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第6回 大冒険の始め方!『ナゾ世界いってきます! ふしぎな道具と海の底へ!』ためし読み


第13回角川つばさ文庫小説賞受賞作『ナゾ世界いってきます! ふしぎな道具と海の底へ!』が発売前に69ページもためし読みができちゃう!
小学5年生のリコ、学校トップの成績の内斗、リコの親友の涼夏は3人だけで深海へ! おもしろさ保証(ほしょう)つきの大冒険ストーリー!

リコのおじいちゃんは冒険に出たまま帰ってこない! リコに残されたのは、ガラクタみたいな、だけど、ふしぎな力を持つ道具たち。そんなある日、内斗が神社の水たまりに飛びこんで、消えちゃった? なんと、その水たまりは、海につながっていた!? リコ、内斗、涼夏は、伝説の海底都市を発見し、さらには命がけのバトルや大脱出! わくわくドキドキの物語!



『ナゾ世界いってきます! ふしぎな道具と海の底へ!』
(深草ゆにえ・作 うちゃコ・絵)
2026年2月12日発売
予定




※これまでのお話はこちらから

2章 大冒険の始め方!

1 水たまりから、海へ行こう!


 アトランティス。

 それは一万年以上も前に、海の底に沈んだと言われている都市。

 高度な文明、すぐれた科学力を持つ国として、世界中にその名をとどろかせた。

 だけど、その繁栄(はんえい)は、ある日突然、たった一日で終わった。

 ある日、何かが起きた。大きな津波とか、地震(じしん)とか、いろいろ言われるけど、わかってない。

 原因不明の何かが、伝説の都市をたった一晩(ひとばん)で沈(しず)めた。光の届かない、海の底に……。

 というのが、アトランティスの伝説。わからないことが多いのが、余計にワクワクしない?

 そんなふしぎすぎる場所を見つけて、しかも冒険したと言うのが、わたしのおじいちゃん。

 おじいちゃんが言うには、海の底にあるその場所には、白と金にかがやくキレイな城(しろ)があって、現代では考えられないふしぎな技術がいっぱいあったとか。でも……。

「それくらいしか、教えてもらえなかったんだよねぇ」

「なんで? もっとくわしく教えてもらえなかったの?」

 昨日の大発見の次の日、わたしと凉夏(りょうか)ちゃんは教室の席で向かい合って話をしていた。

「うん。いつもならもっと、いろいろ楽しい話をしてくれたのに、ふしぎだよね?」

 いったい何があったんだろう? おじいちゃんは、アトランティスで何を見たんだろう?

「なるほどなるほど、それは間違いなく、解くべきナゾですね!」

 いきなり、後ろから声がした。って、この声!

