ふしぎでちょっぴりこわ~い“おばけ”は、いつの時代も子どもたちの人気者。そして、10月は、そんなおばけがモチーフになる行事・ハロウィンがあります。もともとは欧米で行われていた行事ですが近年では日本でも定着し、秋には園や子ども会などでかわいい衣装に身を包んだ子どもたちをよく見かけるようになりました。また、子どもだけでなく大人もコスプレをして楽しむ人気の行事となっています。
ハロウィンではなぜ、おばけやモンスターなど怖い仮装をしてきたかというと、10月の最後の日は死後の世界の扉が開いて悪霊がやってきてしまうと言われており、その悪霊を驚かせたり「仲間だ」とだましたりするために怖い衣装を着るのだそう。
そんな、おばけの絵や衣装、かぼちゃの装飾が街にあふれるこの季節にちなみ、今回は「おばけ」をテーマにした絵本を紹介します。ちょっぴり怖くて、でもなんだか人間味があって、くすっと笑えるおばけたちの姿を、ぜひ身近に感じてみてください。
おばけのてんぷら
3~5歳
「おばけのてんぷら」
作・絵/せなけいこ
ポプラ社 1,430円
うさこは食べることが大すきな、メガネをかけたうさぎ。サラダや、おみおつけを作るために草つみに出かけると、こねこくんがおいしそうなてんぷらを食べていました。そのおいしさに驚いたうさこは、さっそくてんぷらを作ることに。たまねぎが目にしみたのでメガネを外して涙をふきながら、てんぷらをあげては食べてを繰り返していると、いいにおいが山のおばけまで伝わりました。おばけは小さくなって鍵穴からうさこの家に忍び込むと、あげたてのてんぷらをつまみぐい。しかし、油ですべってころもの中にぽちゃーん! 目の悪いうさこは「いやに いきの いい やさいね」とかんちがいして、おばけを油の中にほうりこみました。おばけはそのまま、てんぷらになってしまうのでしょうか???
食いしん坊でおっちょこちょいなうさこと、これまた食いしん坊でいたずら好きなおばけとのユーモラスなかけ合いに笑ってしまうこの絵本。
おばけが出てきますが怖いおばけではありません。てんぷらの匂いにつられて山からつい下りてきてしまって、おばけの力を使って怖がらせるというよりも、つまみ食いに精を出してしまうという人間味あふれる親近感がわくタイプ!
うさこのマイペースなドジっぷりに振り回される姿も愉快で、怖がりな子でもこのおばけなら、「おもしろ~い」とケラケラ笑ってしまうこと請け合いです。
くろくんとなぞのおばけ
3歳~
「くろくんとなぞのおばけ」
作・絵/なかやみわ
童心社 1,430円
くれよんのくろくんは、他のくれよんたちとなかよく暮らしています。しかしある朝目覚めると、きいろくんがいません。一日中探しても見つからず、へとへとになって眠った次の朝、今度は、おうどいろくんとちゃいろくんがいなくなりました。「なぞのおばけに連れて行かれたんだ!」とみんな大騒ぎしますが、ついにはくろくんだけが取り残されて他のみんなは連れ去られてしまいます。机に怪しい足あとを見つけたくろくんは「みんなを探し出すぞ」と足あとをたどっていくと壁の穴にたどりつきました。勇気をだして中に入っていくと、そこにはいなくなったくれよんたちが! でも、みんな困った顔をして帰ろうとしません。いったいどうしてでしょう?
