わくわくいっぱい、つばさ文庫の新シリーズ! 超~優柔不断で自分になかなか自信がもてない5年生の女の子、天川空がある日突然、天気をあやつるチカラを手にいれた!? 勇気も自信もなかったけど、つよい意思で天気をあやつるために、はじめて自分で目標をたてて、やるって決めた! 個性豊かなお天気男子たちといっしょに、運動会を晴れにせよ!(公開期限:2026年8月31日(月)23:59まで)
8★変わりたいココロ
「──なあ、空。てるてる坊主ってなんだ?」
「え、知らないの? 天気の神さまなのに!?」
ハレくんの質問におどろいて、声が大きくなる。あわてて口をおさえて、周りを見た。
みんな、とくべつ授業──てるてる坊主づくりに集中していて、聞こえてないみたい。
「あのね、ハレくん。てるてる坊主は、お天気をかなえてくれるお人形なの。晴れますようにって願いをこめてつくって、かざるんだよ」
「なんで人形にお願いするんだよ、オレたち天気の神さまがいるだろ」
「そうだけど。でもこのてるてる坊主づくりは、毎年の運動会前の行事だもん」
五年生と六年生がつくって、各クラスの体育委員が学校のあちこちにかざるの。
わたしたちのクラスは、昇降口にかざる。目立つ場所だから、みんな気合が入っている。
いろんな材料をつかって、かわいいチェック柄のものをつくったり、数人で協力して大きなものをつくったり。
「ハレくんも、好きにつくってみて。今日の放課後、わたしがちゃんとかざるから」
「空が一人でかざるのか? オレもいっしょにやる」
「もう一人の体育委員といっしょにやるから、平気だよ。それに今日は、ハレくんたちは、夜雲さんと神社の大掃除をやるんでしょ」
夜雲さん、「一人じゃたいへんで。やっとできるよ~」ってよろこんでた。
「そうだった……。しかたない。でもその後、走る練習もあるからおくれんなよ」
ハレくんの計画どおり、がんばって練習している。つらいこともあるけど、ちょっとずつ速く走れるようになって、自信がついてきた気がする。
「うん。なるべく、はやく帰るね」
そう答えて、じぶんのてるてる坊主づくりに集中する。
ハレくんたちのおかげで、晴れにしたいって気持ちが、だんだん大きくなってる。
その想いをこめて、ちゃんとつくろう。
***
「え! わたし一人?」
放課後になってすぐ、もう一人の体育委員の子があやまってきた。
「ごめんっ。さっき、親から電話があって、すぐ帰んなきゃなんなくなって……」
段ボールにつまっている、みんなのてるてる坊主を見つめる。
これを一人で……ううん、前向きにがんばらなくちゃ。わたしなら、できる!
一人になってから、じーっと掲示板とにらめっこする。
クラスみんなの気持ちがこもってるから、トクベツで、注目されるようにかざりたい。
そうだ。アーチみたいにかざろう! 虹っぽく見えるようにもして……。
色や大きさを見ながら、かざる位置を考える。まずは、柴くんたちの大きなてるてる坊主を、まん中の一番上にかざることにした。
でも、背伸びしても、掲示板の一番上まで手がとどかない。
しかたないから、教室からじぶんのイスを持ってきて、その上にのった。
うんっ、これなら届きそう!
右手にてるてる坊主、左手にテープを持って、かかとを上げる。
ぐらっ──。
イスが不安定にゆれた。わたしは、うしろにたおれそうになる。
「わっ……」
「あぶない!」
だれかが、背中を支えてくれた。
「だいじょうぶか?」
「ありが……って、ライくん……?」
メガネがないから、すぐに気がつかなかった。
「なんでここに? みんなと帰ったんじゃなかったの?」
「用があって、残っていたんだ。空がイスを持って走っているのが見えて、危険な予感がして追いかけてきた」
落ちたメガネをひろって、かけなおす。かばってくれたときに、はずれちゃったんだ。
「間に合ってよかった。ケガはないか?」
「うん。ライくんは? メガネ、こわれてない?」
「だいじょうぶ。それより、一人でかざりつけをしているのか? 俺も手伝う」
「えっ、いいよいいよ。わたしのしごとだから」
「空を一人にさせたら、また危険なことがあるかもしれない。高いところは、俺がする」
ライくんは、箱の中のてるてる坊主をとって、掲示板に手をのばす。
「ライくんは、いつも、いろんなことを心配してくれるね」
「言っただろ。空を心配して守ることが、俺の役目だって。危険なことや予想外のことから、俺がしっかり守れれば、空はおどろいたり不安になったりしないですむ」
「そうだね。ドキッとしてカミナリが落ちたら、こまるもんね」
「……いや、それだけじゃない」
ライくんの手が止まった。くるっと、わたしに顔を向ける。
「最近、空を見ていると、天気のことに関係なく心配になるんだ。目標を決めたとたん、無茶をするようになったから。まず、ハレのむちゃくちゃな計画に毎日付き合っている。このしごとだって、だれにも助けを求めないで一人でするなんて」
「無茶してないよ。わたし、がんばりたいの。今までちゃんとがんばってこなかったから……いっぱいがんばりたくて、しかたないんだ。ヘンかな?」
ライくんは、じっとメガネの奥から見つめる。
ふっと、口元がゆるんだ。
「いいや、ぜんぜんヘンじゃない。ハレに似てきたんだろうな」
ライくんのずっとけわしかった目が、やさしく笑っている。
ドキッとしかけて、あわててむねをおさえる。
「わっ、わたしがハレくんに? まさか。ていうかそれって、ほめてるの?」
「そう聞かれると、ビミョーだが……。でも、運動会の日を晴れにするためには、ハレに似るのはいいことだ。そのまま進めばいい。俺はただ、空を守るだけだ」
ライくんはまじめな顔にもどって、そう言った。
「だけど、今言ったことは、ハレにはヒミツだぞ。あいつは、すぐ調子にのるから」
「アメくんも言ってたね! たしかに、そうだね!」
「なにが、そうなんだよ?」
にょきっと、わたしたちの間にハレくんがあらわれた。
うしろには、アメくんとフウくんもいる。
「え! なんでみんないるの!?」
「ぼくたち、空ちゃんのことが気になって、もどってきたんだ」
「空のために学校に通ってるのに、置いて帰れないだろ。やっぱり、手伝う」
「ねえねえ、てるてる坊主のアーチつくろうとしてる? ナイスアイデアじゃん♪ ここにさ、太陽もかざろうっ。おれ、折り紙でつくるからさ」
「みんな……ありがとう!」
もうすぐ、運動会。今までは、憂うつでしかたがなかった。でも、今年はちがう。
引っ張ってくれるハレくんがいて、やさしく見守ってくれるアメくんがいる。
肩の力を抜かせてくれるフウくんがいて、心配してくれるライくんがいる。
お天気の神さまたちは、みんなそれぞれに心強い。
いっしょに過ごして、わたしの心も変わってきている気がする。
「これで……完成っ。わあ~、みんなのおかげで、きれいにできたよ!」
これなら、クラスのみんなにもよろこんでもらえると思う!
運動会当日も、がんばって晴れにしよう。
みんなの想いをかなえて、わたしも、ハレくんたちみたいに強くなるんだ!
第8回へつづく