第13回角川つばさ文庫小説賞受賞作『ナゾ世界いってきます! ふしぎな道具と海の底へ!』が発売前に69ページもためし読みができちゃう!
小学5年生のリコ、学校トップの成績の内斗、リコの親友の涼夏は3人だけで深海へ! おもしろさ保証(ほしょう)つきの大冒険ストーリー!
リコのおじいちゃんは冒険に出たまま帰ってこない! リコに残されたのは、ガラクタみたいな、だけど、ふしぎな力を持つ道具たち。そんなある日、内斗が神社の水たまりに飛びこんで、消えちゃった? なんと、その水たまりは、海につながっていた!? リコ、内斗、涼夏は、伝説の海底都市を発見し、さらには命がけのバトルや大脱出! わくわくドキドキの物語!
『ナゾ世界いってきます! ふしぎな道具と海の底へ!』
(深草ゆにえ・作 うちゃコ・絵)
2026年2月12日発売予定
※これまでのお話はこちらから
5 地図の外へ飛びだした⁉
最初に、太陽が見えた。
さっきまでザーザー降りの雨だったのに?
その太陽は、ゆがんで見えた。そこで気づいたんだ。
あ、そっか。わたし今、水の中にいるんだ。水の中から、太陽を見ている。
次に、体に何か小さなものが当たった。
それは、魚だった。
魚、水たまりの中に、お魚さん!?
わたしは思いきって、太陽めがけて浮きあがった。
「……プハァッ!」
途中で目が痛くなってつむっちゃったけど、割(わり)とすぐに海面に出たのがわかった。
ん? 海面? そっか、なんかしょっぱいもんね。ただの水の中じゃなかったんだ。
わたしはあらためて目を開く。そこにあったのは……。
「う、うわぁぁ! すっ、すっごーい!」
さんさんと太陽にてらされかがやいた、見わたす限りの海、海、海!
雲ひとつない空と、島ひとつ見えない果てしない海、そして、その先に見える水平線!
これはもう間違いない。ここは海だ! 水たまりの中に、海があったんだ!
わたしは、「せーのっ!」と息を吸って、思いっきり海の中に頭をつっこんで潜っていく!
コポコポと泡(あわ)を出しながら潜るわたしの視線の先にいたのは、銀色の大きな魚!?
ううん、違う! 大きな魚じゃなくって、さっきの小さな魚がたくさん集まってたんだ!
それは、無数の魚たちが太陽の光をギラギラ反射(はんしゃ)させながら泳いでいる光景だった。
それだけじゃない。魚たちの下には、カラフルなサンゴ! その横には茶色のカニが歩いてて、 周りには緑色のワカメみたいな海藻(かいそう)がゆれていて、白とか赤の貝殻もいっぱい!
そのあまりにもキレイな光景にウットリしてながめていると、少し息が苦しくなった。
一回、海面まで出て深呼吸をしなおす。そこで、気づいた。
……あっ、そうだ! 星月(ほしづき)くんはどこ!?
だって、星月くんを追って飛びこんだんだ。どっかに必ずいるはず……。
もしかして、おぼれちゃってるとか!? だとしたら、早く見つけないと死んじゃう!?
わたしは無我夢中(むがむちゅう)になって星月くんを探した。
大きな岩のかげ、森みたいに広がる色あざやかなサンゴの中、それでもやっぱり見つからない。
だいじょうぶかな……不安になりながら、海藻のいっぱい生えた何かの残がいの裏(うら)を、のぞく。
その先に、それはあったんだ。
ポッカリと大きく開いた、どこまでも深い、海の底にあるスキマ。
海の青色より、ずっとずっと色の濃いこん色の、底の見えない空間が、そこに広がっていた。
なにこれ……海の、穴?
わたしがどこまでも続く巨大な穴にあっけに取られていると、ふしぎなことが起きた。
スキマの方から、たくさんの魚たちが逃げるみたいに泳いできた! そして、
ボオオオオオオッ!
