一途すぎる高身長イケメン幼馴染……どうやってかわしたらいいの？
『言いなり王子のかわし方』特別ためしよみ第2回スタート！
※これまでのお話はコチラから
１．インテリ―１ 梨紗（りさ）
そういえば、この前初めて行われた中間テストでは私の方が順位が良かった。私の成績は至って普通だ。それより悪いということは、瑠果は勉強が苦手なのだろう。
……よし、これしかない。そうして私は7年ぶりの無理難題を言う。
「私、頭の悪い人は嫌いなの。付き合うなら勉強できる人がいい！」
しかしこの時の私は気付いていなかった。
瑠果にとっては全てが無理難題ではなく、ただの『時間稼ぎ』にしかならないことに……。
それから数ヶ月経ち、2学期期末テストの結果が出た。
職員室前の掲示板にて成績上位者のみ順位が公開される。
それを見て、開いた口が塞がらなかった。
「嘘でしょ……瑠果（るか）が1位！？」
し、信じられない……。ついこの間までは私より成績悪かったはずなのに……。
……いや、今考えれば兆しはあった。
家に帰った後いつもはしつこいくらいにメッセージがあったけどぱったりとなくなったり、休日も前まではやたら遊びに誘ってきたくせに最近はずっと家に引きこもっていたり。
大人しくてラッキーとしか思っていなかった。
まさか私に隠れて猛勉強していたとは……。
「三波（みなみ）くーん！ ここがわからないんだけど……」
「私も私も！ 教えてー！」
おお……見た目に加わり、頭まで良くなったもんだから、瑠果のモテっぷりが以前の倍になっている。
このままモテ続けていけば、瑠果の視野も広がって、もしかしたら私以外に目を向けてくれるかも……。
「見てわかるだろう？ 僕は勉強で忙しいんだ。話しかけないでくれ」
……なんて希望は持つだけ無駄だな。
瑠果ってばすっかりインテリキャラになり切っている。
まあ昔から私以外の女子と仲睦まじく喋っているところ見たことないけど……。昔はただ緊張しているだけだと思っていたけど、どうやらそういうわけでもなさそうね。今度ちゃんと私以外の子とも仲良くするように言っておかないと。
学年1位になってからというもの、瑠果は授業中でも目立ちまくりだった。
英語の授業では、先生も目を見開くほどの発音の良さを発揮。陰で女子が「三波くんってもしかして帰国子女！？」「やば！ かっこいい！」なんて騒いでいたけど勿論違う。瑠果のことは保育園からしか知らないけど、今まで一度も海外に行ったことがないと言っていた。というか、いきなりこんなネイティブスピーカーになるなんて、一体どんな特訓をしたんだか……。
数学ではもっとすごかった。先生がお試しで出題した名門校の入試問題を難なく解いて見せたのだ。これには先生も度肝を抜かれていた。しかも、先生より解説がわかりやすい。瑠果は元がそんなに勉強ができないからか、勉強が苦手な人にもわかるような、丁寧な解説ができていた。クラスの赤点候補達に勉強を教えたら、きっと泣いて喜ぶことだろう。先生はちょっと複雑そうだったけど……。
ただ、やはり個人的に勉強を教えるつもりはないらしく、どんなにねだられてもNOときっぱり断る瑠果。
「そんなに頭良いならクラスメイトに勉強教えてあげれば？」
「いいや、次のテストでも学年1位を取るために、他の人に費やす時間はない」
「ふーん」
「勿論羽咲（はざき）さんにはいつでも教えるからね」
「いや、私はいい。特に勉強困ってないし」
「……そうか」
いつの間にか『羽咲さん』呼びに変わっているし。瑠果の中でインテリキャラがねじ曲がっている気がする……。
最近は勉強に余裕が出たのか、また登下校を一緒にするようになった。
ただ問題なのは、会話がクソつまらないということ。
「羽咲さん、最近の環境問題についてどう思う？ 僕は地球温暖化より氷河期到来の方が警戒するべきだと思うんだけど」
「知らん」
「じゃあオイラーの等式は？ 僕的にはこの数式がまるで羽咲さんのように美しくて好きなんだ……」
「興味ない」
うん、絶対中学1年生がする会話ではない。何を言っているか意味不明。環境問題はともかくオイラーですって？ なにそれ、オラオラ系男子の派生？
話していても全く楽しくないどころか気持ち悪い。
何もここまで勉学極めなくても……。
瑠果には『限度』というものが備わっていないらしい。
でも事実だけ見れば、誰もが認めるほど勉強できるし、教師すら太刀打ちできないほど博識になってしまった。
「それで、羽咲さん。僕と正式にお付き合いしてほしいのだけど、異論はあるかな？」
これ以上『頭がいい人と付き合いたい』を言い訳にするのは無理そうだ。
なんて言って断ったらいいのだろう……。
完璧なインテリになってしまった瑠果（るか）！
どうやら次は、瑠果の言い分が聞けるみたい。次回は10月12日（木）公開！
『言いなり王子のかわし方』は、2023年10月12日（木）発売！
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