「――おい、おい。起きろ」
肩をゆさぶられて、ゆっくり目を開ける。すぐ近くに、ライくんがいた。
「……ライくん、どうしたの?」
「それは、こっちのセリフだ。なにしてる? ハレもアメもねむっているし」
横を向くと、ハレくんとアメくんはまだ目を閉じている。
フウくんが二人の耳元に顔を近づけて、大きく息を吸いこむ。
「おっきろーーーーーーーーーー!」
「うわっ! うるさっ!」
「耳がこわれるよ!」
二人とも、飛び上がるように起きた。
「なんで、みんなして、ねちゃってたの?」
「いやそれが、急にねむくなったんだよ。ふわあ~」
「急に……?」
ライくんが、少しだけまゆをひそめる。
「まあ、いい。それで、願いごとはなんだったんだ? お客が来ていただろ」
「えっと、それが。うとうとしてたから、はっきり分からなくて……」
わたしは、正直に答えた。
「林間学校って、言葉は聞こえたの。だから、わたしたちと同じ学校の五年生が来たんだと思うよ。でもそのあと、晴れも雨も聞こえて、どっちか分からなくて。二人も、そうだよね?」
ハレくんとアメくんにも、確認する。
「いや。オレは、晴れにしてほしいって聞こえたぞ」
えっ、ハレくん?
「ううん。ぼくは、雨をふらせてほしいって聞こえたよ」
ええっ、アメくん⁈
「あのなあ、晴れに決まってるだろ。林間学校で雨を願うやつがいるわけない」
「なにか事情があって、雨がふってほしいって思ってる子だっているかもしれないだろ」
二人は、まったくじぶんの意見をゆずらないで、じっとにらみ合う。
はわわっ。このままじゃあ、二人がケンカになっちゃうよ~!
「ハレもアメも、落ちつけ。こういうときのために、あれがあるんだろ」
ライくんが、屋根を指さす。黒いカメラ――防犯カメラと目が合った。
そうだった! 夜雲さんが、わたしたちが学校に行っている間も、願いごとを聞き逃さないためにとりつけてくれたんだった。
「カメラで確認すれば、ばっちりだね! あ~、よかった」
さっそく、はしごを使ってカメラをとり外す。
「えーっと、このボタンを押せば再生できるはず……あれ?」
なんにも映らないよ。どのボタンを押しても、画面はまっ暗。どうなってるの~?
もたもたしていると、夜雲さんが帰ってきた。
「みんな、ただいま。留守番ありが……って、どうしたの? ぼくの顔をじっと見て」
「夜雲さ~ん、助けて~。この防犯カメラを再生したいんだけど、ぜんぜん映らないの」
「まさか、そんなわけないよ。買ったばかりの新品だし。貸してごらん」
夜雲さんが、慣れた手つきで操作する。でもしばらくして、にがーい顔をしてふり返った。
「……ごめん、みんな。原因は分からないけれど、たぶんこわれてるみたい」
「「「「「えーーーーー!」」」」」
そ、そんな……。どうして今日にかぎって。
「このままじゃあ、願いごとが分からなくて、みんなで地獄行き……」
「空、あきらめんな!」
ハレくんが、声を張り上げる。
「居眠りで願い聞き逃して地獄行きなんて、オレはぜったいにイヤだ! なんとしてでも、願いを言いに来たやつを見つけるんだ。同じ学校の五年生なのは分かってんだ。今から、学校に行くぞ!」
「今日は日曜日で、だれも学校にいないよ~」
もう、絶体絶命だよ~!
「こうなったら、今から七夕まつりに行って、調べるしかないな」
ライくんのメガネが、きらんと光る。
「地元のまつりなら、だいたいみんな遊びに来ているだろう。その中から、だれが依頼人か調べよう」
「でも、どうやって? 林間学校は明日から始まるんだよ? しかも、二日目って聞こえたから、二日目が終わるまでに、お願いした子を見つけてかなえなくちゃいけない……時間ないよ~」
「たしかに時間は少ない。そこで、これを使う」
ライくんが、一冊のむらさき色のノートを見せる。
「このノートには、五年生全員について、俺が調べたことが書いてある」
「い、いつの間に……ていうか、どうして⁈」
「学校という集団生活を送るうえで、ほかの児童について調べるのは当然だ。そして今から、このノートの情報をもとに、林間学校にとくべつな思い入れがありそうな児童をしぼって、聞きこみする。アメの言うとおり、わざわざ神社にまで来たのには、なにか事情があるはずだからな」
なるほど! ライくん、さすが~!
「まずは、明日の準備を終わらせるぞ」
みんな、いそいで家の中にもどる。
でもフウくんだけが、ぼんやり立ち止まっていた。
「フウくん、どうしたの? みんな、もどるよ?」
「あっ、うん! はやく準備、終わらせなきゃねー!」
パッと明るい表情にもどって、かけ足でみんなを追いかける。
いつものフウくんなら、「わーい、おまつり!」ってまっ先にはしゃぎそうなのに。
やっぱり、太鼓のこと、責任を感じてるんだよ。たのしい気持ちになんか、なれないよね。
「空ちゃん、ほんとうにごめんね」
夜雲さんがわたしの前に出てきて、手を合わせてあやまる。
「まさか、こわれてるとは思わなくて」
「ううん、夜雲さんのせいじゃないよ」
「おわびじゃないけれど。これ、林間学校に持って行って」
夜雲さんは、ポケットから、赤いお守りをとり出した。
「むかし、空ちゃんのおばあちゃんが、ぼくにくれたものなんだ。助けがほしいとき、それを持っていのれば、かならず助けてくれる。効果はばつぐんだよ」
「そんなだいじなもの、わたしが持って行っていいの?」
夜雲さんはやさしくうなずいて、お守りをわたす。
そして、わたしの手に、じぶんの手を重ねた。
「無事に、帰って来てね」
「夜雲さん……うん。ぜったいぜったい、帰ってくる!」
じぶんにも言い聞かせるように、宣言する。
もし、お願いをかなえられなかったら、地獄行きの林間学校……。
それだけは、ぜったいに阻止しなくちゃ!
第4回へつづく(1月4日10時に公開予定♪)
書籍情報
- 【定価】
- 858円(本体780円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 新書判
- 【ISBN】
- 9784046324009