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第1回【期間限定・1巻無料ためし読み】 『時間割男子(1) わたしのテストは命がけ!』

3 算数なんかだいっきらい!

 意味不明なイケメン転校生は、ようやくおとなしくなった。

 こんどはノートにむかって、一心不乱になにか書きこんでる。

 はぁ……なんかつかれちゃったなぁ。

 ヘンな転校生に、ニガテな算数の授業……。

 わたしは両手で頭をかかえて、目をとじた。

(気分が落ちこむ……こんなときは……やっぱ、アレしかないよね!)

 妄想スイッチ──ON!


 頭のなかに広がるのは、見わたすかぎりの花畑。

 風はそよそよ、やさしく髪をゆらして、甘いかおりが鼻をくすぐる。

 ここは、わたしの脳内妄想世界。

 今日は仲よしの動物たちと、たのしいお茶会なの! ウフフ。

 ネコとウサギ、リス、キツネ、ネズミ。そしてわたし。

 みんなであつまって、おやつを食べながらおしゃべりするのがいつものパターン。

「さ~て、きょうのおやつは……?」

 ワクワクと胸をおどらせてテーブルを見ると。

 そこには、バケツでつくったみたいな、ジャンボプリンが!


 なめらかでぷるんぷるん、うすたまご色のボディー。

 まるで王冠のようにてっぺんで輝く、琥珀色のカラメルソース。

 あぁ、これはぜったいおいしい。まちがいない!

 見ているだけで、幸せな気持ちにみたされていく。

 ウフフ。ウフフフフ。

「──待って、ちゃんと六人分に取り分けなきゃ」

 スプーンをのばそうとしたら、ネコさんに止められた。

「一グラム単位で正確にわける。きっかり平等になるまでプリンはおあずけだ」

「えぇっ!? そんなの無理だよ~」

「算数を習ってれば簡単だ、このくらい」

 はやくとりわけなきゃ、プリンが食べられない!

 ……でも、六等分ってどうすればできるの?

 スプーンで少しずつすくって、重さをはかる?

 ケーキみたいに切りわける?

 でも、ここは森の花畑。はかりもなければ包丁もない。

 それにわたし、計算が超ニガテだし……一グラム単位でわけるなんて、無理に決まってるよ!

 イライラしてきて、スプーンをギギギとつよくにぎる。

(あぁ、もう! プリン……はやく食べたいのに……!)

 それもこれも、算数のせいだ。

 算数なんか……。


「算数なんか、だいっきらいなんだから~~~~~っ!!」


「──おい、おまえっ!!」

 とつぜん、目の前にぬっと、鬼の顔があらわれた。

「わぁぁっ!?」

 プリンが鬼になった!?

 …………って、ちがう。鬼じゃなくて算数くんだ。

 そうだ。すっかりボーッとしてたけど、授業中でした。

「算数がきらい……? よくもそんなことを!」

 立ち上がってつめよってくる算数くん。

 その手は、ぷるぷると怒りにふるえている。

「えっ!?」

(も、もしかして、さっきの心のさけび、声に出ちゃってた!?)

 うわ~っ、はずかしすぎる!

 っていうか、それ以上に、こわすぎる~~っ!!

 ふるえながらちぢこまっていると、川熊先生があわてたように止めに入る。

「おいおい、算数、落ちつけ。花丸も急に大声出してどうした?」

「すみません、ちょっと寝ぼけて……」

 苦笑いでごまかすと、先生は「集中しろよ」と言いながら、算数くんの肩に手をのせる。

「どうした。なにかあったのか?」

 算数くんはなにか言いたげに歯を食いしばっていたけど、しばらくして、

「……いえ。すみませんでした」

 ドカッと自分の席に座った。

 となりからは、あいかわらずピリピリした空気がとんでくる。

 ひ、ひえええ……こわいよぉ……。

 おびえながら首をちぢめていると。

「……花丸、おまえ大丈夫か?」

 先生が声をひそめて耳打ちしてきた。

「大変なことがあったあとだし、もし体調が悪いなら、ムリしなくていいぞ」

 気づかわしげな目。

 胸にモヤッとわきあがる痛みを押しこめて、わたしは、パッと笑みをつくった。

「いえ……大丈夫です! こないだのテストの点が悪すぎて、ガッカリしてただけです」

「ぎゃはは! 7点じゃ、そりゃガッカリするよな~!」

 うしろの席の男子が笑いながら言った。

「花丸が赤点なのはいつものことじゃん!」

「たしかに!」

「コラッ! クラスの仲間をバカにするのはゆるさんぞ!」

 先生は男子たちを注意すると、「じゃあ説明にもどるぞー」と教卓へもどっていった。


 それからも、転校生の算数くんは、不機嫌なオーラをわたしにむけまくってきた。

(もしかすると……『算数なんかだいっきらい』って言ったの、自分のことだと思ったのかな?)

 科目の算数のことで、算数くんのことではないんだけどなぁ。

 ゴカイ、といておいたほうがいいかな?

 でも、あの人コワイし。わたし、きらわれてるっぽいし……。

 なんて、なやんでいるあいだに、あっというまに一日がすぎていった。


(とにかく……今日はつかれたから、考えるのは明日にしよう!)

 そうきめて、放課後になるなり、ダッシュで下駄箱へ。

 帰ったら、プリン食べて元気だそう。

 昨日、四個入りのやつをおばあちゃんに買ってもらったばかりなんだ!

 イヤなことがあった日は、妄想とプリン。これっきゃないね!

 よ~~~し!

「おい待て!」

「えっ?」

 よびとめられてふりむく。

 ──そこには、鬼がいた。

 キッと目をつりあげ、髪の毛が逆立つくらいにメラメラと怒りをたぎらせる、算数くん。

 彼はわたしの腕をがっちりつかみ、カッと目を見ひらく。

「オレが言いたいことはわかるな? 責任はとってもらうぞ!!」

「えっ? えっ?」

 な、なんなの~~~~~~~~~~っ!?


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