「ほ、星月(ほしづき)くん⁉」

「なんであんたがこの教室にいるのよ!」

「一言だけ伝えにきました。二人とも、このあと校舎裏(うら)に来てください。以上です!」

 そう言うとすぐ、星月くんは足早に教室を出ていった。

「本当に一言だけ⁉ 涼夏ちゃん、校舎裏で何が起きるの?」

「わかるわけないでしょ。まあ、校舎裏って言ったら、告白が定番だけど」

「でも、『二人とも』だよ? あ、もしかしてお金持ちだとそういうこともあるの?」

「あんたお金持ちをなんだと思ってるのよ」

*    *      *


「アールグレイで、いいですか?」

 校舎裏。大きな木の下にイスと机(つくえ)が並べられている静かで落ちつけるスペース。

 そこでわたしたちを迎(むか)えたのは、想定外の質問だった。

 わたしと凉夏ちゃんは、「はぁ?」「え?」と息ぴったりにハモってしまう。

「紅茶の種類についてです。興奮(こうふん)したままでは、頭に入るものも入らないですから」

 星月くんはそう言うと、どこから持ってきたのかオシャレなティーカップを机に並べて、そこにティーポットで香りの良い紅茶を注いでくれた。

「えーと、星月くん? 紅茶はありがたいんだけど、先に話の内容を教えてもらえないかな」

 涼夏ちゃんが聞くと、星月くんはまるでなんでもないみたいに言った。

「昨日の水たまり、ゲートに関わる重要な話です。あ、お茶菓子(ちゃがし)もありますよ」

 そう言って、小皿にのったスコーンを取りだした。

 わたしたちは二人で席について紅茶を口にした。うっ、あまくない……。

 と思ってたら、星月くんが角砂糖(かくざとう)をさしだしてくれた。それを入れると、

「おいしい! ありがと、星月くん!」

「こんなお茶菓子で人の機嫌(きげん)とろうったってムダなんだから! あ、おいしい」

「機嫌とられてる」

「とられてない! それより、そろそろ重要な話ってのを教えなさいよ!」

 星月くんは、手にしていたティーカップを優雅(ゆうが)に置いて、言った。



「結論(けつろん)から言えば、小泉さんが探しているおじいさま。その、居場所の手がかりです」

「え、えええっ!?」

 あぶない! 驚きのあまり紅茶をこぼすとこだった、って、それどころじゃないよ!

「ちょっと、それホントなの?」

 星月くんは、バッグから手帳(てちょう)を取りだした。

「昨日、ぼくは小泉さんから預かった手帳の解読(かいどく)を進めました。すると、あるものの存在が明らかになった。なんだと思います?」

「もったいつけてないで、早く教えなさいよ!」

 相変わらずプンスカしている凉夏ちゃん。でも、わたしにはなんとなく、答えがわかった。

「星の指輪、だよね?」

「正解です! おじいさまの赤い指輪、あれと同じような指輪がアトランティスにある。そう書かれていたんです。そして、手帳にあった『私は、もう一度ここに行く必要がある』という文。この二つを合わせると、一つの仮説(かせつ)が浮かびあがります!」

 ピタッと、そこで星月くんは話を止めた。そして、わたしのことをジッと見つめる。

 ふわりとした風がわたしたちの間を通りぬけて、葉っぱを宙(ちゅう)に舞(ま)いあげた。

「おじいさまは今、アトランティス。つまり、あのゲートの先の、海の底にいる」

「おじいちゃんが、アトランティスにいる」

「あくまで仮説です。確証(かくしょう)はありません」

 わたしは、ガタンとイスから立ちあがる。

「決めた!」

「ちょっとリコ、まさか」

「わたし、アトランティスに行く!」

「やっぱり〜っ!」

「ええ、ええ。小泉さんなら、そう言うと思いました」

 あきれ半分驚き半分の凉夏ちゃん。少しうれしそうな星月くん。わたしは両手を広げた。

「だって、アトランティスだよ! どこにあるかわからないっていう、伝説の! その場所がわかって、しかも、おじいちゃんがいる。そんなの、行くしかないよ! 絶対(ぜったい)に!」

「いや、探しに行くって、アトランティスは海の底でしょ? まさか飛びこむつもり?」

「それは、ほ、ほら! 潜水艦(せんすいかん)を買うとか!」

「そんな、雨の日にちょっとかさを買うみたいなノリで買えるものじゃないでしょ!」

「じゃあ、凉夏ちゃんはどうしたらいいと思うのさ!」

「いやいや、わたしはそもそも、そんな危ないことには反対で……」

「アンティーク」

 ボソッと、星月くんがつぶやいた。わたしと凉夏ちゃんは、「え?」っと、星月くんを見る。

「昨日ぼくをビックリ仰天(ぎょうてん)させた、あのアンティークたち。彼らが関係しているのでは?」

「関係って、どういうこと?」

「具体的にはわかりません。しかし、おじいさまが見つけたものです。何か手がかりが……」

 そこで、ビビッ! とわたしはひらめいた!

 そっか。おじいちゃんだって潜水艦を買えたワケがないんだ! そんなおじいちゃんが、海の底のアトランティスまで行くんなら、それこそ、ふしぎな力を使うしかない!

