春は、子どもたちの新入園・新入学の季節。そうした新生活に合わせて、この時期に行われることが多いのが「引っ越し」。年度の切り替え時期でもあるのでパパママの転勤や人事異動も3月を区切りによく行われますし、ちょうど入園や新学期などに合わせて住まいを変えたりすることも多いですよね。
ただ、そうした引っ越しに伴って子どもたちに訪れるのは、転園や転入などによるお友達との別れや寂しさ。仲良しのお友達と離れてしまったり、新しい園や学校でお友達ができるだろうかと悩んだり、不安からストレスも感じてしまうこともあると思います。
ですが、別れがあれば新しい出会いや発見もあります。今回は、そんな引っ越しによって新しい生活へ旅立つ子どもたちを応援するような絵本をご紹介いたします。
やどかりのおひっこし
4歳~
「やどかりのおひっこし」
作/エリック・カール 訳/もりひさし
偕成社 1,540円
あらすじ
海に住む“やどかり”は、貝がらのお家がきゅうくつになったので、引っ越しをしようと思いましたが、広い海の底に一人でいると怖くてたまりません。すると、大きくて丈夫そうな新しい貝がらを見つけました。
さっそくお家にしてみましたが、なんだか地味で寂しい気がします。そこで、出会ったイソギンチャクに「ぼくの いえのうえに すんでくれないか」とお願いしました。
それから、ヒトデ、サンゴ、まき貝、ウニ、ハダカイワシ、小石と出会い、みんな新しいお家に一緒にきてくれて友達になりました。お家はとても立派になり、お友達もたくさんいて大満足です。
ですが、1年経つと、やどかりはまた大きくなって別の家を探さなくてはいけません。友達を置いていきたくはありません。やどかりは悩みますが……。
おすすめポイント
海の生き物であるやどかりは、貝がらを家として、貝を背負って生活します。そして体が大きくなると、背負っている貝を取り替えるため引っ越しし続けなければいけない生き物です。
広い海の底で一人ぼっちで生活するのはやどかりだって怖いものですが、やどかりは頑張ってたくさんのお友達を作ることができました。でも、また新しい貝がらに引越しをしなくてはいけなくなります。
せっかくできたお友達と離れ離れになってしまうことに最初は悩みますが、やどかりはくじけません。初めての引っ越しのときも怖かったけれど、ちゃんとお友達ができたのですから!
引っ越しによって新しい世界に踏み出す子たちの背中を押してくれる絵本です。
おかえし
3歳~
「おかえし」
作/村上桂子 絵/織茂恭子
福音館書店 1,320円
あらすじ
たぬき一家の隣に、きつね一家が引っ越してきました。
きつねの奥さんは、さっそくたぬきの奥さんのところへ、かごいっぱいのいちごをもって挨拶にやって来ました。たぬきの奥さんは喜びつつ「わたしも なにか おかえししなくっちゃ……」と、掘りたてのたけのこを「いちごの おかえしです」と渡しました。
するとまた、きつねの奥さんが「おかえしの おかえしです」と花と花瓶を置いていきました。たぬきの奥さんは次に「おかえしの おかえしの おかえしです」と絵と壺を。きつねの奥さんはそのおかえしにイスとクッションを。
おかえし合戦は止まらず、お互いの家の家具を持ち出すばかりか、ついにはきつねのぼうやとたぬきのぼうやもおかえしに!
引っ越しのご挨拶から始まったとんでもない展開に大笑い必至の絵本です。
おすすめポイント
引っ越しをして、まず気になるのはご近所付き合いではないでしょうか? そのためにお隣さんへ挨拶するのはとっても大事。この絵本のきつねの奥さんも、だからこそとっても丁寧に、たぬきの奥さんへ挨拶の品物を持って行きます。
そして「いただきっぱなしだと失礼になっちゃうから、贈り物には“おかえし”をしないと!」となる流れは、ご近所付き合いあるあるかと思います。たぬきの奥さんも、きつねの奥さんへお返しをしますが、どちらもとっても真面目だからこそ、お返しはエンドレスで続いていきます。
絵本の画面の中では左にたぬきの家、右にきつねの家があり、お互いの家の中の物が左右にどんどん入れ替わっていき、子どもたちまでもが入れ替わっていく様は絵を見ているだけでも大笑い。たぬきもきつねも似た者同士の一家なので、これからどんどん仲良くなっていくのではないでしょうか?
