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大人気!「お天気係におねがい! 運動会を晴れにせよ!」先行ためし読み連載 第8回

 授業以外、人が来ない図工室の前にたどりついた。

 体育座りして、ひざに顔をうずめる。

 なにやってるんだろう、わたし……。

 いつもこうだ。みんなの言葉が気になって、じぶんがどうしたいのか分からなくなる。

 じぶんに、自信がないから。自信がついてきたと思ってたけど、気のせいだったんだ。

「空、ここにいたのか。むかえに来たぞ」

 声が聞こえて、半分だけ顔をあげる。ハレくんだった。ほかのみんなはいない。

「……アメくんたちは?」

「みんなを落ちつかせて、教室に行かせてる。空も、行くぞ」

「ムリだよ、行けない。わたし……」

「さっきみたいに、じぶんが悪いからとか言うなよ。お前はなにも悪いことしてないだろ」

「……でもみんな、わたしが悪いって思ってる」

「だから、逃げたのか?」

 ハレくんはかたひざをついて、わたしに視線を合わせる。

「逃げて、悪いことをしてないのに、悪いやつだって思われてもいいのか?」

「よくないけど。でも、だって……こわかったから」

「じゃあお前は、なんでもこわくなったら、あやまって逃げるんだな」

「……」

「晴れにする儀式のとき、悪天蝶はむちゃくちゃジャマしてくる。それは、クラスメイトたちに責められるよりこわいぞ。そうなったら、空は逃げるのか?」

 言葉が出てこない。わたしは、わたしは……。

「空は、かんたんにあきらめすぎだ。あきらめる気持ちが勝てば、天気も晴れにできない。何回も言うが、熱くなる心がないと──」

「わたしにはないよ!」

 思わず、大きな声が出た。目に、なみだがたまる。

「あるかなって思ったけど、やっぱりなかったんだよ。わたしはあきらめがはやくて、すぐに逃げちゃうから。ハレくんたちと出会ったときから、なんにも変わってないの」

 ああ、いやだな。こんなこと言っちゃうじぶん。

 うたがわれて、なにも言い返せないじぶんも。

 あやまらなくていいのに、あやまっちゃうじぶんも。

 ほんとうに、いやだ。だってこんなの、すごく、くやし──。

「くやしいよな、オレも同じ気持ちだ」

 パッと、ハレくんを見る。

「ハレくん。なんで今、わたしの気持ちが……」

「バレバレなんだよ、ウソがへたすぎて。ほら」

 ハレくんが、こぼれそうななみだを指ですくってくれる。

「よく見てみろ、外を」

 言われて、立ち上がる。廊下の窓から外をのぞくと、太陽がギラギラ光っていた。

「なんでこんなに晴れてるの……?」

「空の心が、くやしいって熱くなっているから、太陽も光ってるんだ。だけど、そのくやしさをかくせば、太陽もかくれる。空、ちゃんと言ってくれ。ほんとうは、どうしたいんだ」

 太陽をバックに、ハレくんはたずねる。

 わたしは目を閉じて、じぶんの心の中を見つめる。

「わたし……わたしだって、ちゃんとかざったって言いたい。でも、言っても、信じてもらえない雰囲気だった……。だから、やっぱりムリ。わたしは、みんなみたいに強くなれない」

 気持ちがぐちゃぐちゃのまま、頭を抱えてしゃがみこむ。

「もう、自信ないよ……」

 窓からさす太陽の光が、弱くなる。白い廊下に、影ができて暗くなる。

「空」

 ハレくんが、名前を呼ぶ。

「お前は変わった。心は、ちゃんと強くなってきてる。オレが保証する」

「……ほんとに?」

「もちろんだ。それに言ったよな。お前がどんなに自信をなくしても、きっと助けるって。約束はかならず守る。だから、顔をあげろ」

 ゆっくり顔をあげる。ハレくんは、わたしに向かってまっすぐ手をのばしていた。

「くやしいなら、あきらめなきゃいいだけだ。オレたちで、うたがいを晴らすぞ」

「……でも、信じてもらえなかったら?」

「信じてもらえるまで、あきらめずにがんばるんだよ。強くなれないから、あきらめるんじゃない。あきらめないから、強くなれるんだ」

「わたしに、できるかな?」

「ああ、強くなってきてるって言っただろ」

 ハレくんが、わたしの手をつかんだ。ぎゅっと力をこめて、立たせてくれる。



「空ならきっとできる、信じろ」

 ドクンッ。

 まただ。まるで、魔法にかけられたみたい。

 ハレくんは、ずっとわたしを信じてくれてる。だから、ハレくんが言うと、なんでもできそうな気がする。

 わたしの心が熱くなる。立ち上がって、動き出さずにはいられない。

 ハレくんは、ほんとうに──太陽みたい。

「分かった。わたしまず、みんなに正直に話すよ」

「ああ。オレもそばにいるから、安心しろ」

「えっと……。ハレくんは、じぶんの席にいてだいじょうぶ。わたし一人で話すから」

「なんでだよ」

「わたしのことだから。ハレくんの言葉じゃなくて、わたしの言葉で伝えなくちゃ。みんな納得してくれない」

 ずるいって言われてはずかしくなったのは、そのとおりだって思ったから。わたしが言わなくちゃいけないことを、だれかにまかせて言わせるのは、逃げてるのとおんなじだよ。

「わたしもう、逃げたくないから」

「……そうだな。じゃあ、がんばれ」

 ハレくんが、ぽんっと背中をおす。その手は、とってもあったかかった。

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