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ものがたり

新装版が発売予定の『マジック・ツリーハウス』シリーズ第1話「恐竜の谷の大冒険」丸ごとためし読み! 第1回


みんな知ってる大ベストセラー児童書『マジック・ツリーハウス』は、この11月から4冊連続で〈カラー新装版〉を発売いたします!
カバーイラストは甘子彩菜さんの新規描き下ろし&挿絵フルカラー化、そして巻末には勉強に役立つ学べる資料が大充実。そんなリニューアル版の発売を記念して、第1話「恐竜の谷の大冒険」を丸ごとためし読み公開いたします。

わくわくドキドキ、小学生のみなさんの心をつかみつづけた、ジャックとアニーの大冒険! ぜひお楽しみください。

あらすじ

ジャックとアニーは、アメリカ・ペンシルベニア州に住む、なかよしきょうだい。
ある日、ふたりは、森の大きなカシの木の上に、ふしぎなツリーハウスを見つけた。中で本を見ていると、とつぜんツリーハウスがまわりだし、本のなかの世界へ行ってしまう。
ついたところは、恐竜の時代。本物の恐竜たちと、なかよくなったり、追いかけられたり。ハラハラどきどきの大冒険がはじまった。
はたして、ふたりは、ぶじに帰れるのか!?

ふしぎなツリーハウス


「お兄ちゃん、なんの本を読んでたの?」

 妹のアニーが、スキップしながら、ジャックに聞いた。

 オレンジ色の太陽が、西の空にかたむいている。ここは、アメリカのペンシルベニア州。ジャックとアニーは、フロッグクリークという町の小学生だ。ふたりは図書館の帰り道だった。

