
席替えで好きな人の隣をゲットできるのは『?』%!?
算数が超ニガテな詩音は、校長先生が出す《算数ミッション》にクリアしないと、夏休みがぜんぶナシの大ピンチ!! 初ミッションは「席替えで好きな人の隣をゲットせよ」ーーってどこが算数と関係あるの!?
明日学校で言いたくなる、おもしろ算数でミッションコンプリート!
超人気のおもしろショート動画が本になった新感覚シリーズだよ☆
(毎週火曜日更新予定☆全5回)
◆◇◆◇◆登場人物◆◇◆◇◆

川原詩音(かわはら・うたね)
算数が超ニガテな小学5年生。算数のことを考えるとうたた寝しちゃうのがなやみ。

樫木圭介(かしのき・けいすけ)
詩音のクラスにやってきた転校生。陸上部のエースで超カッコいい。

先崎 颯(さきざき・そう)
詩音と家がとなり同士の幼なじみ。いつも詩音にちょっかいを出してくるけど、ほんとうは…?

竹長朝陽(たけなが・あさひ)
頼れるクラス委員。でも、目つきがするどいような…?

アキト先生
校長先生の代理を名乗る先生。口ぐせは「とんとん」。
【 これまでのお話 】
席替えで気になる転校生・樫木くんの隣の席をゲットするべく、
あの手この手で作戦を考えた詩音。
でも結果は全部失敗…。今年の夏休みは全部ナシかも…涙
としょんぼりしてアキト先生に報告しに行くと、「席替えのくじ引きで、好きな人のとなりの席を引くって、どのくらいむずかしいかわかる?」って聞かれて…?
「じゃ、うたちゃん。くじ引きで、好きぴのとなりの席を引くって、どのくらいむずかしいか、わかる?」
「好きぴって、好きな人のこと? それなら、とってもむずかしいと思う。だって、いいくじ、なかなか引けなかったもん」
するとアキト先生は、うなずいてから、早口で話し出す。
「うん。うたちゃんのクラスの生徒は30人、だから席の数は30。くじの数も30な。その中で、好きぴがくじで引く席のパターンって、何通りあると思う?」
「ええ……30通り」
「その通り。では、その次にうたちゃんが引く席は、何通り?」
「30通り! ……あれ? ちがうかも?」
「そう、ちがうんだ。もう、好きぴが30席の中の1つを取ってるから、残りは29しかない。それじゃ、うたちゃんと好きぴの2人がどんな席を選ぶのか、組み合わせが何パターンあるかっていうと、なんと870! でかい!」
「ふわぁああ……」
(あわわわわっ、そんな、いっぱい数字が出てくるの無理~眠くなっちゃうよお~~)
と、思ったとたん、
「うたちゃんと好きぴが、となりどうしになるのは」
バアン、と、アキト先生が、教室の席の図を取り出した。
「こことこことこことこことこことこことこことこことの、」
バババババッ、と指さして、
「50通り! すごくない? 全体が870通りで、そのなかで50通りが当たりとしたら、当たりを引く確率って50÷870=約0.06で、つまり約6%ってわかる?」
「えええっと、どれくらい……?」
(確率? 先生、いま、確率って言ったよね?)
「100回のうち6回は当たるくらい。100÷6=約17だから、17回くじ引きすると、1回くらいは当たるってこと」
「それって、意外と当たりそう!」