またあえるよね
3、4歳~
「またあえるよね」
作/あいはらひろゆき 絵/こみねゆら
教育画劇 1,210円
あらすじ
かなちゃんとなつきちゃんは、仲良し同士。桜のある公園で一緒にお花見をしました。あんまり楽しすぎて、なつきちゃんは「かなちゃんのおうちにいく!」と言って泣き出しました。かなちゃんはなつきちゃんの頭をなでながら「またあそぼうね」と慰めました。
ですが、春休みが終わって園に行くと、なつきちゃんがいません。お父さんの急な仕事の都合で引っ越してしまったのです。
一緒にお花見をした桜並木を見ると、なつきちゃんを思い出して、かなちゃんは涙が出てきました。
しばらくすると、なつきちゃんから1通の手紙が届きました、そこには……。
おすすめポイント
仲良しのお友達がいなくなってしまい、残された方の子の寂しい気持ちが丁寧に描かれています。
お父さんの転勤で、なつきちゃんはいなくなってしまいましたが、まだ小さいかなちゃんには、なぜ、いつもそばにいたなつきちゃんが今いないのか、よく分かりません。一緒に見た桜を見て「なつきちゃんは もう いない」という事実に、たくさんの涙を流すのです。
満開の桜が咲く美しい春を舞台に、お友達との別れと、暗示される再開への期待が描かれた優しい絵本です。
たのしいひっこし
4歳~
「たのしいひっこし」
作/岡田よしたか
小学館 1,430円
あらすじ
はるおは、一家でとある町に引っ越してきました。どんな町かなと近所を歩いていると犬のお家と猫のお家があり、まずは犬と猫に引っ越しの挨拶をしました。
すると、「ほんなら ぼくらの ともだち しょうかいしたげるわ」と町を案内してくれて、シマウマのシマを描く手伝いをしたり、カニ缶の家に住む大家族のカニのお父さんに出会います。さらには巨大な金魚、タイ焼き、火星人などなど、不思議で愉快なご近所さんたちと知り合いになりました。
引っ越しで見知らぬ町へきた不安があっという間に吹き飛ぶ、愉快なお話です。
おすすめポイント
引っ越しで初めてやってきた町は、どんな場所でどんな人がいるか、分からなくて戸惑いますよね。
この絵本のはるおくんも、最初はこの町がよく分からなくて不安そうでしたが、気のよいご近所さんと出会って、どんどん知り合いの輪を広げていくことができました。
また、出てくるご近所さんたちがみんなとってもユーモラス。しま模様が途中までしかないシマウマさんや、クジラ並みに巨大な金魚さん、自分も引っ越してきたばかりという火星人さんたちという不思議なメンツ。
そんなみんなと楽しく交流をしつつ、はるおくんは新しい町にどんどんなじんで友達がたくさんできるのでした。
10人のゆかいなひっこし
5歳~
「10人のゆかいなひっこし」
作/安野光雅
童話屋 1,815円
あらすじ
この絵本は、めくると右ページと左ページに別々の家が描かれています。最初は左側の家に、それぞれ格好の異なる10人の子ども達がいて、めくっていく度に左側の家から右側の家へ一人ずつお引越しをしていきます。
小さなころから知っておきたい「10までの数」を、10人の子どもたちがお引越しをして移動していくことで、自然に数えて覚えることができる内容です。穴あきのしかけ絵本にもなっていて、窓から見える子どもの数をもとに、「見えていない子は何人かな?」と算数の概念も学ぶことができます。
楽しみながら数に親しめる、ユニークな算数絵本です。
おすすめポイント
この絵本は、『旅の絵本』などで有名な安野光雅さんが考えた“美しい数学”シリーズの1冊で、数の概念の中でも基本となる1から10までを引っ越しをテーマに分かりやすく学べ、かつさまざまな方向で数の仕組みを考えさせてくれる内容となっています。
左側の家から右側の家へ一人ずつ移っていく様は「引き算」、右側の家に左側の家から引っ越ししてくる様は「足し算」と考えられます。
また、左側の家には5つの穴あきの窓があり、窓から子どもが何人か見えているのですが、例えば右側の家に3人いて左側の家には7人いるはずなのに、窓から見えている子は2人、その場合窓から見えていない子は何人いるのかな? など、「10」の数をさまざまに分解して数と量の感覚を身につける遊びが楽しめます。