「恐竜の本だよ」めがねをおさえながら、ジャックが言った。

「イグアノドン、ステゴサウルス、恐竜の王者ティラノサウルス。それからあの時代には、空を飛ぶ、〝翼竜〟っていうのもいたんだ」

 ジャックはもうすぐ九歳。本を読んだり、自然を観察したりするのが大好きな男の子だ。

 とつぜん、アニーがさけんだ。

「お兄ちゃん、うしろに、かいじゅうがいる!」

 アニーは七歳。恐竜の名まえをおぼえるより、空想の世界であそぶほうが楽しい。

「どこに、かいじゅうがいるんだよ」ジャックは、うんざりして言った。

「ほら、追いかけてくる! 森へかくれなきゃ。きょうそうよ!」

 そう言うと、アニーは、ひとりで、森のほうへ走っていってしまった。

 夕日が、森のむこうにしずみはじめている。

「もうすぐ、日がくれちゃうよ」ジャックは、心配になってきた。

「アニー、もう帰ろう!」しばらく待っても、アニーはもどってこない。

「アーニー!」

 すると、アニーの声がかえってきた。

「お兄ちゃん、ちょっと来てぇ!」

 ジャックは、やれやれ、と思いながら、森の中へはいっていった。

 木の葉が、夕日をあびて、金色にかがやいている。

「こっちよ、お兄ちゃん。早く!」

 アニーは、大きなカシの木の下に立っていた。

「ほら、これ見て」アニーが指さしているのは、一本のなわばしごだった。

「うわー、なんて長いなわばしごなんだ!」

 それは、ジャックの頭のはるか上、枝がふたつにわかれているところまで、つづいている。目をこらしてよく見ると、そこには、小さくて四角い、木の小屋がのっかっていた。

「ツリーハウスだ!」ジャックの心臓が、どきどきと高なった。

「あれは、ぜったい、世界でいちばん高いツリーハウスよ」と、アニー。

「こんなところに、ツリーハウスがあったなんて、知らなかったな」

 ジャックは、小屋をじっと見上げたまま、つぶやいた。

「だれのツリーハウスなんだろう」

「ねえ、のぼってみない?」

「だめだよ。だれのものだか、わからないんだから」

「ちょっと、見るだけ」

 アニーは、なわばしごをつかんで、のぼりはじめた。

「あぶないよ。おりておいで!」

 アニーは、言うこともきかず、どんどんのぼっていく。やがて、ツリーハウスにたどりつき、するりと、中にはいってしまった。

「アニーってば!」いくら呼んでも、アニーはおりてこない。

 もういちど呼ぼうとしたとき、アニーが、ツリーハウスの窓から顔を出した。

「本がいっぱいよ!」

「なんだって?」

「おもしろそうな本が、いーっぱいあるの!」

 えっ、本? 本があるなら、見てみたい……。

 ジャックは、鼻先までずり落ちためがねをおしあげ、背中のリュックをたしかめると、なわばしごをにぎって、のぼりはじめた。

恐竜の図かん


 ジャックが、ようやく、ツリーハウスにはいあがってみると、小屋の中は、ほんとうに、本でいっぱいだった。ほこりをかぶった古い本もあれば、ピカピカの、新しい本もある。

「ほら、見て。あんなに遠くまで見えるのよ」

 アニーが、窓の外を指さした。

 ジャックも、窓から、外をながめた。

 このカシの木は、森のどの木よりも高いようだ。

 ツリーハウスの窓からは、フロッグクリークの町が、ぜんぶ見わたせる。遠くに、さっきまでいた図書館が見えた。学校も、公園も見える。

「わたしたちのうちも、見えるわ。ほら、あそこ!」

「ああ、ほんとだ」

 通りのむこうに見える、みどり色のポーチのついた、白い家がそうだ。

 となりの家で飼っている、犬のヘンリーも小さく見える。

「ヤッホー、ヘンリー!」アニーが、さけんだ。

「しーっ! ここにいるのが、バレたらまずいよ!」

 そう言って、ジャックは、窓から顔を引っこめた。

 それから、もういちど、小屋の中を見まわした。

「それにしても、こんなにたくさんの本、いったい、だれのだろう?」

 ふと見ると、ほとんどの本に、しおりがはさんである。

「あっ、わたし、この本見たい!」

 アニーが取りあげたのは、表紙にお城の絵がついている、古い本だった。

 ペンシルベニア州のガイドブックもあった。ジャックは、それを手に取って、しおりのはさまっているページを開けてみた。

「へえ、フロッグクリークの町の写真だ」

 図書館も、学校も、公園も、このツリーハウスの窓から見えるけしきと、そっくりの写真がのっている。

「それよりも、お兄ちゃんが見たいのは、こっちじゃない?」

 アニーが、大きな本を指さした。

 恐竜の図かんだ。ジャックは、思わずそれをひろいあげた。青い布のしおりがはさんである。

「だけど、かってに読んでもいいのかな? だれの本か、わからないのに……」

 しかし、アニーはもう、お城の本を広げて、楽しそうにページをめくっている。ジャックも、背中のリュックを床において、恐竜図かんを開いてみた。

 しおりのはさんであるページに、翼竜プテラノドンの絵がのっていた。コウモリの羽のようなつばさを大きく広げて、空をゆうゆうと飛んでいる。ジャックは、プテラノドンのつばさを指でなぞりながら、うっとりとつぶやいた。

「ああ、本物のプテラノドンに、会ってみたいなあ……」

「キャーッ!」とつぜん、アニーが、ひめいをあげた。

「ど、どうしたんだ?」

「かいじゅうが!」

「またか。いいかげんにしろよ」

「うそじゃない。ほんとうにかいじゅうがいたのよ!」

 そのとき、巨大な生き物が、窓の外を横ぎった。長いくちばしに、長くとがったトサカ。大きな、コウモリの羽のようなつばさ。

「ほ、本物のプテラノドン!?」

 ジャックは、窓へかけよって、外を見た。

 プテラノドンが、フロッグクリークの森の上を飛んでいる。大きなつばさを動かすたびに風がおこり、木の枝が、ざわざわっと波うった。

 ジャックは、プテラノドンをよく見ようと、窓から大きく身をのり出した。

 そのときだった。

 急に風が強くなったかと思うと、ツリーハウスがぐらりとゆれ、ゆっくりとまわりはじめた。

「こんどは、なんだ?」

「お兄ちゃん、あぶない!」

 アニーが、ジャックのシャツを引っぱった。回転が、どんどんはやくなる。目がまわる。ジャックは、アニーにしがみついて、ぎゅっと目をつぶった。

「うわぁぁ!」──

 と、とつぜん、なにもかもが止まって、静かになった。

 なにも聞こえない。

 ジャックは、おそるおそる目を開けた。

 ツリーハウスの中のようすは、なにも変わっていなかった。窓からは、なにごともなかったかのように、夕日がさしこんでいる。アニーもぶじだし、本も、床においたリュックも、そのままだ。

 ジャックは、ほーっとため息をついて、窓の外を見た。

 そこは、フロッグクリークの森ではなかった!


第2回へつづく


【予約受付中】みんな知ってる大ベストセラーが、生まれ変わって再登場!

11月刊『[カラー新装版]マジック・ツリーハウス 恐竜の谷の大冒険』発売予定!


著者: メアリー・ポープ・オズボーン 訳者: 食野 雅子 イラスト: 甘子 彩菜

定価
1,430円(本体1,300円+税)
発売日
サイズ
四六判
ISBN
9784048116558

紙の本を買う

12月刊『[カラー新装版]マジック・ツリーハウス 女王フュテピのなぞ』発売予定!


著者: メアリー・ポープ・オズボーン 訳者: 食野 雅子 イラスト: 甘子 彩菜

定価
1,430円(本体1,300円+税)
発売日
サイズ
四六判
ISBN
9784048116565

紙の本を買う

リニューアルポイント
☆カバーイラストは、甘子彩菜さん新規描き下ろしの壮大なビジュアルで!
☆本文全文フルカラー! カラフルな挿絵と読みやすいページで作品世界を楽しめます。
☆巻末には学べる資料がたっぷり! 探求学習の導入にも最適な内容、教材としての利用もどうぞ!

 

『マジック・ツリーハウス』シリーズ紹介中!



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