
2024年 新シリーズ売上 第1位の「放課後チェンジ」。
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まなみ、尊(たける)、若葉(わかば)、行成(ゆきなり)は動物に変身できる! 笑いもトラブルもたえない学校生活の中、まなみたちにしか見えない『見えない卵』が学校で見つかり、周りの生徒が意識を失う事件がおきた! ナゾが解けないままむかえた学校一のイベント・体育祭。ところが、大事件がおきて中止の危機⁉ 体育祭はぜったい中止させない!!!
『放課後チェンジ 最高のコンビ? 嵐の体育祭!』
(藤並みなと・作 こよせ・絵)
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3 若葉ちゃんの意外な一面
調理実習室に行くと、あらかじめ希望を出していたペアごとに、席がふり分けられていた。
わたしは若葉ちゃんとペアで、真ん中の一番後ろの作業台……だったんだけど、となりがよりによって。
「ゲ……」
「朝方(あさがた)ぶり」
わたしたちを見てバツが悪そうに顔をしかめる尊と、無表情で手をあげる行成のペア⁉
こんなときに、間が悪いよ~。
「今日はお伝えしていたように、二人一組でピーマンの肉づめと、野菜スープを作ってください。アレンジも自由です。それでは、スタート!」
先生が合図を出した直後、ぐう、と小さくおなかが鳴る音がした。
一瞬わたし? と思ったけど、すぐとなりで若葉ちゃんがほおを染めて、おなかを押さえる。
「ごめん。なんか、最近大食いになった気がする……ハムスター体質?」
「あっ、わかる。わたしも、急に猫舌になったかもって思ってたよ。これも指輪の影響か」
声をひそめて話しながら、ポンと両手をたたいた。
「あと最近、やたら眠くてさ~。やっぱこれも猫体質?」
「まなみのグータラは元からだろ」
すかさず尊にからかうように言われて、わたしはムッとにらみつけてから、プイッと顔をそらした。もう、口もききたくない!
「俺が辛党なのも指輪の影響か」
淡々と、行成が言う。たしかに行成はかなりの辛党だけど……?
「それも元から……待て、タカって辛党なのか?」
「トウガラシがあるだろ」
「あっ、『タカの爪(つめ)』! って名前だけじゃん」
二人の会話にふふっと笑いそうになって、あわてて顔を引きしめた。
ダメダメ、まだわたしは怒ってるんだから!
「若葉ちゃん、今日は尊たちよりう~んとおいしい料理を作ろうね!」
「う、うん……ちなみに、まなみの得意料理は?」
「え。えーと……猫まんま?」
わたしの答えに、ガックリと首をたらす若葉ちゃん。
「でも、食べるの大好きだし、『好きこそものの上手なれ』っていうでしょ⁉ きっと料理の才能あると思うんだ! 今日もとっておきのレシピを考えてきたよ!」
「ほうほう、どんな?」
「ピーマンってちょっと苦みがあるでしょ? それをごまかすために、さとうやハチミツを多めに入れて、スイーツ風の肉づめにするの! フルーツを入れるのもオシャレかもと思って、パイナップルやみかんのカンヅメや、トッピング用に生クリームも買ってきたよ」
「オッケー、まなみ。落ちつこうか」
ウキウキとふくろから材料を出そうとするわたしに、若葉ちゃんがストップをかける。
「まなみの新しいことにチャレンジしようって気持ちは、ステキだと思う。でも、残念ながら私も料理は初心者なんだ。あまりにも大たんなレシピは、今回は封印(ふういん)しよう。とんでもないものを召喚(しょうかん)してしまう予感しかない」
「そうか~。わかった」
わたしがうなずくと、若葉ちゃんはホッとしたようにため息をもらした。
「じゃあ、野菜を切っていこうか」
「おー!」
若葉ちゃんはピーマンを洗ってまな板の上におくと、包丁を持って、ふうっと深呼吸。