「そうだよ、おじいちゃんはアンティークで海底まで行ったんだ! 他に考えらんない!」

 絶対これだ! と拳をにぎって興奮(こうふん)するわたしをヨソに、凉夏ちゃんが冷ややかに言った。

「でも、アンティークってたしかにふしぎな力はあるけど、どれも微妙(びみょう)なものばかりよね」

「い、いや、そんなことは、ある、けどぉ……」

 うう……悔(くや)しいけれど、そうなんです。『絶対に収まらないタンス』とか、『絶対にパンクしちゃうタイヤ』とか、どれもマトモに使えるとは思えない。

 落ちこむわたしを助けるように、星月くんが口を開いた。

「アンティークを使うというのは良いアイデアだと思います。彼らの持つ『絶対ルール』を利用して、なんとか潜(もぐ)ることができれば……いや、正確には深海で耐(た)えることができればいいでしょう。沈むこと自体は、あの場所の、下へと引っぱる力で可能です」

「下へと引っぱる力って?」

「気づいてなかったのですか? あの場所には、物を下へ引きよせる力があったんです。ぼくの推理(すいり)だと、小泉さんがおぼれかけたのもそれが原因です」

「へー、そういうことだったんだ。あれ? だとしたら、星月くんはどうして平気だったの?」

「こんなこともあろうかと、泳いでる途中で下に引きずりこまれた際の訓練(くんれん)をしていましたから」

「いや、星月くん無敵(むてき)すぎない?」

「無敵なのはぼくではなく、努力です。努力は決して裏切(うらぎ)りません」

「めちゃくちゃ良いこと言ってるけど、努力の方向、間違ってない?」

「しかし、今回は役立ちましたよ?」

 とにかく、これで話は簡単になった! あとは深海で耐(た)えられる潜水艦を作ればいいんだ!

「でも、そんなのどうすれば……」

 そう言うと、また、三人でうーんと思い悩む時間が始まる。

 ちょっぴり冷めた紅茶を飲んでいると、涼夏ちゃんが口を開いた。

「そういえばさ、星月くんって神社にお参りしてる時にあの水たまりを見つけたんだよね?」

「ええ、そうです」

「へー、じゃあやっぱり、神さまとか幽霊(ゆうれい)とか、そういうふしぎなものを信じてるの?」

「ふしぎなもの、ですか」

「はいはい! わたしは信じてまーす! そういう涼夏ちゃんはどうなの?」

「あー、わたしは微妙(びみょう)かなー。個人的には、存在してて欲しいけど、科学的には絶対ありえないって言われたら反論できないからねー」

「おや、『絶対ありえない』とは聞き捨てなりません」

「へ?」

「正しくは、『いるかどうか分からない』です。絶対ありえないと決めつける方がよっぽど科学的ではない。そして、仮にいなかったとしても神さまに祈ることに損(そん)はない。ですから……」

「ですから?」

「祈れば祈るほどおトク……というわけです」

 お、お祈りがおトクって。わたしと凉夏ちゃんは顔を見合わせる。

 変なことをマジメな顔で言った星月くんを見て、二人とも笑いがおさえられなくなった。

「あははっ、なによそれ、おもしろい!」

「ホントホント! 星月くん、やっぱりおもしろい人だよ!」

 わたしたちがそう言うと、星月くんはなんだかさびしそうな顔で笑った。

「……お二人は、笑ってくれるんですね」

「あ、ごめん! 変って言われるの嫌(いや)だったよね!」

「いえ、それはむしろうれしいです。『だれかと違う人であれ』が信条ですから。ただ」

「ただ?」

「転校当初、イギリスから来たということでたくさんの人が集まったんです。ですが、ぼくがぼくらしくしているだけで『変だ』と言って離(はな)れる人もいまして……それは正直、傷つきました」