わたしの全身が、周囲の水が、ビリビリと震えた。
暗いスキマの方から、いきなり大きな音が響いてきた!
う、うひゃあ!? な、なになに!? モンスターのさけび声!?
あんまり驚いたから、ゴポゴポって、口の中にためていた空気が出てしまう。
や、やばっ、息が! とにかく、いったん海面に出ないと!
あわてて浮きあがろうとしたけど、あ、あれ? 全然、浮きあがれない。
それどころか、どんどん周りが暗くなってる!?
ウソ、わたしの体、下から何かに引っぱられているみたいに、少しづつ沈んでいる!!!
それに、脱がずに潜(もぐ)っちゃった服がベッタリとはりついて重くって……。
ぶくぶくぶく、残った息が、みんな泡(あわ)になって出ていった。
体が、あの深いスキマの方へと引っぱられていく。
く、苦しいっ!
そ、そんな、わたし、こんなところで死んじゃうの?
ダラーン、と、手足から力が抜ける。
パパ、ママ、おじいちゃん、ごめんなさい、わたし……。
目の前に広がる暗い、暗い、海の底。
うすれていく意識の中、遠くからだれかが近づいてきている、そんな気がした。
※ ※ ※
「……リコ、リコ!」
声がして、目が覚めた。
「……凉夏(りょうか)、ちゃん?」
わたしが答えると、凉夏ちゃんは一瞬(いっしゅん)ホッとした顔をして、すぐに表情を変えた。
「もうっ、リコはいつも無鉄砲(むてっぽう)すぎ! フツーあんなワケわかんないとこに飛びこむ!?」
「あ、あはは……ホントごめん……」
笑ってごまかしながら体を起こすと気づく。あ、わたし、神社の縁側に寝かせられてる。
「ここにいるってことは、凉夏ちゃんもあそこに飛びこんで、助けてくれたの?」
「ん? ああ、違う違う。助けたのはわたしじゃなくて」
そう言って、凉夏ちゃんは後ろを向いた。つられて見ると、そこには、
「ほ、星月くん!?」
びっしょりとぬれた髪(かみ)をタオルでふいている星月くんがいた!
「小泉(こいずみ)さん、お目覚めですね。おはようございます」
「……へ? あっ! おはようございます!」
「元気そうで何よりです。おケガはありませんか?」
「はい! ありません、先生!」
「いや、授業か!」
バシッと涼夏ちゃんがツッコむ。はっ! わたしはいったい何を!?
「ち、違う違う、そうじゃなくて! えーっと、助けてくれて、ありがとうございます!」
「いえ、当然のことです。趣味(しゅみ)でライフセーバーの勉強をしていたのがいきてよかったです」
「へ? らいふ、せーばー……」
「ええ。家にあるプールで練習しました。具体的には、砂をつめた大きなペットボトルをプールに沈めて、それを持って泳いで帰る訓練(くんれん)などです。他にもマネキンを相手に人工呼吸(こきゅう)の練習もしていたのですが、そちらのスキルは今回、出番がなかったようです」
「え? え?」と、すごい情報量にクラクラしていると、涼夏ちゃんがわたしの肩を引っぱった。
「あのねリコ、こんなこと言いたくないけど、用心しといた方がいいよ」
「え、なんのこと?」
「星月くんのこと! ちょっと変な人とは聞いてたけど、すごく変な人だったの!」
す、すごく変? たしかに、今のは少しビックリさせられた。でも……。
「でも、命の恩人なんだよ! そんな人を用心するなんて失礼じゃん! おーい星月くん!」
「あっ、ちょっとリコ!」
「星月くんってすごいんだね! 他にもいろいろなこと勉強してるの?」
「はい? ああ、もちろん。毎日のように、いろいろなことを試みています」
「へぇ〜! そうなんだ!」
「ありとあらゆる可能性に備えるため、やっていることです。この間は大きなイカにつかまれた場合にできるだけ長く耐(た)える練習を、そしてこの間は、断崖(だんがい)の絶壁(ぜっぺき)でバナナをふんで足をすべらせた場合、落ちないようにするための練習を行いました」
「へ、へぇ〜……そうなんだ……」
「ちょっと、お借りしますね〜」と言って、また涼夏ちゃんがわたしを引っぱっていった。
「で、どう思った?」
「ど、どうしよう涼夏ちゃん、想像を超えたよ! 想像を超える、おもしろ人間だったよ!」
「それは、すごく変な人ってことなの! 早いとこ帰るよ!」
「だけど、やっぱり命の恩人(おんじん)なわけだし……」
「ずっと適当なこと言ってるとしたら怖すぎるし、全部ホントだったとしても怖すぎるでしょ!」
「そうかもだけど! それってある意味、スゴい人だよ!」
「何より、水たまりに水着で飛びこんだりする時点でちょっとおかしいし、怪しい! そりゃ助けてもらったお礼は必要だけどさ、それが終わったらさっさと帰った方がいいって!」
変、か。だけど変って言うなら、あの水たまりの方がずっと変だよ!
