第13回角川つばさ文庫小説賞受賞作『ナゾ世界いってきます! ふしぎな道具と海の底へ!』が発売前に69ページもためし読みができちゃう!
小学5年生のリコ、学校トップの成績の内斗、リコの親友の涼夏は3人だけで深海へ! おもしろさ保証(ほしょう)つきの大冒険ストーリー!
リコのおじいちゃんは冒険に出たまま帰ってこない! リコに残されたのは、ガラクタみたいな、だけどふしぎな力を持つ道具たち。そんなある日、内斗が神社の水たまりに飛びこんで、消えちゃった? なんと、その水たまりは、海につながっていた!? リコ、内斗、涼夏は、伝説の海底都市を発見し、さらには命がけのバトルや大脱出! わくわくドキドキの物語!
『ナゾ世界いってきます! ふしぎな道具と海の底へ!』
(深草ゆにえ・作 うちゃコ・絵)
2026年2月12日発売予定
※これまでのお話はこちらから
2 知ってる部屋の、知らないトビラ!
「う、う〜ん。やっぱムリかぁ……」
学校が終わるとすぐ家まで走って、となりにあるおじいちゃんの家でさっそく実験!
……してたんだけど、途中で集中できなくなっちゃったから、いったん休けい中。
今は代わりに、いつも肌身(はだみ)はなさず持っているおじいちゃんの手帳(てちょう)を読んでる。
ごめん、読んでるっていうのはウソ。正確には、ながめてる?
っていうのも、その手帳がミミズみたいな文字で暗号のように書かれているから。
あーもう、おじいちゃんの冒険の手がかりになってるはずなのに!
それはつまり、いなくなっちゃったおじいちゃんの、手がかり。
いつもやさしくて、わたしの夢を笑わないでくれたおじいちゃん……。
「……また、おじいちゃんに会いたいよ……」
そう言って手帳の表紙を指でなでた、その時だった。
「おーいリコ! 入っていい?」
「あ、凉夏ちゃん! カギは開いてるから入っていいよ〜!」
窓の外から聞こえてきたのは、凉夏(りょうか)ちゃんの声!
凉夏ちゃんの家はおむかいさんで、学校が終わったらよく一緒(いっしょ)に遊んでる。
今日は用事があっておくれるけど行くって言ってたから、カギを開けておいたんだ。
ちょっとさみしい気持ちだったから、来てくれてうれしい! ……ん、待てよ? あ、ダメだ。
「凉夏ちゃん、今はダメ!」
あわててさけんだけど凉夏ちゃんは、「え、なに?」と言って、部屋に足をふみいれた。
そしてその足が、床にしいてある『カーペット』にふれる!
ズルンッ! 凉夏ちゃんの足が、カーペットにはじかれて、すべった!
あ、あぶないっ! わたしは、バランスを崩した涼夏ちゃんのおしりの下にすべりこんだ!
「ぐ、ぐえっ」クッションになったわたしは、当然のようにつぶれた。
「あ、ごめん。痛かった?」
「あはは、平気平気。涼夏ちゃん、軽いから」
ホントは重いと思ったけど、それはないしょにしておこう。
「……今、ホントは重いって思ったでしょ」
「え、え、え!? どうしてバレたの!? わたし、何も言ってないのに!」
「かくしてもわかる。リコの考えてることなんて、顔に全部書いてあるんだから!」
え、ウソ! じゃあわたしが今、ドーナッツが食べたいこともバレてる!?
「えーっと? 『ドーナッツが』……ちょっと、動いたら読めないでしょ」
「ホントに顔に書いてある!?」
「期間限定スペシャルチョコレート味」
「思ってないことまで!? しかも正解!」
「そんなことより! どーして『絶対(ぜったい)に転んじゃうカーペット』をドアの前に置いてんの!?」
「あ、あはは……さっきまでその子で実験してたんだけど、うっかり片づけるの忘(わす)れてて……」
そう、これが『絶対に転んじゃうカーペット』。
床にしいたり丸めたりはできるんだけど、上に物を置こうとしたり、ふもうとすると、見えないかべにはじかれて……うん、ちょうど、さっきの凉夏ちゃんみたいになるワケです。
「忘れてて、じゃない! 危ないでしょ!」
うぅ、怒られちゃった。でも、部屋のドアに『キケン! 入るな!』って注意書きをはっていたはずなんだけどな。忘れてなければ。
「え、注意書きなんて見なかったけど」
忘れてたみたいです。
「まったく、次は気をつけること!」
凉夏ちゃんはカーペットを丸めて片づけた。ご、ごめんなさい。
「それにしても、改めて見るとホントすごい部屋ねー」
部屋を見まわしながら、涼夏ちゃんが言った。
かべ一面の棚(たな)、小さな机(つくえ)に、オシャレなイスも。そして、そこら中をうめる小物の山。
ひしゃげたラッパ、アメ玉みたいな色のボトルに、ちょっと黒ずんだ白のティーポット。
天井のちっちゃなシャンデリアは、オレンジ色のあたたかな光を放っている。
「これじゃ、ちょっとしたアンティークショップだね。あ、でも、大学の先生だったんだよね? リコのおじいちゃん」
「うん。考古学って言って、古い時代を研究する学問なんだって」
「それで、これが全部アンティークなんだよね? その……ポンコツちゃんたち」
「全部じゃないよ。いろいろ種類があるから見つけるのも大変で……って、ポンコツって言うな!」
例えば、『絶対に水が入らない金魚ばち』は、いくら水をかけても、金魚ばちの中には水が全然入らないし全然ぬれない。
金魚ばちは水が入らないと意味ないのに! そして、『絶対に収まらないタンス』は……。
「まったくもう、床いっぱいに散らかして。このボールはここの引き出しに入れとくからね!」
「あ、凉夏ちゃん、そこはダメ!」
「え? 何よ。別にいいでしょ?」
あわてて声をかけたけど、凉夏ちゃんは手にしたゴムボールを引き出しに投げいれて……。
ボンッ!
