KADOKAWA Group
ものがたり

【新シリーズ!】『マス×コン!』先行ためし読み連載 第3回 どうしたら好きな人の隣の席をゲットできる…?


席替えで好きな人の隣をゲットできるのは『?』%!?

算数が超ニガテな詩音は、校長先生が出す《算数ミッション》にクリアしないと、夏休みがぜんぶナシの大ピンチ!! 初ミッションは「席替えで好きな人の隣をゲットせよ」ーーってどこが算数と関係あるの!?
明日学校で言いたくなる、おもしろ算数でミッションコンプリート!
超人気のおもしろショート動画が本になった新感覚シリーズだよ☆

(毎週火曜日更新予定☆全5回)

◆◇◆◇◆登場人物◆◇◆◇◆
 



川原詩音(かわはら・うたね)
算数が超ニガテな小学5年生。算数のことを考えるとうたた寝しちゃうのがなやみ。
 



樫木圭介(かしのき・けいすけ)
詩音のクラスにやってきた転校生。陸上部のエースで超カッコいい。
 



先崎 颯(さきざき・そう)
詩音と家がとなり同士の幼なじみ。いつも詩音にちょっかいを出してくるけど、ほんとうは…?
 



竹長朝陽(たけなが・あさひ)
頼れるクラス委員。でも、目つきがするどいような…?
 



アキト先生
校長先生の代理を名乗る先生。口ぐせは「とんとん」。

【 これまでのお話 】
席替えで気になる転校生・樫木くんの隣の席になれなかった詩音。
ミッションは失敗!? と、ということは、夏休みがぜんぶナシになっちゃう!?涙
なんとか隣をゲットできる方法はないかな…?

 

 やばい。このまま帰ったら今学期の席替え終了……ミッション失敗になっちゃうかも!?
 そこで、わたしはすぐに、竹長さんの席に走ってく。
「おねがい! さっきのくじ、引かせて!」
 カバンに荷物をまとめながら、竹長さんは、まゆをひそめる。
「だめだよ。くじは、1回しか引けないものなんだから」
「わかってる。試してみたいだけなの。うそでもいいから、何度も何度も、引いてみたいの!」
 しぶしぶ、竹長さんは手を止めて、さっきの箱を取り出した。
 袋の中には、さっき使ったたくさんの紙切れが、ぜんぶ戻してある。
「最高! ありがと、竹長さん!」
「へんな子ねー……」
 わたしは、せっせせっせと、くじを引いては、もどして、また引く。
 机に新しい席順表を置いて、結果を見てみる。
「4列、2番め」「6列、1番め」「1列、4番め」「5列、5番め」
 樫木くんのとなりの席は、当たらない。
 だけど、颯のとなりも、当たらない。
正直、どうでもいい席ばっかり。それなのに、なんで大事なときには、悪いくじを引いちゃうの? 集中が足りなかった? ううん、ふだんの行いが悪かったのかな。トイレの紙、いつも三角に折ってないから?」
「なに、ブツブツ言ってるの」
「えっ?」
 と、箱から、なにも考えずに、手を出した。
 そのわたしの手には、くじの紙。
「これは――」
 開いて、席順表で見ると、その席は……。
 2列、2番め。
 って、ことは、うぁああああ!
 樫木くんの、となりの席だ!
「やったーーこれだぁあああああ!」
 そうだ、そうだ、そういうことだっ。
 何度もくじを引けば、いつかは、いいくじだって引けるんだ。
 当たりつきアイスがハズレばかりの、わたしにだって、いいくじが引けるんだ!
 竹長さんは、あきれてこっちを見てる。
「ブツブツ言ってたと思ったら、こんどは大声出して……どうしたの?」
「こ、これって、ミッションクリアなのでは!?」
「ミッション? ああ、校長室の。どんなミッションなの?」
「うん、ええと、好きなひ――――」
 ま、待て待て、待った、自分!
(『好きな人のとなりの席』って、そんなこと、このくじを引いたあとで言っちゃったら、樫木くんのこと、好きなのかと思われちゃう……!)
「あっ、好きな人のとなりの席のくじを引く、とかなのかな?」
「ぅああああああ、ち、ちがちがちがっ」
(竹長さん、するどい!)
「照れるなあ。川原さん、そんなに私のこと、好きだったの?」
「……えっ?」
 言われて、席順表を見てみると――。
 ――この席、樫木くんと、竹長さんの間の席だった。
「あ、いや、その、うん――」
「明日からお弁当、いっしょに食べよっか?」
「え――いいの? 竹長さん、しっかりしてるのに、わたしなんか……」
「しっかりなんかしてないよ。背が高いから、大人っぽいとか思われてるだけ」
「あはは!」
 つい、わらってしまった。
 自分のこと、そんなふうにわかってるの、やっぱり大人っぽいと思う。
「私のことアーちゃんて呼んで。竹長朝陽だから、アーちゃん」
「アーちゃん……?」
「川原さんは詩音だから、うたちゃんね。もしかして私たち、親友になれるかもね?」
 なんか、なしくずしに、親友ができたらしい。
「でもね、うたちゃん。くじ引きは1回。私のとなりの席には、やっぱりなれないんだよ」
「…………………………………………だよねぇ……」
 せっかく、やっとのことで、いいくじを引けたのに。
 今さら引けたって、意味がない。
 わかっていたけど、がっかりしちゃうよ。
「あーあ、朝にもどって、もういちど、くじびきしたい!」
「そんな映画、あったよね」
「映画?」
「前に、父さんとみたSF映画。宇宙船みたいなのが、光の速さで飛んで、時間をさかのぼるの。で、なんども同じ日を、やりなおすの」
 それを聞いて、わたしの中で、また、なにかがひらめいた!
「それだ! それだよ、アーちゃん! さすがクラス委員、なんでもよく知ってる!」

 ドテドテドテドテドテドテドテドテドテドテドテドテドテドテドテドテドテドテドテドテ!