それに、水たまりに飛びこんだのはわたしも同じだし、変なのはお互い様だよね!
「ねえ、星月くん! 星月くんは、あの水たまりについて何か知ってるの?」
「知っている、というのは正確じゃないですね」
「へ? どういうこと?」
「いずれ知ることになっている、とでも言いましょうか」
「なにそれ、はっきり言いなさいよ!」
「りょ、涼夏ちゃん落ちついて。そうだ! そもそもどうやって、ここのことを知ったの?」
「かんたんな話です。以前、この神社のおさいせん箱に五円玉を投げたのですが、水たまりに落ちてしまった。すぐに取りあげようとしたんですが、そこには何もない。なぜなら……」
「そっか、落ちちゃったんだね……水たまりの向こうの、海の中に!」
「はい。それで、この水たまりのナゾについて知ることになりました」
「で? さっきの、『いずれ知ることになっている』ってのは、どういうことなの?」
「それもかんたんな話です。この地球すべてのナゾを解くこと、それが、ぼくの夢だからです。だから今は知らなくても、いずれ必ず知ることになるわけです」
「……それって、ようするに、今は知らないってことでしょ!」
「そうとも言えますね」
「初めからそう言え!」
そっか、星月くんは夢のためにわざわざ大雨の日に水着まで着て水たまりに飛びこんだんだ。
この地球すべてのナゾを解く……なにそれ、そんなの、そんなの最高にワクワクじゃん!
「星月くんって、学校では変わってるって言われてるけど、やっぱりすごいよ!」
「ちょっとリコ! そういうのは本人の前では言わないの!」
「え、そう? むしろ本人に言わない方が、なんだか嫌な感じがしない?」
「リコがそうでも、向こうもそうだとは限らないでしょ!」
「ははは、いいんですよ二人とも。それよりお二人の方こそ、どうしてここに来たんですか?」
「え? あ、わたしたちはおじいちゃんの家でふしぎなメモを見つけて……あれっ、ない!?」
「はいこれ、さっきまでリコが着てた上着。メモはこっちでしょ?」
あ、あはは……そういえば、飛びこむ前に上着ごと凉夏ちゃんにわたしたんだっけ……。
わたされたメモをフムフムと読んだ星月くんは、指をピンと立てて言った。
「なるほど! では、次に解くべきナゾはこれですね。小泉さんのおじいさまは、どうしてこの水たまりのことを知っていたのか……何か手がかりはありますか?」
「あ、それならわかるよ! えっとね、わたしのおじいちゃんは冒険家なの! あ、わたしのおじいちゃんはアンティークっていうふしぎな道具を持ってるんだけど、それで、えーっと……」
「違う違う! リコは説明下手すぎ! えっとね、まず、リコのおじいちゃんの家の本棚(ほんだな)の裏にひみつの部屋があって、そこにプラネタリウムがあった。それでそこに星の……あれ?」
わかるよ。いろいろありすぎて、どう説明したらいいか全然わかんないよね。
「じゃあさ、星月くんもおじいちゃんの家に来てよ!」
「ぼくが? よろしいのですか?」
「もっちろん! わたし、星月くんと話してたら、なんだか仲良くなれる気がしてきた!」
「星月くん、リコの家にあるもの見たら、きっとビックリするよ?」
「それはどうでしょう。ぼくはもう『海につながる水たまり』なんて、ものすごくふしぎなモノを見たんですよ。さすがに、これ以上ビックリすることはないと思います」
※ ※ ※
「う、うわあああ!!! すごい! すごすぎる!!! 完全に物理法則(ぶつりほうそく)に反してます!!!」
ちょっと時間と場所が変わっておじいちゃんの家の、アンティークたちの部屋。
ニヤニヤしたわたしと凉夏ちゃんの前ですっごく良いリアクションをしてるのは星月くん!
