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もう一度ふりかえり読書して、アニメへの準備をカンペキにしておこう!
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6つ目の町 ナノカちゃん
時として写真に、人間としては細すぎる身体の女が
映り込(こ)むという。アメリカではスレンダーマンと呼ばれ、
男性であることが多いようだ。
直接目にしたものは死ぬと言われている。
* * *
「はい、笑って笑って~。撮(と)るよ~♪」
日曜日の午後、公園にパシャッというシャッター音が響く。
市村泉美が買ったばかりのスマホで、親友の新山早百合(にいやまさゆり)と小松梨央(こまつりお)と一緒(いっしょ)に写真を撮っていたのだ。
泉美(いずみ)はずっとスマホが欲しかった。
しかし小学生の間は買ってもらえず、中学生になり9月の誕生日を迎(むか)えて、ようやくスマホを買ってもらうことができた。
「これで3人ともスマホになったね!」
早百合が自分のスマホを見せながら泉美に言う。
「良かったね、泉美!」
梨央も笑いながらスマホを見せる。
「うん、嬉(うれ)しい! もっと写真撮ろう!」
泉美はやっと2人と同じになれたことを嬉しく思い、再び写真を撮り始めるのだった。
その日の夜。
泉美は自分の部屋のベッドに寝(ね)転がり、昼間公園で撮った写真を眺めていた。
ピースをしている写真や顔をくっつけて笑っている写真、変顔をしている写真など、どの写真も3人で仲良く写っている。
(また明日、2人と一緒にいっぱい写真撮ろう♪)
泉美が笑みを浮(う)かべながら、画面を閉じようとしたとき––、
「あれっ?」
ふと、スマホの画面に映る1枚の写真に目がとまった。
それは、3人で笑いながらブランコの前で撮ったときの写真である。
撮った時刻は、13時10分。
真ん中に泉美が立っていて、右側に早百合、左側に梨央が立っている。
そんな3人の後ろに、見知らぬ女の人が写り込(こ)んでいたのだ。
女の人はブランコの横に立っていた。
しかし、何かがおかしい。
泉美は目を凝(こ)らしてその写真を見つめた。
すると、その女の人が、異常なほど身体が長細いことに気付いた。
身長は2メートルを超(こ)えている。
それなのに枝のように細い。
髪(かみ)は長く、黒い服と黒いスカートを着ていて、顔はボヤけてよく見えなかったが、目と鼻と口がないように思えた。
「何なの、この人……⁇」
泉美は写真を撮ったときのことを思い出した。
(たしか、これを撮る前はブランコに乗っていて……)
泉美はブランコに乗りながら、その姿を自分で写真に撮っていた。
(その後、早百合と梨央と一緒にブランコの前に立って写真を撮ったんだよね……)
辺りには誰(だれ)もいなかったはずだ。
そもそも、すぐ後ろに2メートルを超える長細い女の人が立っていたら気付くはずである。
(そう言えば、この後もう1枚写真を撮ったはず……)
泉美は早百合たちと2枚連続してブランコの前で写真を撮ったことを思い出した。
スマホの画面を指で操作し、その写真を開いてみる。
すると、2枚目の写真には女の人の姿は写っていなかった。
「どういうことなの……⁇」
1枚目と2枚目は連続して撮っているので、10秒ぐらいしか間は空いていない。
それにもかかわらず、女の人は2枚目の写真にはまったく写っていなかったのだ。
「そんな……」
泉美は思わずゾッとした。
「どうしたんだ?」
ふと、部屋のドアのほうから声がした。
見ると、兄の健二(けんじ)が立っている。
ドアのすき間から泉美が怖(こわ)がっている姿が見えて、声をかけたのだ。
「お兄ちゃん、これ見て!」
泉美はあわてて健二に駆(かけ)け寄ると、写真を見せた。
健二は1歳(さい)年上で頼(たよ)りになる。
泉美は困ったことがあるといつも健二に相談していた。
「なんだこれ?」
健二は写真を見るなり首をひねる。
「この女の人、変だよね?」
「変というか、そもそも、これ人間なのか?」
「えっ?」
たしかに言われてみれば人間とは思えない。
背は高すぎるし、枝のように細い。
顔はよく分からないが、目と鼻と口がないように見える。
そんな人間いるはずがなかった。
「だったら、ここに写っているのは何なの⁇」
泉美はおびえながらたずねる。
「さあ、俺(おれ)にもよく分からないけど……」
「分からないって、そんな!」
泉美がますますおびえていると、健二がふと何かを思い出し、明るい表情になった。
「そうだ、あいつなら分かるかも!」
「あいつ……?」
「こういうことに詳(くわ)しいヤツがいるんだよ」
健二はそう言うと、すぐにその人物に連絡(れんらく)を取ることにした。
●
翌日、月曜日。
その日は学校は創立記念日で休みだった。
泉美は健二に連れられ、朝から駅前のファストフード店へとやってきた。
写真の女のことが分かるかもしれない人物と会うことになったのだ。
「最近公園で知り合ったヤツなんだけど、都市伝説とか怖い話にすごく詳しいんだよ」
健二もそういう話が好きで、その少年と気が合ったのだという。
「都市伝説……」
もしかして、あの写真に写っている女はそういうものなのだろうか?
