「一着、五年一組です!」
あこがれの白いテープを、莉子ちゃんとならんで切った。すぐに係の子が来て、一着の手作りバッチをくれる。
わたし、ほんとうに一位になれた……。初めての一位だよ……。
「ほら、お前だって一位をとれるんだよ」
いつの間にか、目の前にハレくんがいた。
「ハレくん! なんでここにいるの?」
「こんどこそ、ほめてやろうと思ったんだよ。空、よくがんばっ──」
ドーンッ!
ハレくんが、フウくんにタックルされて吹き飛んだ。
「そらりん、やったじゃん! スゴいよ! ……って、ハレハレじゃん。なにしてんの?」
「それはオレのセリフだ! いきなりぶつかってきやがって……」
「おいハレ、運動会でふざけるな。ケガするだろ」
「まったく、なにやってるの」
救護テントから、保健委員のライくんと、見学中のアメくん(先生に、病み上がりだからって止められちゃった)が出てくる。
「注意するんだったら、オレじゃなくてフウだろっ」
「競技に出場する生徒以外は、クラス席にいるのがルールだ。ルールをやぶったお前が悪い」
「せっかく、カッコつけて出てきたのにねえ」
「うるさいっ。お前たちだって、出てきてんじゃん!」
「み、みんなっ。ここでさわいでたら、おこられちゃう……」
ほんとうに体育の岡田先生が来て、「席にもどりなさい!」っておこられちゃった。
「莉子ちゃん、ごめん。巻きこんじゃって」
「ううん。……ねえ、空。聞いていい? どうして、あたしと走りたかったの?」
「えっと。莉子ちゃんの、運動会のいやな思い出を、たのしい思い出に変えたかったから」
莉子ちゃんの足が、止まる。
「それって、あたしが前に話したこと? やっぱり、気にさせてたよね……」
「ううん。莉子ちゃんの気持ち、分かるって思ったの。わたしも、失敗したり、ビリになったりして、運動会がたのしくなくなってた……。でもね、今日変えることができたよ」
前を歩いている、ハレくんたちを見る。
「あきらめずにがんばったら、一位になれた。わたしでもなれるんだって、すごくうれしくて、たのしい。だから、だからね」
莉子ちゃんの両手をとって、ぎゅっとにぎる。
「莉子ちゃんも今日、あきらめずにがんばってほしい。リレーで失敗しただめな小鳥遊莉子って思い出のままでいてほしくないの。だって、莉子ちゃんなら、何回だって一位になれるし、活やくできるよ! わたしだって、莉子ちゃんと走ったから一位になれたもん。莉子ちゃん以外とだったら、ムリだった……。リレーはいっしょに走れないけど、全力で応えんするから。今日はいっしょに、最高の運動会の思い出をつくろう!」
素直な気持ちを、そのままぶつけた。
莉子ちゃんの目がうるうるしだす。でも、なみだはこぼさないで笑った。
「……うん、分かった。空といっしょに走っていると思って、がんばるよ」
「わたしと? 莉子ちゃんなら、もっと足の速い子を想像したほうがいいんじゃ……」
「分かったんだよ。空と仲よくしていたいのは、空がやさしくて、放っておけない子だからって理由だけじゃない。あたしがどんな子でも、どんな話を聞いても、見捨てないでくれる。たのもしくて、強くて、安心するからなんだって……空がいるなら、なにもこわくない」
「莉子ちゃん……」
こんどは、わたしの目になみだがたまる。
「ちょっと。全力で、応えんしてくれるんでしょ? 空は、泣いてるヒマないよ」
「……うん! となりにいるのと変わらないくらい、大きな声で応えんするね!」
コツンッと、おたがいのおでこを合わせて約束する。
「空、もうひとつ言いたいことがあるの。……天気を、晴れにしてくれてありがとう」
「えっ?」
「それだけ。はやくもどろう」
莉子ちゃんが、先にかけだす。
まさか、儀式を見られてた?! そ、そんなわけないよね……?
席にもどってから、深沢先ぱいが走っているのを見た。中島先ぱいとたのしそうに二人三脚して、一位でゴールしていた。
真央ちゃんは、低学年のダンスで元気いっぱいにおどっていた。それを観覧席にいるおばあちゃんが、うれしそうに手をたたいて見ていた。
みんなが、それぞれに思い出をつくってる。
わたしは手をかざしながら、青空を見つめる。
おばあちゃん、分かったよ。わたしが生まれる日に、きれいな晴れにしてくださいってお願いしてくれた気持ち。
大切な日を思い出すとき、一番に頭に浮かぶのは、どんな天気だったかってことだから。
わたしは、今日のこの天気を忘れない。だいじな、思い出の天気になるから。
第16回へつづく