今見せてるのは『絶対(ぜったい)に水が入らない金魚ばち』の実験だ!
まず、この小さな金魚ばちよりも大きい透明(とうめい)な水そうを用意して、中に水をためる。
そして、金魚ばちの中に折り紙で作ったツルを入れて、水そうの中に沈める。
フツーそんなことしたら、金魚ばちの中に水が入ってツルがびしょぬれになっちゃうよね。
でも、この『絶対に水が入らない金魚ばち』は違うんだ!
「金魚ばちが完全に水をはじいてるから、中のツルは乾(かわ)いたまま! こ、こんなことがあるなんて!」
「な〜にが『これ以上ビックリすることはないと思う』よ。ビックリしっぱなしじゃない」
「驚くべきことばかりです! さっきのカーペットも、これも!」
ふふふ、いくつ見せてもずっと新鮮(しんせん)な顔で驚いてくれるから楽しいんだよね〜。さて次は……。
わたしは陶器(とうき)でできた犬小屋と、そこに入ったワンちゃんの人形を取りだした。
「次はこれ! 『絶対におウチから離れたくないワンちゃん人形』! 見ててね」
そう言ってわたしが犬小屋からワンちゃん人形を遠くへ離すと、
バウバウバウ! ワンちゃん人形がすごい大きな声で鳴きながらおウチの前に戻って行った!
「この子のおもしろいところは、まだあるよ! こーして、目かくしを付けながら小屋から離すと……ほら戻らないでしょ!? で、目かくしを取ると!」
バウバウバウ! 自分がおウチの中にいないことに気づいて、急いで戻っていった!
「あはは! ね、かわいいでしょ? しかも、どんなに重い箱の中にワンちゃんを入れても、箱といっしょに小屋の前まで戻るんだよ! こんなのもう健気すぎて、かわいすぎる!」
「リコのかわいいは信用できないけど、このワンちゃんだけはわたしもかわいいと思う」
「凉夏ちゃん!? わたしのこと信じてなかったの!?」
「だって、リコっていつも変なガラクタをかわいい〜って持って帰ってくるし……」
そう言ってあきれる凉夏ちゃん。えっ、もしかしてわたし、センスずれてる!?
「まとめると、アンティークとは現代の科学を超える『絶対ルール』を持っている道具ということですね! みんなに見せれば、今までの世界の常識(じょうしき)が引っくり返りますよ!」
うんうん、わたしもそう思う! だけど、それができたら、楽だったワケでして……。
「それがそーもいかないの」
「え? どういうことですか?」
「それがねぇ、このふしぎな力、今のところ、わたしたち以外には見せても見せられないのよ」
アンティークを見つけてすぐ、わたしは真っ先にパパとママに見せたんだ。
でも、いくらがんばっても、アンティークのふしぎさが伝わらなくて……逆に、おじいちゃんがいなくなったショックで混乱して、変なことを言っているって心配されちゃった。
だから、最初に凉夏ちゃんに見せられた時はうれしかった。一人じゃないって、わかったから!