「なぞのおばけ」の正体が分からず、最初はミステリータッチで進んでいきます。眠ってしまうと少しずつ連れ去られてしまうという怖さに「おばけ」への恐怖心も高まりますが、途中に明かされるおばけの正体と連れ去った意外な理由にびっくり! 独りぼっちで取り残され泣きそうなくろくんを応援しつつ、おばけがくれよんたちを連れ去った理由には胸打たれます。
おばけの謎を追いかけるうちに、さまざまな方向に心は揺さぶられます。「なぞのおばけ」とは何者なのか? くれよんはなぜ連れ去られたのか? 一緒にハラハラしながら読み進めていってみてください。
おばけくんのハロウィン
1,2歳~
「おばけくんのハロウィン」
作・絵/新井洋行
KADOKAWA 1,320円
おばけくんは子どものおばけ。いつもひとりぼっちです。今日は子どもたちがおばけの仮装をするハロウィンの日。この日だけは、人間の子どもたちと一緒に遊んでも、おばけだとばれないのでウキウキです。いろいろな家を一緒に回って「トリックオアトリート」と叫んでお菓子をもらい、おばけくんも子どもたちも大はしゃぎ。ですが、ある家でおばけくんは犬にとびかかられ、思わず「ぎゃー」と空中に飛び上がってしまいました。「ばれてないかしら」とドキドキしますが、子どもたちは気にせず仲良くしてくれます。こんな楽しい日がずっと続くといいのに……と思わず願ってしまう、ハロウィンの一日をつづった絵本です。
ハロウィンの楽しい一日が、おばけくん視点で描かれたお話です。おばけの仮装をした子ども達があふれるこの日だけは、おばけくんが人間の子どもと遊んでもばれない特別な日。いつも遊び相手がいないおばけくんは、うれしくてたまりません。
ハロウィンが終わってしまうとおばけくんは、またひとりぼっちになってしまいますが、その寂しさにもみんな、ちゃんと気づいてくれていて、最後はとってもすてきな“ハッピーハロウィン”となります。おばけくんと子どもたちの、とっても優しい友情に心もぽっと温まるかわいい絵本です。
おばけパーティ
4,5歳~
「おばけパーティ」
作/ジャック・デュケノワ 訳/大澤晶
ほるぷ出版 1,540円
おばけのアンリは古いお城の大広間に、おばけの友だちを招待しました。晩さん会をして、みんなにごちそうを振る舞うのです。アンリはたくさんのお料理を用意しますが、お料理を運ぶにも、おばけは壁を通り抜けられてもお料理は通り抜けられません。カクテルを飲めば体が色とりどりのカクテル色になったり、チーズを食べたらチーズの穴ぼこ模様、特別メニューを食べたら透明になるなど、おばけならではの面白くて不思議な変化が楽しく展開していきます。最後はアンリがお茶目にみんなを驚かせ、一風変わった楽しいおばけのパーティの夜をつづった絵本です。
普通にごちそうを食べる様子を見るだけでも、いろいろなところにちりばめられたおばけの不思議が楽しめるおばけのパーティ。最初は白かったおばけたちが飲んだり食べたりするたびに色や形を変えていき、その絵の変化を見るだけでもとってもワクワクします。
全員透明になってしまい、透明な姿のまま片づけをしているシーンはお皿やフォークだけが宙に浮かび、おばけの世界の摩訶不思議さに夢中になりそう。
楽しそうだけれどなんだか不思議なこのパーティに、子どもたちも「行ってみたい!」と顔をほころばせる絵本です。
おばけマンション なぞのいしのぞう
3歳~
「おばけマンション なぞのいしのぞう」
文/鈴木翼 絵/村上康成
世界文化社 1,320円
たくさんのおばけ達が住んでいる“おばけマンション”。こうもりがマンションに入ると、変わった石の像がありました。中からかすかに「石にされたんだ。助けて」という声が聞こえてきます。それは大変! 助ける方法を探しにマンションの中を探検することに。最初に、ふわふわおばけのカフェに行きますが助ける方法は知らないよう。次はゾンビのおすし屋さんに行きますが、ドラゴンのたまごやきやトカゲの目玉ぐんかんなど、変わったおすしを出されるだけでやっぱり方法は分かりません。メデューサというヘビのおばけのしわざかも、とその部屋に行ってみると、「石にしてやるー!」と襲いかかってきて……。いったいどうなってしまうのでしょうか⁉
ちょっとまぬけでユーモラスなおばけたちがたくさん住んでいる“おばけマンション”。そこで石にされてしまった人を見つけ、助けるためにマンションのおばけたちを次々と訪問していきます。
かわいいおばけに、とぼけたおばけ、ちょっぴり怖いおばけまでいろんなおばけが勢ぞろい。メデューサの弱点も見つかり石の人のなぞも解け、ドキドキ読み進めながら一件落着ですっきり終わる面白い絵本です。
元保育士で遊び作家として活躍している作者の鈴木翼さんのパネルシアターが元になった絵本なので、読んでいる子どもたちも絵本の物語に参加して、自分もマンションを探検している気分で楽しめますよ。
今回はおばけがテーマの絵本を紹介しました。
次回は、「プラスチック」がテーマの絵本を紹介予定です。(11月公開予定)
お楽しみに。
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