)くん。
「へぇ〜、じゃあ海外の人は、回転するお寿司がおいしそうに見えないってこと?」
「動きまわるというのは、そっちの意味ではありません」
そんなやりとりをしているうちに魚たちは、わたしたちの頭の上を泳いで行った。
「ほら、そこサボらない! リコも、おなか空いてるんなら、早くランチの準備を手伝う!」
ツッコミを入れているのは長い髪の女の子、早乙女涼夏(さおとめりょうか)ちゃん。
「リコ! シートのそっち側を持って引っぱって!」
「は〜い!」
広げたシートの上にいそいそと座りこむわたしたち。
手にはバスケットに入れて持ってきたホットサンド!
そう、わたしたちは今、ここでピクニックをしてるんだ!
「しかし、まさかこんなところでお弁当を食べることになるとは思いませんでした」
「ホント。しかもこんなものの中でなんて、話したってだれも信じてくれないよ」
さて、ここで問題です! わたしたちは今、どこにいるでしょうか!
ヒントは、水がいっぱいあるところ。そして、もう一つは……。
「うわっ! 今、めちゃくちゃ近くにきてた! ガラスがなかったらさわれてたよ、絶対!」
え、水族館だって? ちがうちがう!
「ちょっと怖かったけど、来てよかった! まさか、泳いでる魚を下から見られるなんて!」
「まさに、フツーならありえない体験、です!」
さて、ここで正解発表!
正解は……って、うわっ! なんか来たよ!
「ちょっ! あれってもしかして……クジラ!? いくらなんでもデカすぎでしょ!?」
「いえ、シロナガスクジラとしては普通のサイズです。なんといっても全長およそ25メートル……水族館の水そうにも入らない、世界最大の哺乳類(ほにゅうるい)です!」
「こんなでっかいのを真下から見られるなんて、海の底を歩いてきたわたしたちだけだね!」
そうです! わたしたちは今、海の中でピクニックをしてるんだ!
うんうん、言いたいことはわかる。だってフツーに考えたら、そんなの絶対ありえない。
……だけど、そんなありえないことにチャレンジしていくこと、それがわたしの冒険なんだ!
これからみんなにはこれから今までの話と、その先にあるワクワクの大冒険の話をするよ!
え、いきなりすぎるって? ゴメンゴメン、でも、しかたないんだ。
だって、冒険の始まりは、いつも突然やってくるんだから!
1章 ナゾの星の指輪(ゆびわ)!?
1 フシギ、すなわち、大冒険!
「冒険の始まりは、いつも突然(とつぜん)やってくる!」
それは冒険家だったおじいちゃんが、いつもわたしに言っていたこと。
その言葉通りおじいちゃんはいつも突然出かけて、帰ってくるとフシギな冒険の話をしてくれたんだ。
ジャングルの奥にかくされた黄金(おうごん)の神殿(しんでん)。
かつて、深い海の底にのみこまれた伝説の都市。
永遠に止むことのない吹雪に閉ざされた氷の街。
どこまでも空高く浮かぶ城。
そんな、聞いてるだけで胸がドキドキして、ワクワクする、サイコーなお話の数々。
みんながウソだって笑ったけれど、わたしだけは信じていた。
だっておじいちゃんは、一度もわたしにウソ
ついたことなんて、なかったんだ。
「リコ、いってくる。ちょっと長くなるが……帰ったら、また話を聞かせてあげる」
だから、あの時、わたしも元気よく『いってらっしゃい!』って言ったんだ。
まさか、おじいちゃんが行方不明になるなんて、ぜんぜん思ってなかったから……。
だけど、わたしだけは知っている。きっとおじいちゃんはまた冒険に行ったんだ。
その先で、何かあって、帰ってこれないだけなんだ。だから……。
「小泉(こいずみ)さん……」
だから絶対、わたしも冒険家になって、おじいちゃんを……。
「小泉リコさん!」
「ふぁいっ!?」
バン! と、すごい音がして、今度こそわたしは目を覚ました。
「何度も言ってますが、授業中に寝てはいけません!」
「ご、ごめんなひゃい!」
あわてて立って謝ると、クラス中がドッと笑いにつつまれた。は、はずかしい……っ。
しおしおと席に座りこんだわたしが教科書で顔をかくしてると、となりの席から声がかかった。
「言っておくけど、わたしはちゃんと起こしたから! 二回も!」
「あ、あはは、ごめんね凉夏ちゃん……」
気を取り直して紹介するよ! この子は早乙女凉夏(さおとめりょうか)ちゃん、わたしの親友で幼なじみ!
家が近くて小さいころからずっと一緒(いっしょ)! 近所の人には姉妹みたいって言われてる!
まあ、姉妹みたいって言っても、見た目の方は……凉夏ちゃんはサラッと流したロングヘアが超キレイで、クッキリした目も超かわいい、おまけに背も高くって……。
対してわたしはちっちゃくて、お気にいりのショートヘアは、男の子に間違われちゃう原因になってるし、寝グセだって全然消えてくれない。それに、勉強だってそんなにできないし、よく転ぶし……あれ、なんだか落ちこんできちゃったよ……。
「なーにゲッソリしてんの。ま、どうせまた夜おそくまでガラクタいじってたんでしょう」
「が、ガラクタじゃないよ! アンティークだよ!」
「そこ! 大声を出さない!」また、先生に怒られちゃった! ごめんなさ〜いっ!
凉夏ちゃんは、やれやれ……って顔してる。今のはわたしだけのせいじゃないのに!
わたしは今度こそしかられないように顔をぐいっと近づけて、コソコソとしゃべり始めた。
「おじいちゃんが残してくれたものなんだから、あんまヒドいこと言わないでよ!」
チラッと先生を確認。よしっ、今度はバレてない!
「でもねぇ、使い道ないんでしょ? なんだっけ、あのどうしようもないタイヤ……」
「『絶対にパンクしちゃうタイヤ』だよっ。たしかに、何をしても中から空気がもれて出ちゃうけど……でもっ、置いとくとずっとプシュ〜ュッて鳴っててカワイイんだから!」
「ふぅーん、じゃあ『絶対に転んじゃうカーペット』は?」
「模様がすっごくキレイでしょ! ……カーペットの上は歩けないし、すわれないけど」
「やっぱガラクタなんじゃないの」
ガラクタじゃないよ! と大声で言おうとしてストップ!
返事の代わりにムッとした顔を見せつけた。これなら先生に怒られない。
……ガラクタ、か。
いなくなったおじいちゃんの家には、たくさんのよくわからないものがある。
それがふしぎなアンティーク。ふしぎな力を持っているけど、どこかポンコツな道具たち。
たしかに使い道は思いつかないけど……でも、このふしぎなアンティークは、おじいちゃんの ふしぎな冒険の話が、間違いなくホントだったことを示してるんだ!
まあそりゃ? たしかにポンコツかもだけど? でもでもきっと、ううん、絶対!
『何かに使えるはず』なんだ!
わたしはスッカリこのアンティークの魅力に取りつかれて、最近はもう毎日毎晩アンティークたちで遊……いやいや、『実験』をしている。
いろいろ実験して、もっとアンティークたちのフシギな力のことをよく知って、おじいちゃんのふしぎな冒険の手がかりをつかむ……。そうして、わたしも、夢をかなえるんだ。
え、どんな夢かって? 決まってるでしょ!
そう、何をかくそうっ、わたし、小泉リコの夢は!
おじいちゃんと同じ、冒険家になること!
つづく 第2回は1月8日公開予定です!