びっくりした。
「そうだね。この小学校の1年は3学期で、6年間あるから、ぜんぶで3×6=18学期。1学期に1回、くじを引くとして、18回引ける。好きぴはいつも同じクラスにいるとして、17回に1回の確率で、好きぴととなりどうしになれるんだから、それは、つまり!
時間を戻さなくても、6年間のくじ引きの中で、じゅうぶん起こり得るってこと」
「ほんとに!?」
(そういうのを、確率っていうんだあ……!)
と、なんだかすごくうれしくなったけど、
「あ、でもやっぱちがう。だってもう5年生の1学期だから、くじは、あと2学期、3学期、6年生の3学期ぶん、の5回しかない。それにホントはクラス替えだってあるし、やっぱ無理だよ!」
ああぁ、つまんない~~~
「はい、正解――――――――――!」
「へ」
「計算しただけで、6年生の終わりまでぜんぶ、わかったような気になったでしょ? それが算数のすごいとこ! それが感じられたら、今回のミッション、クリア~~~」
「え~~~~~~」
6年生の終わりまで、つまんないって先が見えたから、ミッションクリア?
それ、どうなの? ちっともうれしくないよ!
「で、この確率って、好きぴだけじゃなくて、となりになりたくない子のこと考えたって、おんなじ、ってわかる?」
(えっ……、そうだ。
颯のとなりになるのは、樫木くんのとなりになるのと同じくらい、あり得ない。
それなのに、わたし、それが当たっちゃったんだ!!)
「先生。いいくじは引けないのに、悪いくじは引いちゃうのって、どうしてなの!?」
「うーん、たまたま?」
「たまたまって! いい席も悪い席も、どうでもいい席も、みんな、たまたま!? ふだんの行いとか、関係ないの?
たまたまとか、そんなことで学校生活、決まっちゃうの!? 一生、これからも、そんなふうに決まっていくの!?
確率って……おそろしすぎるよ――――!」
「それも正解――――――――――! はい、これ、どうぞ」
アキト先生が、きれいな木の箱を差し出した。
パカッ、と開けると、中には、ふしぎなピンバッジが1つ。
おたまじゃくしみたいな、黒くて変なバッジ。でも、まるっこくて、かわいいかも。
「ピンバッジの形は、次のミッションのヒントになるんだ。
そして最後のミッションまでコンプリートすると、秘密の願いごとが、かなうかも!」
「え~~~~ほんとかなあ……」
「だからがんばって、ミッション・こんぷり――ぃとんとん!」
(へんだよ、その、とんとんって……)
この先生、すごく、変わってる。校長代理って、ホントなのかなあ……。
「たまたま、かぁ」
教室の席についても、わたしは、まだ考え続けてた。
登校してきたアーちゃんに、アキト先生が言ってたことを、がんばって説明してみる。
「いい席のくじを引いても、悪い席のくじを引いても、それは、たまたまなんだって」
颯のとなりの席になったのは、ふだんの行いが悪いせいでも、集中が足りなかったせいでもなくて――たまたま、なんだ。
だから、自分をせめたって仕方がない。
そう思うと、なんだか少し、元気が出たよ。
「そっか。オレが、おまえのとなりの席、くじ引きで引いたのも、6パーの確率か」
と、となりの席で聞いてた颯が、口を出してきた。
「そうだよ。最高の席も、最悪の席も、どうでもいい席も、引くのは同じ確率なんだから」
ん? そういえば……。
「たまたま、颯のとなりの席になっちゃうくらいなんだから、もしかして、たまたま、光の速さで走れることだって、あるんじゃない?」
「いやそれは、ないんじゃない?」
と、アーちゃんが言ったのと同時に、
「確率ゼロ――に、限りなく近い」
と、言ったのは、
「か、樫木くん!?」
な、なんで横に立ってるの!?
「確率の話、してたね。ミッション科目、算数なの?」
「うん。か、樫木くんて……もしかして算数、得意なの……?」
「いや……そうでもないけど」
樫木くんは、そっとかがみこむと、
「『圭介』でいいよ」
と、わたしの耳にささやいてから、教室の窓際の席へ歩き去った。

(い、いきなり、なに!? ほ、ホントに!?)
な、な、なんで? 確率の話のおかげ?
苦手な算数のおかげで、いきなり、ステキな子と………………秘密の友だちに……?
いやいやいやいやいやいやいやいやいや、まさかそんな。
「け、圭……介……?」
こっそり、小さな声で言ってみたけど、なんだか魔法の呪文みたいで――。
(だ、だれも聞いてなかったよね!?)
――ドキドキしすぎて、あわてて辺りを見回しちゃった。
リンゴーン、と、授業開始のチャイムが鳴る。
いつもだったら、すっごくいやな気持ちになる時間だけど……。
もしかしたら今学期は、ちょっとは、いいことが起こるかも?
そんなふうに思えた、5年生1学期の、授業の始まりの日だったよ。
ミッションナンバー2・健康診断を見事にクリアしよう!
ぐう~。
おなかが鳴った。
「おま、腹の音、でかいよ」
すぐさま、となりの颯が言う。
「うるさいな」
「うるさいのは、おまえの腹だ、って言ってんの」
「……仕方ないでしょ。健康診断なんだから」
そう、今日は、健康診断の日。
クラスごとに、決められた時間に体育館に行って、いろいろな測定をする。
身長とか、体重とか、視力とか。
5年生は、5時間目――つまり、昼休みのすぐあとってこと。
だからわたしは、お昼のお弁当を食べずに、5時間目を待ってる。
なぜなら――、
――健康診断を見事にクリアするには、どうしたらいいの? 教えて! うたちゃーん!
というミッションを、アキト先生からもらったから、なのだった。
<第5回につづく>
アキト先生の初ミッションをクリアした詩音。
圭介との距離も近づいてドキドキ…!? だけど、
はやくも次のミッション―健康診断を見事にクリアしよう!―が出題されて…?
「見事ってなに!?」「健康診断と算数って何が関係あるの!?」
またまたナゾなミッションスタート!
次回は3月26日更新予定、楽しみにしていてね!
【書籍情報】
わたし詩音(うたね)! 算数が大のニガテな小学5年生。
…だけど、校長先生が出す《算数ミッション》をクリアしないと、
夏休みがぜーーんぶナシの大ピンチ!
初ミッションは「好きな人の隣の席をゲットせよ!」
――って、これのどこが算数と関係あるの…!?涙
そんな中、超イケメンで陸上部のスターな転校生・圭介くん
と同じクラスになってドキドキ! クリアすれば
圭介くんの隣の席になれちゃうってこと…!?
- 【定価】
- 792円(本体720円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 新書判
- 【ISBN】
- 9784046322951
<期間限定!>
その他の連載はこちらからチェック!▼