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第1回【期間限定・1巻無料ためし読み】 『時間割男子(1) わたしのテストは命がけ!』

4 科目男子あらわる!

「ちょっと! ねぇ! はなしてよ、算数くん!」

「ケイとよべ。そして目的地に到着するまではなすつもりはない。以上」

 以上じゃないよ! なにも解決してないってば!

 道行くおばさまがたに「あらあら」「青春ねぇ」って笑われるし~!

 はずかしさと恐怖で必死に抵抗するけど、力ではかなわない。

 ずるずると引きずられるように道を歩きながら、けんめいに頭を回転させる。

「じゃ、じゃあ、ケイ……くん? いや、ケイさん?」

「さんをつけるな! つぎ、そうよんだらタダじゃおかないからな!」

「えぇっ!?」

「オレたちのことは全員下の名前でよべ。ややこしくてかなわん」

 オレたち? たちってだれ?

 もう~~~っ、なんなのこの人!?

 話、ぜんぜんつうじない!

 優ちゃんが前に言ってたアレだよ、「イシのソースがでない」ってやつ!

(それを言うなら「意思の疎通ができない」だね!)


「わかった、ケイ! わたしをどこへ連れてくつもり? そのくらい教えてよ!」

「おまえのせいで時間がないんだぞ! こっちは説明してる時間もおしいんだ!」

 だから、わけわかんないってば~!

 ぎゃあぎゃあ話していたら、わりとうちの近くまで来ていることに気づく。

 よし。いざとなったら猛ダッシュして、家にかけこもう。

 で、おばあちゃんに警察よんでもらって……。

 頭のなかでシミュレーションしていると、ケイが、ようやく足を止めた。

「……ん?」

 見なれた門柱に、見なれた表札がふたつ。

『大福』『花丸』

 大福はおばあちゃんの苗字で、花丸は……わたし。

「ここ……うちなんですけど……」

「知ってる」

 ケイの言葉に、ぞわっと背筋が凍る。

「な、なんで、うちを知ってるの……!?」

「知ってるにきまってるだろ。近くで、ずっと見てたんだから」

「近くで、ずっとって……」

 はっ! まさか。ススス、ストーカー!?

 わたしみたいな平凡地味子に? そんなことある?

 いや……でも世の中、もの好きもいるって言うからね(自分で言っといてちょっとかなしい)。

 よし、きめた。

「通報します!」

「は?」

「ぶっそうな世の中、自分の身は自分で守ろうと思いますので! ではっ!」

「おい、なにする気だ、やめろ!」

「はなしてっ!」


「──ケイ」

 そのとき、うしろからだれかの声が聞こえた。

 もみあっていたわたしとケイは、同時にふりかえる。

「こわがっていますよ。手をはなしてください」

 場の空気をガラリと変えるような、すんだ声だった。

 サラサラの黒髪に、知的な瞳の男の子。

 顔を見て、ハッとする。

「あ、転校生の……!」

 そこには、話題の「四人のイケメン転校生」、のこり三人の姿があった。

 クラスの女子が一日中さんざん話してたから、もうフルネームまで頭に入ってる。

 重そうな本を持ってる黒髪の子が、一組の、国語カンジくん。

 白衣がトレードマークの小柄な子は、三組の、理科ヒカルくん。

 スタイルがよくて大人っぽい子が、四組の、社会レキくん。

 みんなそろって変わった名字で、全員、超がつくイケメン。

 そんな男子が四人も同じ日に転校してくるんだから、世の中、不思議なこともあるもんだ。


「……あの、助けてくれてありがとう」

 ケイの手からようやく解放されたわたしは、すぐに黒髪のカンジくんにお礼を言った。

 彼はおだやかな笑みをうかべ、首を横にふる。

「いえ。『とりつく島もない』ケイの態度では、だれだって戸惑います」

「とりつくしま?」

 とり、つくね……焼き鳥の話?

 ぽかんとしていると、カンジくんはやさしく目を細め、手に持った本を見せてくれた。

 重そうだと思ってたら、それ、辞書だったんだ。

「慣用句ですよ。話そうとしても相手がつめたく、会話にならないことを言います。ケイのことだから、なにも説明しないで無理やり連れてきたんでしょう。彼の無礼、俺がかわりにおわびします」

 きちんとお辞儀をするカンジくん。

 丁寧な言葉づかいに、おだやかな笑顔。

 不安でいっぱいだった心が、すこしだけ落ちつきをとりもどす。

(素敵だなぁ、カンジくん。やさしいし礼儀正しくて……)

 ドキドキしながら見ていると、ケイがふんと鼻をならした。

「コイツの行動は予測不能だぞ。つかまえとかないと、なにをしでかすかわからん」


「あ~、たしかに! いきなり教科書全捨てはスゴイよな~!」

 声をあげたのは、おしゃれ男子のレキくん。

 人なつっこい笑顔で、ケラケラ笑う。

「まるちゃんは、破天荒さでいうと伊達政宗タイプだね。政宗くん、よく茶碗ブチ割ってたな~」

「ま、まさむねくん?」

 お友だち?

