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【期間限定】『恐怖コレクター』1巻無料スペシャル連載 第4回


シリーズ累計100万部突破(※海外発行部数を含む)の大人気ホラー「恐怖コレクター」が、2026年秋にアニメ化決定! 最新刊『恐怖コレクター 巻ノ二十八 赤い手帳の誕生』が好評発売中! 
ますます注目の「恐コレ」1巻を、期間限定で特別公開するよ。
もう一度ふりかえり読書して、アニメへの準備をカンペキにしておこう!

※公開期間は2026年8月31日23:59までです。


4つ目の町 恋のおまじない

KAMISAMA@LOVE.MAILという
メールアドレス宛(あて)で、メールの件名に『好きな人の名前』、
本文に『願い事』を書き込み送信。
その後、受信ボックスに届いた送信エラーメールを
削除(さくじょ)して、送信メールのほうだけ保護する。
すると恋の願いが適(かな)うという。


* * *

「はあ~、私ってどうしてこんなに気が弱いんだろう」
 中学校の女子トイレで、谷口美里(たにぐちみさと)はひとり、鏡にむかってため息をついていた。
 鏡に映る美里の顔はまったく元気がない。
 理由は、先ほどまで行われていた部活動にある。
 美里は中学1年生でテニス部に所属している。
 運動神経は決して良い方ではなかったが、親友の柴田七海(しばたななみ)も同じテニス部に所属しているので、毎日楽しく練習することができた。
 部の同級生とも仲が良く、先輩もみんな優しい。
 何より美里が楽しみにしていたのは、週に1度行われる男子との合同練習である。
 女子テニス部と男子テニス部は普段(ふだん)別々に練習している。
 しかし週に1度だけ、一緒(いっしょ)に練習するのだ。
 美里が楽しみにしていたのは、その男子テニス部に所属しているある先輩(せんぱい)と身近に接することができるからだった。
 山下悠馬(やましたゆうま)。男子テニス部のキャプテンである。
 サラサラとした茶色い髪(かみ)に、日焼けした健康そうな肌(はだ)。
 目はキリッとしていて、鼻は高く、口を開くといつも白い歯が見えた。
 合同練習では山下が美里たち1年生を指導してくれる。
 真面目で厳しいが時おり冗談(じょうだん)も言う優しくてカッコいい先輩……。
 美里はそんな山下のことをすぐに好きになってしまった。
 合同練習があるたびに、美里は彼(かれ)と何とか仲良くなりたいと思う。
 しかし、口下手で、男の子とあまり喋(しゃべ)ったことがない美里は、山下と全然会話できないまま数ヶ月が過ぎてしまっていた。
 美里はアニメが好きだが、山下はそんな話には興味がないだろう。
 それでも、美里は今日の合同練習で彼に絶対に喋りかけようと心に誓っていた。
(それなのに……)
 今日、美里はいつも以上に緊張(きんちょう)してしまい、山下がそばに来ても一言も喋ることができないまま部活を終えてしまった。
(こんなことじゃ、いつまで経っても仲良くなんてなれないよ……)
 美里は大きなため息をつくと、ガッカリしながらトイレから出ていった。


 部活が終わると、美里はいつも七海と一緒に帰る。
 トイレから出た美里は、校門前で待っている七海のもとへ向かった。
「ごめん、お待たせ!」
 落ち込んでいることがバレないように、美里はわざと明るい声を出した。
 七海には山下が好きだということは言っていない。
 だから落ち込んでいる理由を聞かれると面倒(めんどう)だと思ったのだ。
 すると、校門前で立っている七海が、スマホを見ながら何かをしているのが見えた。
「ゲームでもしてるの?」
 美里がたずねると、七海は首を横にふってニコッと笑った。
「今ね、おまじないをしてたんだ。美里、『神様メール』って知ってる?」
「神様メール?」
 美里はそんな名前のメールは聞いたことがなかった。
「クラスの友達に教えてもらったの。スマホとかケータイでできる恋のおまじないで、そのおまじないをすると、すぐに好きな人と仲良くなれるんだって」
「えっ、すぐに? ねえ、どうやるの?」
 美里は思わずそのまじないに興味を抱(いだ)いた。
「結構簡単だよ」
 七海はスマホの画面を美里に見せる。
「最初に新しいメールを開いて、あて先に『KAMISAMA@LOVE.MAIL』って入力するの。そして件名のところに『好きな人の名前』、本文のところに『デートしたい』とか『付き合いたい』っていう願い事を書き込んで、それをそのまま送信するの」
「送信? そんなアドレスでメールってちゃんと届くの?」
 LOVE.MAILなどというドメインでメールが届くとは思えない。
 すると、七海は「届かないよ」とあっさり答えた。
「もちろんエラーメールになって戻(もど)ってきちゃうんだけど、そこが重要なの。エラーメールが戻ってきたらそれを削除(さくじょ)して、送信メールのほうだけ保護するの。そうするとね、本文のところに書いた願い事が叶(かな)うんだって」
 そう言って七海はメールを見せた。
 そこには件名のところに『綾野真人(あやのまさと)』とあり、本文のところに『デートできますように』と書かれている。
「綾野真人くんって?」
「同じ塾(じゅく)に通ってる男の子。前からよくお喋りしてて、それで何となくいいな~って思ってたんだ」
 七海が先ほどスマホで何かをしていたのは、どうやらこのメールの送信だったらしい。
「ほんとに願い事叶うの?」
「うん。教えてくれたクラスの友達は願い事が叶って、好きな人とデートできたらしいよ」
「そうなんだ……」
 美里はそれを聞き驚(おどろ)きながらも、何だか信じられなかった。
 もし本当にまじないに効果があるのなら、今すぐ山下と付き合うことも可能なのだ。
(だけど、こんな簡単な方法でそんなことができるようになるとは思えないよ……)
 美里がそう思っていると、七海がニコッと笑みを浮(う)かべた。
「美里も好きな人いるんでしょ?」
「えっ?」
「顔に書いてあるよ。ねえねえ、誰(だれ)なの?」
「誰ってそれは……」
 美里は山下のことを言おうと思ったが、何だか恥(は)ずかしくなって言うのをやめた。
 七海が好きなのは塾でよく喋っている相手なのだ。
 美里は山下とほとんど喋ったことがない……。
「好きな人なんか……、別にいないよ」
 美里はとりあえず、そう答えることにした。


