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君は恐怖をおし殺してトラの目をじっと見た。ほかのみんなは息をひそめて、その様子をうかがっている。
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トラと目線が合ってしばらく間があった。まるで何時間もたったみたいだ。君は体中汗でびっしょりになる。
トラは目線をそらさず君との距離を取っていたが、ほどなく後ずさりしてやみに消えた。トラと出会ったら視線をそらさずにジッとしていることが大事みたいだ。トラは背後からおそいかかる習性があるため、背中を向けてにげていたら今ごろ…考えるだけでぞっとする。
「変ね…」
シェリーがアナライザーをかざしてつぶやいた。
「ちょっとデータを確認したんだけど、今のトラ、ジャワトラって表示された。でもジャワトラは1980年代に絶滅しているのよね。こわれたのかな…出発前に点検したんだけど」
そう言ってシェリーはアナライザーの電源を切った。
もう辺りは真っ暗になって、足元も見えない。
「大丈夫だった?」
「こっちは問題ない」
暗やみの中でやり取りするメンバーの声が聞こえる。ライトは?