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もうすぐ中2になるわたし・くるみは お父さんが海外出張に行く2か月の間、 幼なじみの家で暮らすことに。8年ぶりに再会した久瀬(くぜ)兄弟との同居生活は毎日がドキドキで……!?
※これまでのお話はコチラから
第3回 双子くんがわたしのことを好きすぎる!?
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わたしは、目の前のふたりのことをあらためて見た。
さっきまでは玄関先でいきなりぐいぐいと来られて、落ち着いて見る余裕がなかったんだけど……リビングに案内されて、ふわふわのソファーに座った今。
一息ついてからちゃんと見ると、昔のおもかげが残っていて、なつかしくなった。
「わたしのこと、覚えててくれたんだね」
なんでもないような顔をしながら、わたしはすごく緊張していた。
だってここ数年、話すことも、顔を合わせることもできてなかったんだもん……!
「くーちゃんのことは絶対忘れないよ。ずっと大好きだったから」
「へあっ!? あ、ありがとう……!?」
にこっとまた微笑んでくれた琥白(こはく)くんに、思わず変な声が出てしまった。
琥白くんは昔、わたしのことが好きだってよく言ってくれていたし……幼なじみとしてとか、友だちとしてとか、そういう意味だよね。
そうわかってても、いきなり言われると心臓に悪い!
「俺だってくるみのこと、ずっと好きだった」
こうやって対抗するように、藍翔(あいと)くんが好きだと言ってくれるのもなつかしい。
どきどきとはねてしまう心臓を落ち着かせるために、わたしは小さく深呼吸をした。
「ありがとう。わたしも、ふたりのことずっと……す、好きだったよ。覚えててくれてうれしい! また仲よくしたいなって、ずっと思ってたの」
今度こそ、自然に笑えた気がする。
ひさしぶりに会った子に好きだと伝えるのは、なんだかいつも一緒にいる友だちに伝えるよりも照れくさかった。
「……くるみ、変わんねぇな」
なぜだかあきれたようにつぶやく藍翔くんに、琥白くんが「だね」とうれしそうにうなずく。
「え、そうかな?」
「うん! 大好きなくーちゃんのままみたいで安心しちゃった」
「こ、琥白くんも変わってなさそうだね……」
二回目の『大好き』に、また動揺してしまった。こんなにまっすぐ大きな『好き』をぶつけられると、やっぱりどうすればいいのかわからなくなる。
わたしの言葉に、今度は琥白くんが「そうかな」と首をかしげた。自分のことって、案外よくわからないのかも。
「そうだよ。もちろん、藍翔くんも。ふたりを見てると、全部なつかしいなぁって思うんだ。まだちょっとしか話してないから、わからない部分も多いけど……」
「ならそろそろ、そんな緊張しなくてもいいだろ」
テーブルに頬杖(ほおづえ)をついて、藍翔くんはちょっとおかしそうに笑った。わたしが緊張しているのはバレバレだったみたいだ。
「ご、ごめん……その、ふたりともすっごくかっこよくなってて……なつかしいのに別人みたいで、どうしても緊張しちゃうんだ」
「……やっぱ変わってねぇ」
「ほんとにね」
藍翔くんはふいっと目をそらして、琥白くんは少し苦笑い。
……なんだか、照れてる? かっこいいって言われたから? でもふたりとも、学校で言われ慣れてると思うんだけど……。
目を瞬(またた)いていると、琥白くんはごまかすようにせきばらいをした。
「くーちゃんと二か月も一緒に暮らせるなんてうれしいな。困ったことがあったら……ううん、別に困ったことがなくても、頼ってね。好きな子にはなんでも頼られたいから」
「ありがとう、でもさすがに好きって言いすぎじゃないかな!?」
昔もたまに、いっぱい好きって言ってわたしをからかうことがあったけど……! そういうところも変わってないのかな。
顔が熱くなってきて、手でほっぺたを押さえてしまう。好きって言ってもらえるのはうれしいけど、ここまで言われるとすっごく照れる。
「ひさしぶりに会ったから、そのぶんいっぱい伝えたくて。いやだった?」
しゅん、と眉(まゆ)を下げる琥白くんに、「うっ……」と声が出てしまう。
「照れるくるみがかわいいから、だろ。言いすぎて嫌われても知らねぇぞ」
「たしかにくーちゃんがかわいいからっていうのもあるけど、ひさしぶりに会ったからっていうのも嘘じゃないよ。藍翔はちがうの?」
「俺は好きな子は大事にしたいタイプだし」
「僕だってそうだよ!」
ふ、ふたりとも、なんだかわたしのこと好きすぎないかな……!
八年も会っていなかったのに、こんなに好きなままでいてくれているとは思わなかった。
「とりあえず!! ごはんにしよう!」
好き好き攻撃からいったん逃げたくて、ぱちん、と雰囲気を切り替えるみたいに手をたたく。
第4回につづく(6月28日公開予定)
『双子くんがわたしのことを好きすぎる』は好評発売中!
ふたりに愛されすぎて困っちゃうくるみの選択は――!?
キュンが止まらない恋愛ストーリーをお楽しみに!!