「な、な……なんなの、これぇ!?」
「あちゃ〜……間に合わなかった……」
すごい音がした。そのすぐ後、涼夏ちゃんは、信じられないものを見たみたいに驚いた。
その視線の先では……さっきのボールが一瞬で、めちゃくちゃ大きくなっていたんだ!
「その子は『絶対に収まらないタンス』って言って、物を中に入れようとすると、それが絶対に入らないサイズまで大きくしちゃう、ふしぎな力を持ってるんだ!」
「いやいや、解説はいいから! というか、なんかこれ、ドンドン大きくなってる!?」
見ると、初めはタンスよりちょっと大きいくらいだったボールが、ドンドン大きくなってる!?
「そ、そっか! 引き出しの上に置いたままだと、ドンドン大きくしちゃうんだ!」
って、ぐえっ! 一気に大きくなったボールが、わたしたちをかべまで押しつけた!
「ちょっとリコ! これどうしたらいいの!? このままだとわたしたち、つぶれちゃう!?」
「ひ、引き出し……引き出しを閉じたら、元に戻るから……」
ゴムのボールだから、思いきり押したら引っこむけど。
その間に、かがんであの引き出しまで走らないといけないわけで……。
「……よしわかった。リコ、わたしが思い切りゴムボールを押すから、そのスキに閉めて!」
「わ、わたしが!?」
「わたしだと身長が高すぎて、ボールの下をくぐれないの! でもリコならできる!」
遠まわしに小さいって言われてる気もする! でも、今回ばかりはイイことだ!
「よぉーし、いくよ! せーのっ!」
合図に合わせて涼夏ちゃんが思いっきりボールを上に押すと、スキマができた!
わたしは身をかがめて、ババッとダッシュ! ゴムボールを押しあげて、引き出しを閉めた。
すると、ボールがシューっと一気に縮(ちぢ)んで……元に戻った。
「た、助かったぁ……おじいちゃんの部屋も、どこも壊(こわ)れてないみたい」
「おー、それはうれしい情報、壊れたらボールを投げたわたしの責任になりそうだし」
「うんうん、部屋が壊れてたら、凉夏ちゃんに罰金(ばっきん)を請求(せいきゅう)するとこだったよ」
ギギ……。どこからか、きしむ音がした。わたしと凉夏ちゃんは互(たが)いに顔を見合わす。
ギギギ〜〜ッ。しかも、ドンドン音が大きくなっていく。
「ねえ、リコ」
「なに?」
「罰金はいくら?」
「い、いやいや、まだ壊れたと決まったワケじゃないし……そもそも、この音はどこから?」
二人で部屋を見まわす。棚は平気だ。何も壊れてない。シャンデリアも。ってことは……。
本棚の方を、見る。そこにあったのは……。
「えっ、ウソウソ、ウソでしょ? これって、もしかして……」
ギギギーっと音を立てて、ゆっくり、ゆっくりと、本棚(ほんだな)がドアのように開いた!
そして……ドン! と一際大きな音を立てて、完全に開いた。ドアの先には、暗い通路。
これはもう、間違いない。これは、これは!
「ひ、ひみつの部屋ぁ〜!?」
わたしたちの目の前にあるのは、まぎれもなくひみつの部屋への入り口だった。
本棚を見ると一冊の本が奥に押しこまれていた。そうか、これ、ひみつのスイッチだったんだ!
真っ暗な通路から、冷えた空気が流れ出てきて、ゾクッとした。
わたしは胸に手を当てた。自分のキモチを確かめるための、おまじない。
胸はサイコーのワクワクとドキドキで、もう、はりさけそうなくらいに鳴りひびいていた。
チラッと涼夏ちゃんの顔を見る。そこにあったのは、わたしと同じ、好奇心(こうきしん)。
「……こんなの、行くしかないよね!」
すうっと深呼吸をして、わたしたちは、暗闇(くらやみ)の中に足をふみいれた。
つづく 第3回は1月15日公開予定です!