「斬(ざん)!」

ナゾのかけ声とともに、ピーマンをななめに真っ二つにした。
「「「斬(ざん)⁉」」」
ビックリするわたしたちに、「刃物を持ったら、つい……」と、てれたように笑う若葉ちゃん。
それから、ななめに切れたピーマンを見てまゆをひそめる。
「けさ斬(ぎ)りになっちゃった。真っ向斬りしなきゃだよね。斬(ざん)! 斬! 斬!」
『けさ斬り』も『真っ向斬り』も野菜の切り方じゃないよね⁉
若葉ちゃん、包丁を持つと剣士になっちゃう……⁉
「ダメだ……どうしてもけさ斬りしかできない。未熟者(みじゅくもの)でめんぼくない!」
口調もビミョウに変わったような……。
そして、意外に手先は不器用みたい。若葉ちゃんにこんな一面が。
「ド、ドンマイ、若葉ちゃん! どんな形でも肉がつめられればだいじょうぶだよ!」
「ありがとう。じゃあ、敵のハラワタをとりのぞくね」
「ピーマンのたねとワタね⁉ たとえがコワイよ!」
ボケたおす若葉ちゃんに、いつもと立場逆転でツッコんでから、わたしは玉ねぎのみじん切りにとりかかる。
「玉ねぎって切るとなみだが出ちゃうよね」
「ふっふっふ、そこで今日は秘密兵器を用意してきたのです! ぽわぽわぽわぽわ~♪」
わたしは四次元ポケットからひみつ道具を出すような調子で、カバンからそれを取りだす。
「♪テッテレー。水中メガネ~!」
「アホだ!」
ぶっと尊がふき出す声が聞こえたけど、ムシだよ、ムシ!
わたしは自信満々で、エプロン姿に水中メガネをつける。
……心なしか、まわりがざわついて、ちょっと人目が気にならないこともないけど、大事なのは実用性。
完ぺきに目をガードして、いざ!
ザク……ザク……ザク…………。
「……見えにくい! しかもやっぱり目にしみるんだけど⁉ 目をガードしてるのになんでー⁉」
「鼻からもシゲキ成分が入るんだろ」
冷静な行成の分析に、実用性ゼロだった! とショックを受けながら水中メガネをはずして、なみだをぬぐう。
「ギャー! 手を洗うのわすれてた! 痛い痛いよけい痛い!」
「アホすぎる……!」
(著者から注:これを読んでるよい子のみんなは、くれぐれも玉ねぎを切ったばかりの手で目をさわらないようにしてください)
「うう、ひどい目にあった……! あっ、もしかして猫や犬に玉ねぎって毒だから、その影響でこんなにしみるのかな⁉」
「時間かけすぎなだけだろ。成分がしみてくる前に切りおえればいいんだよ」
尊はあきれたようにそう言ってから、トントントントンとすばやく玉ねぎをきざみはじめた。
「えっ、神崎くん、うま!」
「料理もできるんだ⁉ マジ神」
そのあざやかな手並みに、まわりからおどろきと称賛の声があがる。
尊は母子家庭だから、ふだんからお姉さんと家事をしていて、料理も慣れてるんだよね。
くっ、このままじゃ、尊ペアと大きな差が……いや、たしか行成は全然料理ダメなはず!
小六の時の調理実習は行成と同じグループだったけど、包丁使いがあぶなっかしくてケガしちゃいそうだった。
だから、「もう行成はお茶だけ用意して」ってたのんで、お茶係をやってもらったんだ。
家が茶道の家元だから、お茶はさすがにめちゃくちゃ美味しかったけど――。
そう思いながら行成の方を見ると、くるくると器用に包丁でジャガイモの皮をむいてたから、ビックリした。
「行成⁉ 料理はからっきしだったはずじゃ……」
「そうだったか?」
行成はすずしい顔でとぼけたけど、尊がニヤッと笑ってタネ明かしする。
「前の調理実習の後、くやしがって特訓したんだよ、行成」
なるほど、行成の負けずぎらいがこんなところでも……。
感心したけど、尊と目が合って、わたしはまたプイッと顔をそらした。
第4回へつづく
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