 しかも、いま、わたしのこと「まるちゃん」って……?

 不思議。まるで、昔からの知り合いみたいにあだ名でよぶんだもん。

 首をかしげながら、ふと横を見──、

「ギャーーーーーッ!!」

 びっくりしておもわずのけぞる。

 わたしの肩に、トカゲみたいな生き物が!?

「ト、トカゲが! やだ、とって! こわいっ!」

「カメレオンのカッちゃんだよ」

 ボソッと言ったのは、小柄男子のヒカルくんだった。

「は虫類トカゲ目だからトカゲの仲間。でも、大丈夫、かんだりしない」

 ヒカルくんは、じーっとカメレオン……カッちゃんを見つめながら言う。

 おとなしそうな雰囲気だけど、その瞳はキラキラかがやいてる。

 ……動物、好きなのかな?

「まるまるは、きっとカッちゃんといいお友だちになれるよ」

「えっ、そ、そう……?」

 ヒカルくんはうれしそうにうなずきながら、カッちゃんをだきかかえる。

「ん? ……まるまるって、わたしのこと?」

 ヒカルくんも、わたしのことあだ名でよぶんだ。

 話したの、今日がはじめてなのに……。

 自由にしゃべる男子たちにとまどっていると、ふたたびケイが「おい」と声をあげる。

「現時点で五分十二秒もムダにしてる。さっさとはじめるぞ」

「だ、だから、はじめるってなにを!?」

 わたしが聞くと、ケイはカッと目をむく。

「勉強にきまってるだろ!」


 えぇっ、ナゼ!?

 なんで、ここで勉強の話が出てくるの!?

 まっっっったく意味がわかりませんけど!!

 声にならないさけびをあげていると、レキくんがススッと近づいてくる。

「まーまー、落ちつけって。ケイ、まずは自己紹介だろ?」

「おまえらは余裕があるからそんな態度なんだ! オレには、あと七日しかないんだぞ!」

 七日? ……いったいなんの話?

「でもさ。まるちゃんだって、おれたちの正体も知らないままじゃ、そりゃ混乱するよね?」

 言いながら、レキくんはさりげなく、わたしの肩に手をまわしてくる。

 うわ、めっちゃなれた手つきだ。

 これはチャラいぞ……!

「あ、あはは……そうなんだよね、混乱しちゃって……」

 あいそ笑いをうかべつつ、そっと手をひきはがす。

 ついでに、右へ、すすっと距離をとろうとしたら、

「わっ!」

 目の前にカメレオン。

 いそいでさらに右へ。

 ササッ

 いちばん信用できそうな、カンジくんのうしろにかくれさせてもらう。

「せ、説明してください! いったいなにがおきてるのか!」

 さけぶわたしに、ケイはいらだった表情をむける。

「言わなくたって、もうわかってるだろ。こっちには時間がないんだぞ!」

「わからない! ワタシ、ナニモワカラナイヨ!」

 ブンブン首を横にふる。

「まったく、カンのわるいやつだな。この程度の推測ができないようじゃ先が思いやられ……」

 じろーん

 男子三人プラスわたしの視線が、ケイにそそがれる。

「…………」

 ケイはしぶい顔をしたあと、大きくため息をついた。

「わかった。一度しか言わないから、よく聞け」

 わたしはごくりとつばを飲みこみ、耳をかたむける。

 これだけもったいぶっていばってるんだから、きっとスゴイことを言うはずだ。

 ドキドキドキ……

 ケイは表情を変えず、じっとわたしを見て。

 言った。


「オレたちは────おまえが捨てた、教科書だ」



『時間割男子① わたしのテストは命がけ!』

第2回へつづく

書籍情報


作: 一ノ瀬 三葉 絵: 榎のと

定価
858円(本体780円+税)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046319333

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最新20巻 7月8日発売予定!


作: 一ノ瀬 三葉 絵: 榎のと

定価
880円(本体800円+税)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046324085

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各教科のエキスパートな「科目男子」たちが、授業やテストのなやみをズバッと解決してくれる大人気連載!



夏休みはつばさ文庫を読もう!




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