「――えっ? きのう、空ちゃんの家の神社に行ったかって?」
サービスエリアで、トイレ休けいの時間。バスを降りてすぐ、蘭ちゃんに聞いてみた。
でも、「ううん」って首を横にふられた。
「わたしは行ってないけど……どうしたの?」
「えっと、ちょっと気になっただけ。蘭ちゃん、ありがとう」
う~、ちがってた~。蘭ちゃんと別れて、ハレくんと合流する。
「ハレくん、どうだった?」
「登山好きの尾山ってやつに聞いたけど、ちがうって言われた。ほかの、ライノートの候補のやつらにも聞いてみたけど、いなかった……あっ、アメ!」
ちょうど、二組の候補のクラスメイトと話し終えたアメくんを、呼びよせる。
「アメくん。あの子は、神社に来たって言ってた?」
「ううん、来てないって。バスで聞いたほかの子も、ちがってたよ」
みんなちがうの? これだけさがしても、見つからないなんて。
「もしかして、五年生じゃないのかな? わたし、聞きまちがえちゃったかな?」
「不安になるな。オレだって聞こえたって」
「そうだよ。それに、まだフウとライが調べた結果が分からないよ。二人はどこに行ったかな?」
きょろきょろ、二人の姿をさがす。
「あっ、二人ともいたよ! おーい……」
呼ぼうとして、やめた。
ライくんは、木のベンチにすわって、ぼんやり遠くをながめてる。そんなライくんを、フウくんがうしろから、しずかに見つめている。
二人とも、しょんぼりしたように背中が丸い。まだ、気持ちを引きずってるんだ。
そうだよね。ライくんはショックを受けたままだし、フウくんはちゃんと「ごめん」って言えてないし。
「あいつら……ったく。オレが、聞いてくる。ついでに、シャキッとさせてくるわ」
ハレくんが、二人に向かってかけ出す。
「あっ、ハレくん。二人とも、あのことを気にしてるみたいだから……」
わたしもいっしょに、行こうとした。だけど、
「空ちゃんは行かないで」
アメくんに、手首をつかんで止められた。
「ハレだって分かってる。だけど今さら、蒸し返すようなことはしないで。二人のルールを守らなくちゃ」
「でもそれじゃあ、二人はもやもやしたままだよ。もう一回、話をするだけでも……」
「よけいに、こじれるかもしれない。このまま、そっとしておいて」
アメくんらしくない、強い口調。わたしは、それ以上なにも言えなくなる。
ちょうど休けい時間も終わって、みんながあわててバスにかけ込む。
「ぼくらも、行こうか。じゃあ、またね」
にっこり、いつものやさしいアメくんの顔にもどった。
「あ、うん……またね」
アメくんと別れて、一組のバスに乗り込む。ハレくんも、ダッシュしてもどって来た。
「聞いてきた。フウとライも、まだ依頼人は見つかってないって」
「そっか……」
「あと、ライから伝言。話があるから、目的地に着いたら一回集まるぞってさ」
「うん……」
「空まで、しょげるなよ。始まったばっかりだ。願ったやつは、ぜったいに見つかる」
ハレくんは、ぽんっとわたしの背中を押して、先に席にもどる。
依頼人さがしも、もちろんだいじ。でも今のわたしは、べつの理由でもやもやしてる。
アメくんに、わたしなりに考えてることを言おうとしたけど、言えなかった。
だって、アメくんの言うことが正解なのかもしれない。わたしよりも、お天気男子四人はずっとずっと長くいっしょにいて、おたがいにいろんなことを知っている。
もう一度ちゃんと話をして、ためこんでる気持ちをすっきりさせたらいいんじゃないかなっていうわたしの考えは、お天気男子たちには当てはまらないかも。
わたしはただ、だまって見ていることしかできないのかな……。
席に着くと、莉子ちゃんはすばやくこっちを向いた。
「空、窓がわにすわる?」
「えっ、どうして?」
「気分、悪いんじゃないの? 休けいになったら、まっ先にバスを降りていったし。気持ち悪いとかなら、窓がわで遠くの景色を見たらいいよ。それとも、お水飲む?」
心配してくれてる。
莉子ちゃんに、このもやもやを相談したいけど、お天気の神さまのことはひみつだし。
……でも、神さまのことをひみつにしたまま話すなら、いいかな。
「莉子ちゃん、聞いてほしい話があるの。じつはね……」
きのうの、フウくんとライくんの出来ごとから、さっきの、わたしとアメくんのやりとりまでを、神さまのことにはふれないで話す。
「わたし、四人の関係をよく分かってなくて。というか、あんまり教えてもらえなくて。だから、なにをしたら一番いいのかも分かんなくて、もやもやして……」
教えてもらってないこと、ほかにもたくさんあるよね。
たまたま、わたしがみんなの力をとっちゃっただけだから、教えてもらえないのかな。
なにも知らないままで、わたしは、みんなのためになにができるんだろう。
「そんなことがあったんだ。せっかくの林間学校なのに、いろいろつらいね」
莉子ちゃんが、わたしの気持ちを代弁してくれる。
「でも空は、一颯くんと稲妻くんに、ちゃんと仲直りしてほしいんでしょ? だったら、そうすればいいと思う」
「でも、アメくんが」
「あたしは、空の味方だよ。仲直りに協力してほしくなったら、いつでも言ってね」
莉子ちゃんは、きっぱり言ってくれた。
もともとサバサバしてるけど、運動会でリレーのリベンジをしてから、もっとじぶんの気持ちをはっきり言うようになった気がする。
「うん。莉子ちゃん、ありがとう」
莉子ちゃんは自慢の親友で、こうして仲よくしてくれるだけですごくうれしいのに。
わたしがなやんでいるときは、すぐに気持ちを分かってくれて、迷わず味方でいてくれる。
一人じゃないって思えて、すごく心強いな。
そうだ。まずは、わたしの気持ちを、フウくんとライくんに伝えてみよう。「二人の気持ち、分かるよ。わたしは味方だよ」って。
そうしたら、少しは、二人の心が元気になるかも。
第5回へつづく(1月5日10時に公開予定♪)
書籍情報
- 【定価】
- 858円(本体780円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 新書判
- 【ISBN】
- 9784046324009