「だいじょうぶ、みんな?」
かけつけると、部屋はしーんっとしていた。さっきは、大声が聞こえたのに。
それに、ライくんが一人ぽつんと立っていて、その周りをハレくんたちがかこんでいるって、へんな図……。
「どうしたの……あ!」
ライくんが持っている太鼓に、目がとまった。きれいで立派だったのに、今はやぶれて大きな穴が空いている。
「フウが、もどった風の力で遊んでいたら、うっかりやぶっちゃったんだ」
アメくんがこっそり教えてくれる。
なんてこと。ライくん、すごく大切にしていたのに。でも、フウくんに悪気はないはずだし。
どうしよう。大ゲンカになっちゃうかも……。
「ライ、あの……」
フウくんが、肩をふるわせながら声をかける。
「いい。フウがそそっかしいのは、分かっていたことだ」
ライくんは首を横にふりながら、それだけ言った。
意外だった。もっとおこるかと思ったんだけど……。
ライくんは、太鼓を入れないまま、リュックのふたをしめる。
「ライくん、持って行かないの?」
「ああ。空の言うとおり、林間学校には必要ないからな。それより、フウ」
ライくんが、じっとフウくんを見つめる。
「俺は、だいじょうぶだ。だから、お前も気にするな。忘れろ」
「ライ……うん! 分かった! おれ、気にしない! 忘れた!」
フウくんは大きくうなずいて、いつもの明るい顔を見せる。
あっさり解決しちゃった! すごい? って言っていいのかな。
とにかく、ケンカにならなくてよかった……。
プルルルルッ!
肩がびくっとふるえた。五年生になって買ってもらった、スマホが鳴ったみたい。
「もしもし。あっ、夜雲さん。どうしたの?」
『ぼくまだ、神社にもどれそうにないんだ。もうお昼で、お客さんが来るかもしれないから、みんなと留守番していてもらえないかな?』
「分かったよ、じゃあね。……みんな、夜雲さんから。ちょっとお留守番おねがいって」
「しかたねーな。行こうぜ」
ハレくんたちは、慣れた様子で外に向かう。わたしは、ママからもきていたメッセージに返信してから、おくれて玄関に行った。
ライくんが一人、まだ、くつひもをていねいに結んでいた。
「はぁ……」
うしろから声をかける前に、ライくんの口から、小さなため息が聞こえた。
がっかりしてるかんじ……?
もしかして、やぶれた太鼓のことかな。だいじょうぶって言ってたけど、ムリしてたのかな。
「ライくん、さっきのこと……」
「おーい。空、ライ、なにもたもたしてんだ」
外にいるハレくんに、呼ばれた。ライくんが、すっと立ち上がる。
「すぐ行く。空、なにか言わなかったか?」
ふり返ったライくんの顔は、いつもと変わらない。
「あっ、えっと……。ううん、なんでもない。行こう」
つい、そう答えた。だって、わたしの、聞きまちがいかもしれないし。
でも、ハレくんたちと合流したとき、見ちゃった。ライくんが気まずそうに、フウくんから視線をそらしたのを。そしてフウくんが、さみしそうにうつむいたのを。
やっぱり、なんでもなくないかも。だって二人とも、すごく気にしてるよ。
ケンカにならなくて、ほっと安心しちゃったけど……。
ほんとうに、このまま、終わりにしちゃっていいのかな。
第3回へつづく(1月3日10時に公開予定♪)
書籍情報
- 【定価】
- 858円(本体780円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 新書判
- 【ISBN】
- 9784046324009