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こわい話にはウラがある?
大注目の【第10回角川つばさ文庫小説賞《特別賞》受賞作】をどこよりも早くヨメルバで大公開!
アンケートもあるので、ぜひ、連載を読んで、みんなの感想を聞かせてね!
『学校の怪異談 真堂レイはだませない』は2022年12月14日発売予定です! お楽しみに♪
表紙・もくじページ
【2-1 呪われてしまったの! 怪文書が、こんなにも!】
目を開けると、真っ白な空間がひろがっていた。
白い天井、白い壁(かべ)、白いベッドに、白いカーテン。
天国、だろうか。まるで保健室のような天国……あぁ、ちがう、保健室だ。
「起きたか?」
カーテンの向こうから声がした。身体を起こして、カーテンを開けると、白衣を着た男の人が立っていた。
「……富士築(ふじつき)先生」
「オレを知ってるのか。まだ、生徒の前であいさつもしていないのに」
富士築先生は、急病で休んでいる保健室の先生の代わりに、最近やってきた先生だ。
男性で保健室の先生というめずらしさと、ファッションモデルのような抜群(ばつぐん)のスタイルをしていることから、学校中の話題になっていた。
このわたしですら、知っているほどに。
「えっと、わたし……」
「きみは倒れたんだ。そうじの時間に」
記憶が、よみがえる。
そうだ、そうだった。ベランダをほうきで掃(は)いていたら、急にめまいがして……。
「クラッときてしまったか? 今日は日射しが強かったから」
「いえ、わたしが弱いだけです」
「どうして日射しの肩をもつ」
どうしてだろう。日射しにビビっているのかな。前世はモグラだったのかも。
「あ、夜野目(やのめ)さん! もう大丈夫!?」
声のした方を見れば、小山内(おさない)さんと水橋(みずはし)さんが、保健室の扉から顔を出していた。
「友だちか?」
富士築先生の問いに、少し迷ってから、わたしは「はい」と答えた。
真堂先輩(しんどうせんぱい)のおかげで、わたしにもようやく友だちができたんだ。だれとでも仲良くなることが特技の人とも仲良くならないことが特技だった、このわたしに。
「いやぁ、急に倒れたから、びっくりしたよ!」
「ごめんなさい小山内さん。これから倒れるときは『いまから倒れます』って言います」
「いや、そういうことじゃなくて……」
「もう起きて平気なん?」
水橋さんの言葉にうなずく。
「よかった、ちなみにそれ、うちが貼(は)ったんよ」
言われて、おでこに、熱冷ましの冷却シートが貼られていたことに気づく。
「ありがとうございます。もうすっかり楽になりました」
「いや、もうしばらく横になってろ」
ベッドから降りようとしたわたしを、富士築先生が手で制す。
「いや、でも先生、わたしはもう大丈夫で……」
「ムリはよくないな。声も出てないし、うつむいているじゃないか」
富士築先生は心配そうに言うけれど、声が小さいのも、うつむいているのも、平常(へいじょう)運転だ。運転した結果、どこにたどり着くのかは知らない。
「あの、先生、わたしは……」
「ほら横になれ。そうだ、水分を取るといい。コーヒーは飲めるか? 自家製コーヒーをもってきてるんだ……ん? においが……これ……めんつゆか?」
カバンから、めんつゆ入りのボトルを取り出している富士築先生に、わたしの言葉は届かない。
いや、どうやったら、めんつゆとコーヒーをまちがえるんだろう……。
もう、いいか。このまま流されよう。自分の気持ちを通すより、そっちのほうが楽だから。
「……倒れます」
わたしは目を閉じて、ゆっくりベッドに倒れようとして――
「柊(しゅう)」
名前を呼ぶ声に、目を開ける。すると、いつのまにやってきたのか、整(ととの)いすぎた顔面が、わたしをのぞきこんでいた。
白い天井よりも白い肌、吸いこまれそうな大きい目、整いすぎてつくりものめいている顔。
「真堂、先輩……?」
「そう、ボクだ」
そう言って、先輩は目を細めた。
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<第11回は2022年12月6日更新予定です!>
※実際の書籍と内容が一部変更になることがあります。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体・伝承等とは一切関係ありません。
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