2月3日頃に行われる「節分」は、立春という一年の始まりを迎えるために悪いものを追い出そうと行われる年中行事です。子どもたちにとっては「豆まき」のイメージがあり、鬼のお面をかぶったパパママや先生にむかって豆をまいて、鬼退治をした後は年の数だけ豆を食べます。そのほかにも、鬼がこないように、とげとげの柊の葉や鬼の嫌いな臭いと言われるいわしの頭を飾ったり、最近ではその年の縁起のいい方角(恵方)を向いて恵方巻を食べたりもします。
鬼とは、災いや邪気という悪いもの全般を表したり、人の中に住みつくよこしまな物の例えとも言われます。今回は、鬼といってもちょっと抜けていたり人間くさかったりするユーモラスな鬼のお話の絵本を紹介します。
ソメコとオニ
小学校低学年~中学生
「ソメコとオニ」
作/斎藤隆介 絵/滝平二郎
岩崎書店 1,760円
あらすじ
5つのソメコは大人たちにも兄ちゃんにも姉ちゃんにも遊びに付き合ってもらえません。ソメコが遊びに夢中になるとすぐ、「ソメコ、あっちゃ行って あそべ。いい子だからナ」といってみんな行ってしまうのです。
ところがある日、ソメコが一人でおままごとをしていると、怖い顔をしているけれど、いくらでもソメコと遊んでくれるおじさんがやってきたのです。それは鬼のおじさんで、ソメコを岩屋に連れ去ると“金の俵を一俵届けないとソメコを食ってしまうぞ”という手紙を書こうとします。
しかし、ソメコは鬼のことをちっともこわがらず「サァ、おじさんと ふたりッきりで あそべるゾ!」と、かくれんぼやら鬼ごっこやら、おじさんの周りをちょこまかちょこまか。さあ、ソメコとオニは一体どうなってしまうのでしょうか?
おすすめポイント
“鬼”というと、ふつうは子どもをさらったり食べたりする悪い鬼を思い浮かべると思います。この絵本の鬼自身も、最初はそうやって人間に悪さをしようとソメコをさらいました。しかし、そうは問屋がおろさなかったのがソメコのすごいところ。
毎日遊ぶことに一生懸命なソメコは、相手になってくれるのであれば鬼のおじさんであっても大歓迎。「遊ぼう遊ぼう」と鬼は追いかけまわされ夜も寝られず、へろへろになっていくのです。
なんだか子育て中のパパママも身につまされて、鬼に同情してしまいそうですよね。滝平二郎さんの昔話風の挿絵に「鬼、こわそう~」と思いきや、なんだか人間味あふれるユーモラスな鬼に、ふっと笑ってしまう鬼の絵本です。
オニじゃないよおにぎりだよ
3,4歳~
「オニじゃないよおにぎりだよ」
作/シゲタサヤカ
えほんの杜 1,628円
あらすじ
鬼は“おにぎり”がだーいすきで、おにぎりばかりを食べています。ですが、いつものようにおにぎりを食べていると「たすけてー!」「くわれるー!」と山へ来た人間たちが逃げていきました。
長い時間が経って、人間たちの落とし物に気づきます。それはお弁当箱に入った“おにぎり”。味比べをしようとパクリと食べたとたん、そのまずさにびっくり! そりゃあ時間が経ってカチカチバサバサ、ちょっぴりプーンと匂うのですから当たり前。ですが鬼たちは「いつもあんなおにぎりを食べているなんて、かわいそう!」「うまいおにぎりを届けてあげよう!」と勘違いして、おにぎりを作り始めます。
しかし、鬼の姿を見た人間たちは大慌てで逃げていくばかり。鬼たちは訳が分からず「突然おじゃましたから驚かせたかな?」とさらにやる気を見せておにぎりを作ると、今度は「にんげんどもー! おりてくよー!」と太鼓をドンドン打ち鳴らしながらまた街へ向かいます。さあ鬼は人間たちに、おいしいおにぎりを食べさせることはできるのでしょうか?‼
おすすめポイント
「鬼はおにぎりがだいすき」の時点で「だじゃれ?」とちょっと笑ってしまうのですが、この鬼たちは、それだけにとどまりません。なんといっても、3匹の鬼たちはそろっておっちょこちょいのお人好しで、妙にやる気のあるタイプ。なんだかにくめないですよね。
そんな鬼たちが、「おいしいおにぎりを人間たちに食べさせたい!」という一念で大暴走していくこの絵本。鬼たちのやる気が変な方向にいきながら、あの手この手でおにぎりを食べさせようと奮闘する様もちょっと愛らしく、「こんな鬼ならこわくないかも!」と、子ども達も大笑いしてしまうことうけあいです!