「あー星月くん、かなり変なウワサがたくさんあるもんね。かわいそうだけど無理もないかも」

「ちょっと涼夏ちゃん! そんな言い方……」

「ちなみにウワサはだいたい真実です」

「星月くん⁉」

「まあ、そういうこともありまして、素直に笑ってくださるお二人がとてもありがたいんです」

 ちょっと意外だった。星月くんも、そう思うことがあったんだ。

「だって星月くん、なんだか悪い人じゃなさそうだし、ツッコミがいもあっておもしろいし。わたしは嫌じゃないよ。リコは?」

「わたしも最初はビックリしちゃったけど、いっしょにいて楽しいし、おもしろいよ!」

「リコってもともと、アンティークみたいな変わったものが大好きだもんね〜」

「うんうん、大好き! それってむしろ、才能だよ!」

 わたしがそう言うと、星月くんはニッコリと笑った。

「ふふ、ありがとうございます」

 そして、そのまま指をピンと立てて、続けた。

「しかし、それを言うなら、小泉さんだってかなりおもしろい人ですよ」

「え、わたし⁉」

「ええ、そうです。だって普通、あの状況で水たまりに飛びこんだりしないでしょう?」

「そ、それはたしかにそうだけど。なんだか、むずがゆい気分」

「迷わずぼくを追ってきた好奇心こそ、小泉さんの冒険の才能なのかもしれません」

「ほんと⁉ わたしって冒険家の才能ある⁉」

「いやいや、リコが冒険なんてしても、絶対にすぐダメになっちゃうに決まってる! いつも無鉄砲(むてっぽう)でムチャするし、集中力もないし……」

 うぐっ! 凉夏ちゃんの言葉が胸に刺さった! でも、言い返せない、致命傷(ちめいしょう)だ!

 すると、星月くんがまた、指をピンと立てて、「いえ、そうとも限りません」と言った。

「無鉄砲とはそれだけ好奇心が強いということ。集中力がないというのは、同じ時間で他人よりいろいろな視点を持ってたくさんのことに気づくことができるということ。つまり、長所も短所も、ただの言い方の違いに過ぎないということです。むしろ才能、ですよね?」

 星月くんの言葉が、胸にスーッとしみこんだ。その言葉だけで、今までいろんな人からドジとか落ち着きがないとか、そう言われて気にしてきたことが全部、なんだか誇(ほこ)らしく思えてきた。

「あ、ありがと、星月く……」

「でもそれって、ほめ言葉も全部、短所に言いかえられちゃうってことじゃない?」

「そうとも言えます」

「言わないでよ!」

 もー! 凉夏ちゃんのせいで、せっかくの良い雰囲気(ふんいき)が台無しだ! 

 ……一見して短所としか思えないような性格でも、言い方を変えれば長所になりうる、か。

 そっか。わたしでも、できるんだ!  って、あれ? なんか、何かが引っかかるような。

 一見して短所としか思えない。ポンコツにしか見えない。ふしぎな、道具。

 でも、そう、見方を変えれば!

 ガタン! と、大きな音を立ててわたしは立ちあがった。

「ちょ、ちょっとリコ、いきなりどうしたの?」

「わかったよ、二人とも!」

「わかったって、何の話です?」

「アンティークで、海底にまで行く方法だよ!」

「そりゃたしかにふしぎな力はあるけど、あのポンコツちゃんたちじゃ、絶対ムリでしょ?」

 凉夏ちゃんからの予想通りの疑問を耳にしたわたしは、得意げに指をチッチッチと振った。

「それが、できるんだよ。星月くんが言ったとおり、モノの見方を変えることでね!」

 ドン! と言い切ったわたし。

 さて、これからわたしは、アンティークたちを使って、潜水艦を作ります!

 ヒントは、今までに登場したアンティークだけを使うってこと!

 このあと答えが出るから、その前に、みんなも考えてみてね!


つづきは、『ナゾ世界いってきます!』を読んでね!

『ナゾ世界いってきます! ふしぎな道具と海の底へ!』
2月12日発売!




作: 深草 ゆにえ 絵: うちゃコ

定価
858円(本体780円+税)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046323927

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