「体育委員! こっち、コーン持ってきて!」
「はやくはやく! 平均台、すぐに片づけるよっ」
「は、はあい! 今行きますっ」
ひぃ~。体育委員のおしごとって、競技に出るよりたいへんかも~!
開会式のあとからずっと、校庭のあっちこっちを走りまわってる。
でも、走りながら、土がかわいてきているのが分かるのはうれしい。
太陽の力って、やっぱりスゴいなあ。
「つづいて、借り人競争をおこないます。出場する生徒は、門に集まってください」
放送委員のアナウンスが、校庭にひびいた。
「もう?! いそがなくちゃ!」
べつの体育委員の子にしごとをまかせて、わたしは入場門に走る。
「空!」
途中で、ハレくんと莉子ちゃんに呼ばれた。
「お前なら、きっと一位になれる」
「空、がんばれ!」
「うん! 莉子ちゃんは、まっててね」
「えっ? それって、どういう……」
「じゃあ、行ってきます!」
「──つぎに、第三レースをはじめます。出場する生徒は、コースにならんでください」
わたしは一番内側のコース。となりは……。
「あっ、そらりんといっしょだ! やっほ~」
「フウくん! な、なんで?」
「出るはずだった子が、調子わるくなって。おれがかわりに、出ることになったんだよね」
「そんな! フウくん、本物の風みたいに速いのに……」
あっ、そうだ。かっこ悪いことは、考えない、考えない!
ほおをたたいて、気合を入れなおす。
「フウくん、手加減しないでね!」
「するわけないじゃん。おれも、かっこよく走りたいからねっ」
パンッ! スタートの合図が鳴る。
フウくんは、スタートダッシュから速くて、あっという間に引きはなされる。
でも、あきらめない。アドバイスのとおり、ちゃんと前を向いて、うでをふって走る。
「天川さん、意外と速くない?」
「一颯には追いつけなさそうだけど、二位いけそうじゃん」
応えん席から、クラスメイトたちの声が聞こえた。
今までのわたしだったら、二位でもすごくよろこぶと思う。
だけど今日は、一位じゃなきゃだめなの。
お題の紙が落ちている場所に着いて、とっさに足元の紙をひろった。
【丸メガネを持っている人】
やった! 小さくガッツポーズして、じぶんのクラス席に向かう。
「莉子ちゃん、莉子ちゃん! リュックから、丸いメガネを出して」
莉子ちゃんはちょっとびっくりする。でもすぐに見つけて、さし出してくれる。
その手を、わたしはすかさずつかんだ。
「じゃあ、いっしょに走ろう! 莉子ちゃん、丸いメガネ持ってるから」
「えっ。でもこれ、あたしのじゃないし……」
「それは関係ないよっ。わたし、どうしても莉子ちゃんと走りたいの。おねがい、来て!」
「空……。分かったよ、行こう!」
二人の足を赤いたすきでむすんで、コースにもどる。
先に、フウくんとペアの大人の男の人が、ゴールに向かって走っていた。
「莉子ちゃん。いっしょに、いち、にって言うよ。せーのっ」
かけ声に合わせて、右足から出す。
「「いち、にっ。いち、にっ……」」
二人で声をそろえて、フウくんたちを追いかける。
だんだん足もそろってきて、スピードがぐんぐんあがる。フウくんたちの背中も、間近に見えてきた。
ふり返ったフウくんが、目を丸くする。
「うわっ、そらりんじゃん! おれたち、もっとスピードあげるよっ」
「いや、まってきみ! ぼくは、もう……うわっ」
ペアの男の人がころんで、フウくんもいっしょにたおれちゃった。
その間にわたしたちが追いこして、トップを走る。油断しないで、かけ声はつづけて。
そして──。