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もうすぐ中2になるわたし・くるみは お父さんが海外出張に行く2か月の間、 幼なじみの家で暮らすことに。8年ぶりに再会した久瀬(くぜ)兄弟との同居生活は毎日がドキドキで……!?
※これまでのお話はコチラから
第4回 料理が苦手なのは……?
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「とりあえず!! ごはんにしよう!」
好き好き攻撃からいったん逃げたくて、ぱちん、と雰囲気を切り替えるみたいに手をたたく。
「今日から夜ごはん、わたしが作ることになってるから! ふたりはなにか食べたいもの、ある?」
少しでも、お仕事をがんばっているお父さんの助けになりたくて、家事の大部分はわたしが担当していた。その中でも、料理が一番得意。
だからおばさんに、二か月間お世話になる代わりに、わたしに夜ごはんを作らせてくださいとお願いしたんだ。
「くーちゃん、料理できるの?」
「くるみも料理できんの?」
同じようなことを言って顔を見合わせるふたり。琥白(こはく)くんは微笑んだまま、藍翔(あいと)くんはいやそうな顔で。
それからすぐに、ふたりともわたしのほうを見る。
「くーちゃんのごはん、楽しみだな。僕もてつだ――」
「却下(きゃっか)。コイツに料理やらせたらやばいことになるから、絶対キッチン入れるなよ。……部活ないときなら俺が手伝う、つーか全部俺がやってもいいし」
「ありがとう。お手伝いはお願いすることもあると思うけど、全部は大丈夫だよ。お世話になるんだし、ごはんくらい作りたい!」
藍翔くんは料理ができて、琥白くんは料理下手。……藍翔くんには失礼かもしれないけど、イメージが逆だなぁ。
そう思ったけど、ふと思い出す。
「……そういえば昔おままごとしたとき、琥白くん、料理用のおもちゃをふっとばしたり、壊したりしてたっけ」
琥白くんの微笑みが引きつった。この反応をするってことは、わたしの記憶ちがいでもないみたいだ。
壊したりするのもわざとじゃなくて、毎回すごくしょんぼりしていたのがかわいそうだった。
「え、もしかして、それが実際の料理でも?」
いや、たぶん藍翔くんが大げさに言ってるだけだよね。
だけど藍翔くんは真顔で肯定した。
「言っとくけど、コイツの料理は冗談じゃなくやべぇから」
「そ、そんなに……?」
「大げさに言ってるだけだって言えたらいいんだけどね……」
「俺に散々迷惑かけといてそう言ったらぶんなぐってる」
「いつもありがとう、藍翔……」
「感謝する気持ちがあんなら一生キッチン入んなよ」
「……たまにでもだめ? やってみなきゃ一生成長しないし」
「やるんならひとり暮らし始めてからにしろよ!」
「はーい」
テンポのいいやりとりに、ついくすくすと笑ってしまう。遠慮のないやりとりで、聞いていて楽しかった。
そんなわたしを見て、ふたりがちょっとほっとしたような顔をする。
「よかった。緊張、なくなった?」
「まったく緊張しねぇのはムリだろうけど、緊張しっぱなしは疲れるだろ。ほどほどに気ぃ抜けよ」
そう言われて、ほんとだ、と気づく。もうすっかり、とは言えないけれど、緊張がほぐれていた。
「……ふふ、やっぱりふたりとも、優しいままだね」
たぶん今のやりとりは、別にわたしの緊張をほぐすためのものではなかった。ふだんどおりのやりとりを見せてくれたんだと思う。
それでも、ずっと心配してくれてたんだ。
「ありがとう。ふたりのおかげで、もう大丈夫だと思う」
これから二か月、どうなっちゃうんだろう、って本当は少し不安だった。
だけど、なんとかなりそうな気がしてきた……!
第5回につづく(7月5日公開予定)
『双子くんがわたしのことを好きすぎる』は好評発売中!
ふたりに愛されすぎて困っちゃうくるみの選択は――!?
キュンが止まらない恋愛ストーリーをお楽しみに!!