第13回角川つばさ文庫小説賞受賞作『ナゾ世界いってきます! ふしぎな道具と海の底へ!』が発売前に69ページもためし読みができちゃう!
小学5年生のリコ、学校トップの成績の内斗、リコの親友の涼夏は3人だけで深海へ! おもしろさ保証(ほしょう)つきの大冒険ストーリー!
リコのおじいちゃんは冒険に出たまま帰ってこない! リコに残されたのは、ガラクタみたいな、だけど、ふしぎな力を持つ道具たち。そんなある日、内斗が神社の水たまりに飛びこんで、消えちゃった? なんと、その水たまりは、海につながっていた!? リコ、内斗、涼夏は、伝説の海底都市を発見し、さらには命がけのバトルや大脱出! わくわくドキドキの物語!
『ナゾ世界いってきます! ふしぎな道具と海の底へ!』
(深草ゆにえ・作 うちゃコ・絵)
2026年2月12日発売予定
※これまでのお話はこちらから
4 バシャッとひとふみ別世界!
「……で、手がかりのために神社に行くのは分かったけど」
ザーザーザーッ!
「なんでこんなひどい雨の日なの⁉」
「しかたないよ凉夏(りょうか)ちゃん! 冒険の始まりはいつも突然(とつぜん)やってくるんだから!」
「突然始まるからって、突然出発しなきゃいけないワケじゃないでしょ!」
赤い星の指輪を見つけた次の日の放課後、わたしたちは二人で集まっていた。
理由はもちろん、神社へ行くため!
「それじゃ、小泉(こいずみ)リコ・早乙女(さおとめ)凉夏の探検隊、さっそく探検に出発っ!」
「勝手に出発させるな!」
あい変わらず不満げな凉夏ちゃんだけど、いつもなんだかんだついて来てくれるんだよね。
いつもは右に曲がってる帰り道を、左に曲がる。たったそれだけで、何か特別な気分。
目的地の神社がある場所は、わたしと凉夏ちゃんの家とは正反対。
よく知らない道に、よく知らない景色。目に飛びこんでくる全部が、新鮮(しんせん)だった。
お、あの家、庭におっきなワンちゃんがいる!
あっ⁉ アスファルトのスキマから、タンポポが生えてる!
「ねえねえ凉夏ちゃん、あれ見て! あっ、やっぱりあっち! うわぁ〜、あれもすっごい!」
「結局わたしはどれを見たらいいのよ!」
「ごめんごめん、わたし、こーいう普段は通らない場所、大好きだから! それに」
「それに?」
「今日は凉夏ちゃんもいっしょでしょ!」
「……ま、悪い気はしないけどね」
「おっ、涼夏ちゃん、てれてる?」
「てれてない!」
凉夏ちゃんに小突かれて、「うひゃ〜」と逃げる。逃げた先で、「ぐへっ」と転ぶ。
「ほーら! リコはすぐ転ぶんだから。まったく、わたしがいっしょにいないとダメだね」
凉夏ちゃんがサッと、うでをつかんでくれたからぬれずにすんだ。
「ずっといっしょにいてくれるの?」
「あんたが勝手に転ばなくなるまで、かな」
「じゃあ、ずっとだ」
「ずっと転ぶつもりか!」
二人で笑いながら歩くたび、水たまりがバシャバシャと鳴った。
うん、やっぱりだ。二人でいっしょなら、ザーザー降りの雨だって、楽しい!
かさに雨つぶが当たって鳴る音も、ちょっぴりオシャレな音楽って感じ。
「あ、ほら! あれだよ!」
目的地の神社、その真っ赤な鳥居(とりい)が見えてきた。
看板に書いてある名前は『和竜巳(わたつみ)神社』……ワタツミって読むらしい。
すっごく昔からあるけど、ほとんど人が来ないことで有名な場所。わたしだって小さいころ、おじいちゃんに連れてきてもらった一回しか記憶(きおく)がない。
そう、小学一年の時に、一回だけ。おじいちゃんの冒険の話をして、近所の子に笑われた後に。
グズって泣きついたわたしを、おじいちゃんはこの神社に連れてきてくれたんだ。
そうして……鳥居(とりい)の下で、あの話をしてくれた。
「リコは神様とか、そーいうふしぎなものは信じているのかな?」
「……信じてたけど、みんな『そんなのない』って笑うから、もう信じない」
「友だちが言うから? それじゃ、世界はずいぶん小さなものになるなぁ」
「どーいうこと?」
「友だち何人かの頭の中に全部がおさまってしまうほど、世界は小さくないってこと。いいや、むしろ……リコ、これだけは覚えておくんだ。世界は、決してせまくない」
鳥居から吹きこんだ風といっしょに、おじいちゃんの言葉はわたしの頭の中に刻(きざ)まれた。
それからというもの、行ったことのない場所の話を聞くとちょっぴり胸が高なるようになった。
地図にない場所、世界の果て、だれも知らない場所を想像するとドキドキするようになった。
それからなんだ。わたしが、そういう場所へ『行ってみたい』と思うようになったのは。
そんな思い出の場所だから、神社と聞いてまっさきにこの場所を思いついたんだけど……。