泉美は今まで都市伝説や怖い話は本やネットの中だけのただの噂(うわさ)話だと思っていた。
「あっ、来たぞ、あいつだ」
店の入り口を見ていた健二が声をあげた。
泉美も同じほうを見る。
するとそこには、赤い服を着て赤いフードを被った男の子が立っていた。
カッコいい男の子だ。
男の子は泉美たちのほうを見ると、そのまままっすぐそばまでやってきた。
「こいつが千野フシギ。最近この町に来たんだってよ。フシギ、こっちは妹の泉美だ」
泉美は立ち上がり、挨拶(あいさつ)をしようとした。
しかし、フシギはそんな泉美をよそに健二のほうを見る。
「それで、例の写真は?」
「えっ」
「目も鼻も口もない女が写ってたって聞いたけど」
「あ、ああ」
健二は泉美に写真を見せるようにと視線を送る。
「あ、あの、これです!」
泉美はあわててスマホを取り出すと、写真を表示してフシギに見せた。
その写真をフシギは何も言わず、ただじっと見つめる。
「あの……」
泉美は緊張(きんちょう)しながら声をかけるが、フシギは彼女(かのじょ)を見ようともしなかった。
(何なの、この人……⁇)
フシギはまるで泉美に関心がないようだ。
関心があるのは写真にだけ。
泉美がそう思っていると、ふと、フシギが口を開いた。
「そうか……これだったのか」
フシギは独り言をつぶやくようにそう言った。
なんだか少しガッカリしている。
「どうしたんですか?」
泉美がたずねると、フシギは「いや、別に」と答えた。
「ちょっと、思っていたのと違(ちが)ったんだ」
「思っていたのと?」
「いや、こっちの話だ」
フシギは写真から目を離(はな)し、小さなため息をもらした。
「ということは、フシギにも写真の女が何なのかは分からないってことなのか?」
そんなフシギを見て、健二が残念そうに言った。
すると、フシギは小さく首を横にふる。
「いや、それは分かるよ」
「じゃあ、この女は何なんだよ?」
「その写真に写っているのは、『ナノカちゃん』だ––」
「ナノカちゃん……?」
泉美は初めて聞いた名前に首をかしげる。
フシギは写真の女のことを説明し始めた。
「彼女は子供だけが写っている写真に写り込む都市伝説の怪物(かいぶつ)だ。ナノカちゃんが写真に写り込むと、その写真に写っている人たちは全員、必ず不幸な目に遭(あ)ってしまうらしい。その不幸というのは––」
フシギは泉美をじっと見つめた。
「写真に写った人間が、7日以内にナノカちゃんに命を奪(うば)われてしまうというものだ」
「ええ⁇」
泉美は信じられず、思わず大きな声をあげた。
「どういうことだよ?」
健二も意味が分からずあわててフシギにたずねる。
しかし、フシギは冷静な態度のまま、泉美たちを見た。
「せいぜい気をつけることだ。とくに『うつるもの』には」
「うつるもの⁇」
泉美が聞き返すが、フシギは何も答えない。
フシギは出口のほうを向くと、そのまま店を出ていってしまった。
「あっ、ちょっと!」
泉美は呼び止めようとしたが、フシギはふり返ることなく、そのまま去っていってしまう。
「お兄ちゃん、あの人何なの⁇」
「あ、ああ。ただの冗談(じょうだん)、ってことじゃなさそうだよな?」
健二もフシギの言った言葉に困惑(こんわく)しているようだった。
健二と別れた後、泉美は写真に一緒に写っている早百合と梨央に会うことにした。
フシギの言ったことを信じたわけではなかったが、2人にもそのことを伝えておいたほうがいいと思ったのだ。
フシギの言葉には妙(みょう)な説得力があった。
ナノカちゃん––。
泉美はあの写真に写る女のことがさらに怖くなっていた。
連絡を取り、早百合の家に集合した泉美は、2人にナノカちゃんのことを話した。