「星月くんにも見せられて、ホントよかったよぉ。ここまできてダメだったらさびしいし!」
わたしの言葉を聞きながら、星月くんはアゴに指を当てて何やら考えこんでいた。
「認識(にんしき)できる人間が限られている? またまたナゾが深まりますね」
「あーあ、みんなに見せられたら、すごい価値になったのに……」
その時、涼夏ちゃんがチョイチョイと手を振って、ないしょ話の合図をしてきた。
「それより、リコは星月くんのことどう思ってるの? 結構(けっこう)、気が合いそうだけど」
「え!? い、いや、おもしろい人だな〜とは思うけど。涼夏ちゃんこそ! 星月くん、家にプールとかあるらしいし、かなりのお金持ちだよ? そっちはどうなの?」
「お金持ちなのはいいんだけど、ちょっと変な人なのがね〜」
「あ、お金があれば、なんでもいいわけじゃないんだ」
「人を欲張(よくば)りあつかいしないで! わたしはただ、カッコよくて、スポーツができて、頭がよくて、やさしくて、おもしろくって……それでいて、お金を持ってる人がいいだけ!」
「すっごい欲張り!!!」
「欲張りじゃない! あと、大声だすな! 星月くんに聞こえちゃう!」
「これくらいだいじょうぶだよ! それに、涼夏ちゃんも大声だしたでしょ!」
「リコのが大きかった! あれじゃ絶対(ぜったい)に聞こえるよ!」
「いえ、何も聞こえていません」
「ほら、星月くんもこう言ってる! やっぱり聞こえてないよ!」
「まあ、それならいいんだけど……ん? 待って?」
「はい? どうかしましたか?」
「「聞こえてるじゃん!!!」」
* * *
「……それで、これが赤い星の指輪、というわけですね」
星月くんは赤い光を放つその宝石を、ちょっぴりまぶしそうに見つめていた。
「そして、小泉さんのおじいさまは天井の星座を完成させるべく、他の指輪を探しに冒険へ行った。そのための『入り口』が、あの『水たまり』だった。そういう仮説ですね?」
「絶対そうだよ! おじいちゃんがどうやって伝説の場所へ行ったのか、ずっとナゾだったけど、それも、あの水たまりみたいなものが入り口なら、全部解決するでしょ!」
「別の場所へとつながるゲート……なるほど、それならふしぎな冒険も可能でしょう」
「あと、このおじいちゃんの手帳(てちょう)も手がかりになると思う!」
「でもそれ、なんだか暗号みたいな字で書かれてて読めないでしょ?」
「そ、それはそうなんだけど……」
「私は、もう一度ここに行く必要がある」
手帳をパラっとめくった星月くんが、そうつぶやいた。って、えっ、ウソ!?
「もしかして、読めるの!?」
「ええ。これは筆記体と言いまして、クセがありますが、立派な英語の文です」
英語、そっか! 星月くんはイギリス育ちだから!
「しかし、インクがにじんで読めないとこも多い。それでもいいですか?」
「いいも悪いも、サイコーだよ! わたしたちじゃ、少しも読めなかったんだから!」
「わかりました。じゃあ続きを読みます」
星月くんはスウっと息を吸(す)いこんだ。
「私は、もう一度ここに行く必要がある。神の社の海の先、滅(ほろ)びの声が響きわたる海の谷、巨大な顔の待ちうける、太古(たいこ)の昔に滅びた都。その名は」
そこで星月くんは、読むのをやめた。とまどっているんだ。
「いや、まさか、そんなことが」
英語なんて全然読めない。筆記体なんてとんでもないわたしだけど、その名前だけはわかった。
だってその名前は、おじいちゃんの話を聞いてずっと想像していた、あの場所だったから。
星月くんが震える手で、手帳の、その部分を指さす。そこにあった名前は……。
『Atlantis(アトランティス)』
アトランティス。伝説上の、深海に沈んだ都市の名前だった。
つづく 第6回は2月5日公開予定です!