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映画「天気の子」、ドラマ「ブルーモーメント」の気象監修を務める荒木健太郎氏による、「すごすぎる図鑑シリーズ」の最新作『最高にすごすぎる天気の図鑑』。
最高におもしろくて興味深い気象のトリビアを紹介しつつ、今回は身近なものを使った実験や観察も満載です!
連載第4回は、「すごすぎる天気と防災のはなし」の中から「AIで天気予報はどこまでできる?」「予想・予測・予報は似ているようでちょっと違う」「天気の急変に備えよう!気象情報の使いこなし方」を紹介します!
※本連載は『最高にすごすぎる天気の図鑑』から一部抜粋して構成された記事です。
AIで天気予報はどこまでできる?
学校の授業でも使われることのあるAI(人工知能)。意外にも天気予報には昔から取り入れられています。
天気予報は、物理法則から将来の大気を計算する数値予報モデルをもとにしています。モデルの結果は数値の羅列で人間が解釈しにくいため、天気や最高気温などに翻訳するガイダンスを使って、予報担当者が予報を作成します。
ガイダンスの多くはニューラルネットワークというAIです。これは人間が決めた特徴からコンピュータが学習するもので、モデルのクセを修正できますが、未学習のことはできないなどの特徴があります。近年ではこれがさらに発展して、コンピュータがより深く学習して自ら特徴を見つける深層学習(ディープラーニング)が登場。
最新の深層学習のAI予測では、これまで苦手とされてきた大雨や猛暑など極端な現象も予測精度が高まったというのですから驚きです。さまざまなアプローチで予測技術の開発が進められています。
ガイダンスのしくみ
深層学習による気象予測のしくみ
豆知識
最近は生成AIで画像や動画もつくれるようになりました。「太陽側に影がある」などおかしいところがあるかで本物の写真かを見わけられますが、精密なものは専門家でも本物の写真かを見わけるのが困難なレベルになってきています。
予想・予測・予報は似ているようでちょっと違う
天気予報などで未来のことを解説するときに、予想、予測、予報という、似た言葉が使われることがあります。何が違うのか考えてみましょう。
まず予想は、あらかじめ想像することです。主観的な考えという意味が強く、必ずしも数値予報モデルの結果のような客観的な根拠がなくても使われます。ただ、次の予測・予報の解説に使われることも。
予測はあらかじめ推し量るという意味で、気象学であれば数値予報モデルなどの何らかの客観的な根拠をもとにしたものです。そのため、人間の手を入れていない計算そのものを予測と表現することが多いです。
最後に予報は、予想して知らせる(報じる)こと。気象業務法では「観測の成果に基づく現象の予想の発表」と定められ、数値予報モデルや観測の結果などをもとに予報担当者が作成・発表するものです。
このように、言葉によって少しずつ意味合いが違います。天気予報を聞くときに気にしてみましょう。
予想・予測・予報の違い
豆知識
予測技術が発展して、気象庁の予報官や気象予報士による予報作業が不要になるのではという議論があります。当面は人による作業が必要ですが、将来的には防災の観点で解説するという役割が人にとっては重要になりそうです。
天気の急変に備えよう!気象情報の使いこなし方
急な雷雨で困った、という経験もあるかもしれません。でも、大丈夫。気象情報をうまく使えば天気の急変に備えられます。
まず、翌日以降の天気については、気象庁ウェブサイトで週間天気予報を確認しましょう。信頼度がA〜Cで表現され、BやCの場合は予報が変わる可能性があるので最新の予報を確認すると有効です。今日・明日の詳しい天気は、天気分布予報を使えばいつ・どこで・どんな天気になりそうかがわかります。気象庁「今後の雨」では15時間先までの降水分布予報が見られ、どこでどのくらい強い雨が降りそうかもわかります。直前では、気象庁「雨雲の動き」でレーダー観測によるリアルタイムの積乱雲の位置や動きを確認できます。
天気予報で、大気の状態が不安定、雷、竜巻などの言葉が使われるときは、天気の急変が予想されます。このようなキーワードを聞いた場合は、観天望気や気象情報を使いこなして備えましょう。
気象情報をうまく使おう
豆知識
気象庁ウェブサイトは最新の気象情報以外にも、気象や気候について学ぶための教材がとっても充実しています。とくに「知識・解説」には多くの解説があり、「各種データ・資料」で過去の気象状況を調べても楽しいです。
気象情報と観天望気で、空とうまく付き合おう
1週間後に迫る運動会。いつどんな気象情報・観天望気を使えばいいか確認して、天気を予想しちゃおう!
防災や減災に役立つ!
天気や気象は、ふだんの生活に直結していること、空は誰でも観察できることからとても身近で楽しい情報が盛りだくさんですよね。その知識は、じつは防災や減災にとっても役立つんです。楽しみながら、防災にも役立つこの本。大人でも十分たのしめる内容ですので、ぜひ親子で読んでみてください。
【書籍情報】