だが、それを聞いた2人は大笑いする。
「7日以内に命を奪われる? そんなことあるわけないじゃん!」
「そうそう。有り得ないよ~」
早百合も梨央もナノカちゃんのことをまるで信じない。
「そりゃあ、私だって信じたくないよ。だけどこの写真変でしょ??」
泉美はそう言って早百合と梨央にナノカちゃんの写った写真を見せるが、2人はまったく怖くないようだった。
「多分、何かの拍子(ひょうし)で後ろにいた人がこんな風に写っただけだよ。そう言えば、公園でちょっと背の高いお姉さんが犬を散歩させてたよね。その人なんじゃない?」
「そうだよ。だいたい泉美はスマホを買ったばかりでしょ。まだカメラの操作に慣れてなかったんだよ」
梨央の意見に早百合も大きくうなずく。
「それは、そうだけど……」
泉美はそんな2人に何も言えなくなってしまった。
たしかに、泉美が撮った写真の中には、シャッターのボタンを押(お)すときに手がブレてしまい、何が写っているのかよく分からないものが何枚かあった。
(2人の言う通り、たまたま後ろにいた人がブレて写っちゃっただけなのかな?)
「その千野フシギって人は適当にそんなこと言っただけだよ」
「そうそう、気にしないほうがいいって」
泉美はフシギの言ったことより、2人が言っていることのほうが本当のように思えた。
「うん、そうかも……、そうだよね!」
泉美はナノカちゃんなどいないと思うようになった。
しかし、その日の夜……。
泉美はフシギの言っていたことが本当だったのだと確信する––。
夜。泉美は宿題を終えて、そろそろ寝(ね)ようとベッドに寝転がっていた。
すると、スマホに電話がかかってきた。
画面を見ると『早百合』と表示されている。
(どうしたのかな?)
泉美はこんな時間に珍しいと思いながら、電話に出た。
「もしもし」
「泉美、遅(おそ)くにごめんね」
「ううん、どうしたの?」
「あのね……」
早百合の声はなぜか震(ふる)えていた。
泉美がそれに気付くと、早百合は電話の向こうでゴクリとノドを鳴らし、ゆっくりとした口調でこう言った。
「あのね……。私が撮ったスマホの写真にも、ナノカちゃんが写ってたの……」
「えっ⁇」
泉美は驚きのあまり思わずスマホを落としそうになってしまった。
「ちゃんと説明して!」
「うん……」
早百合は震える声でその状況(じょうきょう)を話し始めた。
今日の夕方、早百合は泉美と梨央が帰った後、母親に頼(たの)まれてスーパーに買い物に出かけたのだという。
そのとき、坂の上から見える夕陽が綺麗(きれい)だったので、スマホのカメラを自分に向けながら、夕陽をバックに写真を撮ったらしい。
「その写真をさっき見てみたの。そうしたらね、後ろにナノカちゃんが写ってて……」
「その写真すぐに送って!」
泉美が叫(さけ)ぶように言うと、早百合はすぐにメールで写真を送ってきた。
泉美はあわててそれを見てみる。
すると、早百合の言う通り、黒い服と黒いスカートを着た枝のように長細い女が、彼女の後ろに立っていた。
写真はまったくブレていない。
それにもかかわらず、後ろに立っている女の顔には、目と鼻と口がなかった。
「ナノカちゃんだ……」
やはりナノカちゃんは存在する。
そして、また写真に写り込んでいた。
泉美はフシギが言った言葉を思い出した。
『ナノカちゃんが写真に写り込むと、その写真に写っている人たちは全員、必ず不幸な目に遭ってしまうらしい』
「その不幸というのは、写真に写った人間が、7日以内にナノカちゃんに命を奪われてしまうというもの……」
泉美はこのままだと本当に、3人ともナノカちゃんに殺されてしまうと思った。