その後 、ピーマンの肉づめも(少しだけこげちゃったけど)ちゃんと焼けて、みごと料理が完成した。ばんざーい!
「そっちはちゃんとできた? 時間足りなくなったりしてない?」
わたしたちに教えていたせいで尊ペアがおくれてたら悪いな、と思ったけど尊は、「トーゼン」と胸をはった。
「オレの説明中も行成がスープを作ってたし、そもそもまなみたちとは手際がちがうって」
まーたからかうようなこと言う……。
でもじっさい、料理する尊の動きはムダがないし、じょうきょうに合わせたレシピをパッと思いつくなんてすごいよね。
――と、見直していたのに。
「よし、できた!」
尊がふたを開けたフライパンの中を見て、目をうたがった。
「え? これ……ピーマンの肉づめ? ピーマンどこ?」
「使ってない。アレンジ料理『ピーマンの肉づめ ~ピーマンぬき』だ!」
悪びれなく言いきる尊。
そういえばこいつ、ピーマン苦手だったな⁉
「ピーマンぎらいでも食べられるピーマン料理を作りなよ!」
「ピーマンは敵だ。この先も和解はできない」
「えらそうに言うことか! 行成はこれでいいの?」
「他で栄養をとれば、ムリにきらいなものを食べる必要はないんじゃないか」
身もふたもないことを言う行成に、若葉ちゃんがつぶやく。
「わ、私の苦労、全否定……?」
この男子コンビ、マイペースすぎるでしょ‼
ピーマンぬきだと、もはやただの煮こみハンバーグだよ……いやでもおいしそうだな。
いい感じについた焼き目、てりてりに光るソース、食欲をそそる肉汁と香辛料のスパイシーな香り……じゅるり。
「やっぱたらしてるぞ、ヨダレ」
行成に言われて、あわてて口元をぬぐう。
「こ、これは、あまりにおいしそうだから、つい」
思わず赤くなって言いわけしてたら、「まなみ」と尊に呼ばれた。
「肉づめ、多めに焼いたから、食べるか?」
「へ?」
「ニンジンレシピくらい、べつに条件なしでも教えたし。そもそも、あれは若葉に教えたもので、まなみにはカンケーないだろ。だから、その……」
尊はぶっちょう面で、ぼそりと一言。
「これで、朝のはチャラな」
あっ、暴言のおわびにこの肉づめ(つめてないけど)、くれるってこと⁉
尊も反省したのかな……まったく、素直じゃないなあ。
「わかった! それじゃ、いただきまーす」
お皿にもるのが待ちきれず、わたしはフライパンから一つ、ひょいパクッとほおばった。
行成が「あ」とつぶやく。
「それは――」
瞬間、とんでもないシゲキが舌を焼き、カアーッと体が熱くなる!
かかかかか辛~~~~~~~~!
ショックでボン! と猫に変身するわたし。
「辛い辛い辛い! 水! 水ちょうだい!」
「俺専用に作った激辛のやつを食べたな」
「あっ、そういえばいくつか辛いの交ぜるって言ってたか、行成」
「だいじょうぶ? はい、水!」
先に言ってよ~~とうらみながら、わたしは若葉ちゃんが出してくれた皿の水をペロペロなめる。
あ~、舌が痛いよ~! ヒリヒリする~!
「あら? 斉賀(さいが)さんは?」
「やべ、かくれろ、まなみ」
先生が近づいてくる気配がして、あわてて机の下にもぐりこんだ。
「お、おなかの調子が悪いって言って、今さっきトイレに行きました」
若葉ちゃん、今日もフォローありがとう……。
その後、わたしはスキを見て調理実習室をぬけだして、変身が解けたころ、もどってきた。
幸い、変身の瞬間は他の生徒には見られなかったみたい。
みんなもう食事を終えていて、わたしのぶんは若葉ちゃんがちゃんと残してくれてたけど――
「……冷めてる……」
ずーん、と肩を落とすわたしに、「ドンマイ」と尊が苦笑いする。
「猫舌になったんだろ? ちょうどよかったんじゃね?」
「よくない‼」
ちゃんと出来たてのあったかい料理が食べたかったー。
うらむよ、尊、行成……!
書籍情報
好評発売中☆
つばさ文庫の連載はこちらからチェック!▼