「えーっと、紙に書いてあったのは『入り口は 神の社の 海の中』だよね? 神社なのはわかったけど、結局『海の中』の部分はよくわからないんだよねぇ」
「そりゃわかんないけど、でも探してみないと始まんないよ! よーし、調査(ちょうさ)開始!」
わたしは勢いよく鳥居の先へ一歩をふみだそうとして……止まった。
「ん? リコ、どしたの?」
立ち止まった理由は単純で、入ろうとしたまさにその時、『星』が見えたから。
ううん、正確には星の、ペンダント。
五つの角を持った星の形のペンダントをつけた男の子が、神社の奥に向かって歩いていた。
透明なビニールがさごしに見える、少し青みがかった黒い髪。フードのついたジャケット。
そこからのぞく、形の整ったあの顔は……。
「星月(ほしづき)くん?」
わたしは思わずつぶやいた。
「え、星月って、ちょっと変なウワサがいっぱいある、あの?」
ザーザー降りの激しい雨のおかげか、星月くんはわたしたちに気づいてないみたいだった。
わたしたちは鳥居のかげにササっとかくれる。
「え? なんでこんな雨の日に、こんな場所に星月くんが? もしかしてここが家?」
「そんなわけない。ここは神社でしょ!」
わたしたちが戸惑ってのぞきこんでいると、星月くんはなんだかふしぎなことを始めた。
「……ねえリコ、あれって何してると思う?」
「何って、うーん、体操(たいそう)?」
神社の奥の屋根の下、ぬれないところにたどりついた星月くんは、わたしたちに背を向けて、足を伸ばしたり、肩を回したりし始めたんだ。
……うん、どう見ても体操だよね、アレ。
「成績トップの優等生が? 雨の日にわざわざこんなさびれた神社に来て、屋根の下で体操? ウワサ通り、変わった人だねぇ」
「あ、あはは、たしかによくわかんないけど、きっと何か理由があるんじゃ……」
えっ!?
「「ええええええっ!!!???」」
わたしと凉夏ちゃんは二人で叫んだ! い、いやいや、だってこんなの叫ぶしかないよ!
だって、星月くんが、いきなり服を脱ぎ始めたんだ!
ジャケットを脱いで、神社の縁側に放りなげる。シャツを脱いで、放りなげる。
そ、そして……。
「リコ! 見ちゃダメ!」
そう言ってわたしの目をかくそうとする凉夏ちゃん。
凉夏ちゃんの手をヒョイって外すと、星月くんはちょうど脱いだズボンを縁側に放りなげているところだった。その体には……なんと水着! ちゃんと最初からはいてたんだ!
二人でホッと息をつく。
でもでも、ホントーに驚くべきことは、そのすぐ後にやってきた。
完全に水着姿になった星月くんが、神社の奥にある大きな水たまりに近づいた。
そして、そこでもう一回、左右の腕をグルンと回すと、そのまま……。
ドッボーンッッ!
「えっ⁉」
だれかがプールに飛びこんだみたいな大きな音といっしょに、星月くんが消えてしまった!
「う、ウソでしょ!?」
あわてて凉夏ちゃんが鳥居のかげから飛びだして、神社の奥へ走る。
もちろん、わたしもいっしょに飛びだした!
さっきまで星月くんがいた、大きな水たまりの前につく。すぐにあたりを見まわした。
い、いない⁉
かくれられる場所もない。ほ、ホントに、消えたんだ。
「り、リコは今の見た? 消え……ちゃったよね? 星月くん……」
「うん、ドボンッ! って、大きな音がして、そのまま……」
言ってて、アレ? と思う。ドボンッて大きな音がして、そのまま消えた……?
「あのさ、凉夏ちゃん。もしかしてなんだけど……水たまりの中に飛びこんだ、とか?」
「はぁ? そんなのありえないでしょ?」
わたしの言葉にあきれる凉夏ちゃん。うん、ムリもない。わたしもありえないと思う。
だって、目の前の水たまりはどう見たって浅い。
そんな水たまりに人が飛びこむなんて、考えられない。だから、ありえない。
「だけど、わたしは知ってるんだ。ありえないようなものが、実際にあることを」
おじいちゃんの大冒険に、アンティーク、それに、赤い星の指輪だって! だから……。
「ゴメン、凉夏ちゃん。わたしの荷物、持ってて!」
「ちょっと待ってリコ、何する気? まさか!?」
「そのまさかなんだ」
わたしは荷物と上着を凉夏ちゃんに手わたすと、大きな水たまりに向きあった。
あーあ、冷静に見たらわたし今、変な子なんだろうな。でも、それでいい。
だって、わたしの胸は今、サイコーに!
「ワクワク、しちゃってるんだから!」
わたしは思いきって水たまりの上にジャンプする。
「リコ!」と、凉夏ちゃんの声がした。その、次の瞬間(しゅんかん)。
バッシャーンッッ! と、星月くんの時よりずっと派手な音がした。
それもそのはず、わたしは飛びこんだんじゃなくて、ただ落っこちたんだ。
水たまりの、その向こう側へ!
つづく 第5回は1月29日公開予定です!