「んーーーーーーーどぅぁぁぁああああああ!」
 学校からの帰り道。
 川ぞいの土手の上で、全力疾走。そして、力つきて、ひざに手をついて、
「はああ、はあ、ぜい、ぜいぜい」
 息を切らすと、
「んーーーーーーだぁぁああああああ!」
 また、アーちゃんのとなりに、もどる。
「んはああああ、ぜえ、ぜえ、ぜえ」
「なにやってんの。ばかなのか?」
 いつのまにか、颯まで来てた。
「ぜい、ぜい、速く進めば、時間がもどるかもしれないでしょ。ぜい、はあ、朝までもどって、もういちどくじを引いて、そしたら、もしかしたら、思い通りの席が当たるかも!
 わたしにだって、ミッションクリア、できるかも!」
「いやいや、そんなこと、ありえないから」
「わかってるよ! でも……ありえないことも、ありえるかもしれなくない?
「ありえないことは、ありえないと思うけど」
「で、少しは時間、もどった?」
「ううん、ぜんぜん」
「ふつうに走るくらいじゃ、無理なんだ。もっと速く走らなきゃ!」
 と、土手の道から外れて、河原へ下る斜面を、かけ降りる。
「だあぁあああああああああああ!」
 うわわわ、急な下りで、すごい勢いがつく!
 こ、これはもしかして、一生で経験したことがないくらい、速い!?
(と、止まらない!)
 飛び出したところは、川のほとりの散歩道。
「うわっ!」
 だれかにぶつかって、わたしはくるっとスピンした。
「ご、ごめんなさい! ――あ、」
 相手を見上げて、ハッとする。
「また……きみか」
 と、見下ろしているその男子は――、
「か、カシノキ……ケイスケ……くん」
――ランニングしていた、樫木くんだった。
(あぁああっ、この子、陸上部のエースだって颯が言ってた――てことは!!)
「樫木くん! どうしたら速く走れるか、知ってるよね。教えてくれない!?」
「え?」
「光の速さに近づきたいんだけど、どうすればいいの!?」
 樫木くんは、ふっ、と、考えこむような目をして、
「そうだな――秒速30万km」
 と、ボソッ、と言った。
「……秒…………キロ?」
「光の速さ。車の3000倍くらいかな。……走るの? けがしないでね」
と、言い残して、樫木くんは、タッタッタッタ、と走り去った。
(車の3000倍って……)
「……ぜったい……無理じゃん!!」
 絶望するわたしを、アーちゃんと颯が、ぽかんと見てた。
「なにを今さら」
「だな」

 次の日の朝――。
「無理でした」
 しょぼーん、と、わたしは、校長室に報告に行った。
(これで確定だね……特別授業で、夏休みがつぶれるの……)
 わたしは心底、落ち込んでた。
「車の3000倍の速さで、走れるわけないし」
 アキト先生は、校長室のふわふわのいすにすわって、それをくるくる回してたけど、
「車? どういうこと?」
 と、回るのをやめて、こちらに身をのりだしてきた。
 わたしが川原でしたことの話をすると、こんどは大わらい。
「わらえますよね……でも、ほかに、どうすればいいか思いつかなくて」
 と、わたしは、もごもご、言い訳する。
 ふっ、と、アキト先生は、真顔になった。
「じゃ、うたちゃん。くじ引きで、好きぴのとなりの席を引くって、どのくらいむずかしいか、わかる?」

<第4回につづく>


ミッションをクリアするべくあの手この手で試行錯誤した詩音。
でも結果はどれもうまくいかず…。このままだと本当に夏休みがなくなっちゃう…!!
しょんぼりしながらアキト先生に報告したら、「好きな人の隣の席をくじで引くのってどれくらいむずかしいか」を聞かれて…?

次回は3月19日更新予定、楽しみにしていてね!

 



【書籍情報】

わたし詩音(うたね)! 算数が大のニガテな小学5年生。

…だけど、校長先生が出す《算数ミッション》をクリアしないと、
夏休みがぜーーんぶナシの大ピンチ!
初ミッションは「好きな人の隣の席をゲットせよ!」
――って、これのどこが算数と関係あるの…!?涙
そんな中、超イケメンで陸上部のスターな転校生・圭介くん
と同じクラスになってドキドキ! クリアすれば
圭介くんの隣の席になれちゃうってこと…!?


企画:あきとんとん 文:こぐれ 京 絵:ももこっこ

定価
792円(本体720円+税)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046322951

紙の本を買う

<期間限定!>




その他の連載はこちらからチェック!▼



この記事をシェアする

ページトップへ戻る