 その日の夜。
 美里は自分の部屋で宿題をしながら、ずっと神様メールのことを考えていた。
(もしほんとに願いが叶うんだったら、私もやっぱりやってみたい……)
 美里は机の隅(すみ)に置かれているスマホをじっと見つめる。
 だが、神様メールが本当に効果があるかどうかは分からなかった。
 そのとき、スマホにメッセージが届いた。
「七海からだ……」
 美里はそのメッセージを見てみる。


七海『やったよ!』

 メッセージにはそれだけが書かれていた。
 美里はすぐに『どうしたの⁇』と返信をする。
 すると、七海からメッセージが返ってきた。


七海『真人くんとデートすることになったの! 神様メールのおかげだよ!』

「噓……」
 美里は目を大きく見開く。
(ほんとにおまじないの効果があったんだ)
 美里は急に明るい表情になった。
「だったら私も!」
 美里は神様メールが信じられるようになり、すぐに新しいメールを開くと、あて先に『KAMISAMA@LOVE.MAIL』、件名のところに『山下悠馬』と書いた。
(あとは、本文だよね……)
 しかし、美里は本文にどう書けばいいのか分からなかった。
 七海は普段から仲の良い男の子とデートできるように願い事をした。
 だが、美里は山下とほとんど喋ったことがなかったのである。
(いきなりデートなんかムリだよ……)
 もしデートすることになっても、全然喋ることができないような気がした。
 そのせいで、せっかくデートができたのに山下に嫌(きら)われてしまう可能性だってある。
 美里はどういう願い事をするのがいちばんいいのか悩(なや)んだ。
(まずは山下先輩と仲良くなることが大切だよね。そういうときに最初にするべきことは……)
 瞬間(しゅんかん)、美里の頭の中にあるアイデアが思い浮かんだ。
(そうだ、お喋り! お喋りできるようになればいいんだ!)
 喋ることができれば、山下とデートにも行けるようになる。
 美里は本文に『山下先輩と仲良くお喋りできるようになりたい!』と書き込むと、そのメールを送信した。
 すると、すぐにエラーメールが返ってきた。
「エラーメールは削除するんだったよね⁇」
 美里は確かめるように、削除ボタンを押(お)してエラーメールを消した。
「あとは、送信メールを保護すれば願い事が叶うはず……」
 美里は心の中で『山下先輩と仲良くお喋りできますように』と願いながら、送信したメールを保護することにした。


 翌日。
 美里はドキドキしながら学校へ向かっていた。
 山下とは通学路が同じで、途中(とちゅう)の交差点でよく会う。
 交差点のそばには大きなメガネの絵が描(か)かれたメガネ屋の看板が立っていて、みんなはそこを「メガネ看板の交差点」と呼んでいた。
 美里はいつもそこで山下の姿を見かけるものの、挨拶(あいさつ)すらできず、少し離(はな)れた場所からただ眺(なが)めているだけだった。
(だけど今日は違(ちが)うはず!)
 美里は願い事が叶い、山下に声をかけてもらえると思っていたのだ。
 やがて、美里はメガネ看板の交差点に到着(とうちゃく)し、信号待ちをするために立ち止まった。
 交差点には10人ほどの人々がいる。
 美里は辺りをキョロキョロと見回して、山下の姿を探した。
「いた!」
 山下は端(はし)のほうで信号待ちをしている。
 美里は自分の存在に気付いてもらおうと、彼のそばへ近づいてみることにした。
 だがそのとき、ひとりの男子生徒が山下のそばへやってきた。
「おはよう」
「おお、おはよう」
 男子生徒は山下と同じテニス部の部員だ。
 山下は彼と喋るのに夢中で、真後ろまでやってきた美里の存在にまるで気付いていなかった。
 信号が赤から青に変わり、山下は男子生徒とともに歩き始めてしまう。
(そんな……)
 やはり、まじないには効果などないのだろうか?
 美里はガッカリして落ち込むと、顔を下に向けた。
「谷口だっけ?」
 突然(とつぜん)、前から声が聞こえた。
 美里が顔をあげると、山下が立ち止まってこちらを見ている。
「えっ、あっ」
「分からない? ほらっ、男子テニス部の」
「わ、分かります! 山下先輩です!」
「覚えてくれていたのか。キミも、ここが通学路なんだ?」
「は、はい。あっ、おはようございます!」
 美里はあわてて頭を下げた。
「ああ、おはよう。そうだ。どうせなら一緒に学校に行こうよ」
「えっ?」
「だめかな?」
「い、いえ、だめなんてないです。一緒に行きたいです!」
 美里はあまりにも急な出来事で気が動転していた。
 しかし同時に、嬉(うれ)しくて思わず笑顔になってしまう。
(おまじないが効いたんだ……)
 美里は本当に神様メールに効果があったことを確信すると、急いで山下のそばへと駆(か)け寄った。



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