翌日、月曜日。
泉美は早百合と梨央と一緒に学校に向かっていた。
2人も無事7日間を過ごしたのだ。
泉美はそんな2人に最後にナノカちゃんに襲われそうになったことを話した。
「それって、ドアノブにナノカちゃんが映ってたからなの?」
早百合がふと、泉美に言った。
「うん、多分そうだと思う……」
しかし、ドアノブが丸かったため、『うつった世界』がゆがみ、ナノカちゃんは思うように動けなかったのだ。
だから、泉美は命を奪われずに済んだ。
「だけど、もう大丈夫だよね!」
7日間が過ぎ、ナノカちゃんの恐怖は去った。
早百合は笑いながらそう言うと、スマホを取り出した。
「今日からまた写真撮れるね!」
その言葉を聞き、泉美と梨央も笑顔になる。
「そうだね! よし、撮ろっか」
「うん、撮ろう!」
泉美たちは早百合のスマホでさっそく写真を撮ることにした。
「よし、行くよ! 泉美も梨央も笑って笑って~♪」
早百合がスマホを構え、3人一緒に並んで笑いながらカメラのレンズを見る。
「はい、チーズ♪」
早百合はスマホのシャッターボタンを押そうとした。
だがその瞬間––、
突然、スマホの画面から、血まみれの手が出てきた。
「えっ?」
手は早百合の顔を掴むと、そのままスマホの画面の中へと引きずり込む。
「早百合‼」
それは一瞬の出来事だった。
早百合はあっという間にスマホの中に消えてしまったのだ。
「早百合! 早百合‼」
「ねえ、泉美、どういうことなの⁇」
「分からない。分からないけど、あの手は……」
爪が長く、血で染まった真っ赤な手。
それはナノカちゃんの手だ。
「もしかして……」
泉美は何かを思い、ハッとする。
「早百合だけ、まだ7日間経ってなかったんじゃ⁇」
早百合の写真にナノカちゃんが写り込んだのは、先週の月曜の夕方だった。
つまり、早百合は今日の夕方で7日が経つのだ。
「そんな……」
泉美はそれに気付き大きなショックを受けた。
ナノカちゃんは目的を果たしたのだ。
「ケケケケケケケ」
遠くから、ナノカちゃんの甲高い笑い声がかすかに聞こえたような気がした……。
●
数日後。
バス停で少年がバスを待っていた。
フシギである。
その手には真っ赤な手帳を持っている。
どうやらこの町にあったマークを回収し、次の町へ向かおうとしているようだ。
フシギは手帳をじっと見つめていた。
するとふと、後ろに並んでいた老婆(ろうば)が、そんなフシギの顔をじっと覗(の)き込んだ。
「あらまあ」
老婆はフシギの顔をジロジロと見つめる。
「なに?」
フシギは面倒(めんどう)そうにたずねた。
すると老婆は「この前会ったわよね?」と言った。
「覚えてないかい? ほらっ、旅行先の町で。たしかそのときは、あなた『黒いフード』を被っていたわよねえ」
「黒いフード!」
「あれ? 違(ちが)うのかい? 顔はちゃんと見ていなかったけど、服とか背が同じだったから、てっきりこの前会った子かと思ったんだけど……」
フシギはその言葉を聞き、老婆の顔をじっと見つめた。
「その町はどこなんだ?」
やがて、バスが到着(とうちゃく)し、並んでいた人々が乗り込む。
しかしフシギだけはそのバスには乗ろうとしなかった。
フシギは手帳を見ていた。
手帳の1ページ目にはボロボロの白黒写真が挟(はさ)まれている。
その写真には、フシギとフシギによく似た女の子が笑顔で写っていた。
「必ずつかまえるよ、ヒミツ……」
フシギはそうつぶやくと、真っ赤な手帳を閉じ、老婆から教えてもらった町へ向かってひとり歩き始めるのだった––。
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