あおくんふくちゃん
3歳~
「あおくんふくちゃん」
作/みやもとかずあき
講談社 1,650円
あらすじ
青鬼のあおくんは「鬼は外 福は内」という声でまかれる豆から逃げ回るのにひと苦労していました。福の神のふくちゃんは逆に、おうちの中にいるばかりでつまりません。
そこで、2人は役割を交換することにしました。鬼の角とふくちゃんの髪の毛を取り替え、服も取り替えあおくんにお化粧をして、節分の一日だけ交代です。ふくちゃんは「鬼は外」と豆をまかれ、あおくんは「福は内」とおうちの中から豆まきをする側になりました。
あおくんは「ふくのかみさん だいじょうぶ? かおが あおいですよ」と言われつつも福の神の役を楽しみますが、おうちの人々の顔色がどんどん悪くなっていき大慌て。あおくんは本物の福の神じゃないので家族の元気がなくなってしまったのです!
おすすめポイント
鬼だって、いつも「おにはそとー」と豆をまかれてばかりではうんざりしてしまいますよね。そこで、このお話の青鬼・あおくんは、ふくちゃんと相談して福の神をやってみようと思い立ちます。
2人は衣装や鬼の角まで取り替えて変装しますが、あおくんは顔も青くて牙も出て、ふくちゃんは角はあっても白くて優しそうで、絵で見るちぐはぐ感がなんともコミカルです。そしてやっぱり福を呼びこむためには本物の福の神でなくてはいけないようで、焦るあおくんの姿にもくすっと笑いがこみ上げてきます。
絵本の中には豆まきをしたり恵方巻を食べたりする家族の姿が描かれ、読みながら子どもたちに豆まきのやり方や由来を話し合うこともできますよ。
オニのサラリーマン
5,6歳~
「オニのサラリーマン」
文/富安陽子 絵/大島妙子
福音館書店 1,760円
あらすじ
鬼のお父ちゃん、オニガワラ・ケンは、地獄勤めのサラリーマン。朝しゅっとスーツを着ると「おとうちゃん、いってらっしゃい」と見送られながら家を出て、仕事に使う金棒片手に満員のバスに揺られて出勤です。
地獄に着いたら上司のえんまさまに挨拶をし、更衣室で鬼の衣装に着替えます。今日の仕事は血の池地獄の監視。自由奔放な地獄の亡者たちを注意するのも大変で、うっかり居眠りをしてしまっているうちにとんでもないことに!
当然えんまさまからも大目玉をくらい、お父ちゃんはストレスで角も折れそうになりました。鬼のお父ちゃんは鬼だけれど、こうして毎日頑張って働いているのです……。
おすすめポイント
人間から見ると「こわ~い」印象のある鬼ですが、実は鬼だって毎日地獄に出勤して決められた仕事を必死にこなしているんですよ? という愉快な視点から鬼の姿を描いているこの絵本。
満員のバスに揺られるだけで疲れるし、失敗して上司のえんまさまに怒られるのも辛いし~という人間のサラリーマンのような鬼の生活が、大阪弁で愉快にテンポよく描かれています。
鬼だって世のため地獄のため家族のため、頑張って働いているんだね、と仕事帰りにはぐったりしている鬼のお父ちゃんの姿にちょっぴりしみじみしてしまう、人情味あふれる絵本です。
えんまのはいしゃ
3歳~
「えんまのはいしゃ」
作/くすのきしげのり 絵/二見正直
偕成社 1,320円
あらすじ
地獄の入口で、ほら吹きの歯医者が、えんま様の前に座らされていました。歯医者が生前に仕事を怠けていたくせに「天下一の歯医者」と、ほらを吹いて患者に痛い思いをさせてきたことを責められていたのです。しかし歯医者は「わたしの うでまえは、たしかに てんか一」と言い張ります。
そこで、えんま様は虫歯の鬼たちを連れてきて「いますぐ、このものどもの はを なおしてみろ」と歯医者の腕前を試そうとしました。地獄に送られてはたまらない! と歯医者は、持ち前の“ほら吹き”の才で、鬼たちやえんま様を出しぬこうとしますが……。
おすすめポイント
えんま様は死者たちの生前の行いを審判し、嘘をつくと舌を抜いて地獄に送ってしまうという存在。そんなえんま様の前で“ほら”(大げさに言う嘘のこと)を吹くとは、なかなか大胆な行いですが、歯医者はえんま様たちが「嘘だ」と言うに言われぬ絶妙なほらを吹くことによって、地獄行きの審判をくぐり抜けていきます。
ひょうひょうとほらを吹く歯医者と、歯医者によってきりきり舞いさせられなんとも情けなーい顔つきの鬼たちとえんま様のかけ合いがなんとも味わい深い、とんちのきいたユーモラスなお話です。
今回は鬼がテーマの絵本を紹介しました。
次回は、「引っ越し」をテーマにした絵本を紹介予定です。(3月公開予定)
お楽しみに。
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