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生きづらさに寄り添う青春小説『透明なルール』ができるまで


2024年4月24日に、小学校高学年から大人まで、幅広い世代に人気の小説家・佐藤いつ子さんの新刊『透明なルール』が発売されます。
教室で感じる「息苦しさ」を丁寧に描き、<共感間違いなし!>の小説が生まれた背景と、印象的なカバーイラストのこだわりをご紹介します。

青春小説の王道テーマから、「生きづらさ」へ

佐藤さんは、これまで少年サッカーにおける挫折と友情をテーマにした『キャプテンマークと銭湯と』、合唱コンクールを舞台に爽やかな恋愛模様を描いた『ソノリティ はじまりのうた』など、青春小説の王道のテーマをみずみずしいタッチで描いてきました。
あさのあつこさんの推薦を受けて『駅伝ランナー』でデビューし、毎年、中学受験や高校受験の国語の問題文としても出題され、先生や司書の皆さんからも注目を集めています。

そんな佐藤さんが最新作でテーマにしたのは、学校にはびこる「見えないルール」。
成績が良いことがなんだか恥ずかしくて隠したり、めずらしい趣味を友達に言えなかったり、既読スルーは絶対NG、クラスで目立つ子のSNSの投稿には、すぐに反応しなくちゃダメ――。学校生活をうまく生き抜くための「見えないルール」に、誰しもが従っている。
でも、自分らしく本音を話したり、行動したりできないのはなぜ? と、ふと疑問に思うことはありませんか。
そんなもやもやした「生きづらさ」に寄り添う小説『透明なルール』では、3人の登場人物が中心となって物語が進んでいきます。


後から生まれた「主人公」

【佐藤さんによる、登場人物メモ】

・主人公:父子家庭。勉強が得意で、高校はトップ校を狙っている。生徒会所属。繊細なところがあり、空気を読もうとするタイプ。レコード鑑賞が密かな趣味。

 ・誠:椿中で主人公のクラスメイトであり、同じ生徒会所属。こけしが趣味。学校ではいじられキャラ。マイペースな天然タイプ。

 ・愛:数学が得意で、音や光などに過敏な性質をあわせ持つギフテッド。小学校のころ質問ばかりして浮いてしまい、名門私立中学では浮かないように努力するあまり、不登校になってしまう。この春、椿中学に転入し籍は置くが、フリースクールに通うことで、次第に自分を取り戻し始める。

メモの中で、主人公に名前がないことに気づいたでしょうか? 実はこの作品は、「愛」と「誠」という、ふたりの物語が種となって生まれたのです。
自分の軸を持ち、才能と生きづらさをあわせ持つ「愛」。
いじられキャラだけれど、マイペースな「誠」。
当初は、誠が愛と共に、理不尽な校則=「ブラック校則」に立ちむかう物語でした。


【佐藤さんによる、あらすじメモ】

椿中学は校則も厳しく、抑圧的な先生が幅をきかしているような、とても窮屈な中学。
いじられキャラの2年生の誠は、『部活に入ること。もしくは生徒会に所属』という校則のもと、入りたい部活もなかったので、仕方なく生徒会で雑用のような係をしている。
ある日、誠が野球部の流星たちからいじられているところを、同級生の愛にたまたま目撃され、帰宅部を貫いている愛と接近。自由奔放な愛の性格や行動に衝撃を受ける。
誠と愛は、理不尽な校則や、目に見えないルール(同調圧力)を壊そうと、生徒会のメンバーらと立ち上がる。

その後、佐藤さんと担当編集が打ち合わせを重ねる中で、
「ブラック校則」は時代の移り変わりとともに、廃止されていく。むしろ、無意識のうちに誰しもが絡み取られてしまう「見えないルール」こそ、息苦しさの本当の原因なのではないか、という議論が生まれました。
そこで、「見えないルール」にとらわれる主人公の「優希」が誕生。「誠」と「愛」は彼女に影響を与える重要な役として、3人の物語が走り出しました。

優希が感じる人間関係の生きづらさには、小学生から大人まで、共感する部分があるはずです。
また、誠と愛の言葉には、モニター読者から「勇気をもらった」「もっと早く出会いたかった」という熱い感想が寄せられました。


ひとめぼれしたカバーイラスト

カバーイラストは、物語の行方が見えると同時に、「どんなイラストレーターさんにお願いするか」「色味や雰囲気はどうするか」を考えていきます。
優希の「本音を言えない苦しさ、もやもやした感情」を表現しつつ、作品が持つ希望やあたたかさを感じられるイラストを求めて、作家さんを探す中で目に着いたのが、赤(aka)さんのイラスト。

「どこか、もの言いたげな表情」「色彩や質感のあたたかさ」「大胆な構成」に惹かれ、お声がけしました。

赤さんからいただいた構成案は、格子柄をベースにしたものと、リボンが波打つ柄のもの。



ブックデザイナーさんと相談し、後者に決定。
主人公の髪型や顔立ち、体つきは、著者にもひとつひとつ確認しながら造形していただきました。

最後の最後まで調整を重ねたのが、髪と制服の色彩です。
ひとめ見て「学校の制服」と分かるように、シャツは明るい色にした方がよいか、リボンは赤などの色がよいか、と細かくご検討いただきました。

髪の色は、当初は全員同じ色でした。



グレー、青、白、と色々試していただいた後、「赤・青・緑」とそれぞれが異なる今の形にたどりつきました。
制服も髪色に対応し、それぞれが異なる配色に。ただし、リボンやネクタイの部分で、お互いの色を拾う「ゆるやかなつながり」を感じられるアイディアには、思わず立ち上がってしまうほど、感動しました。
想像をはるかに超え、小説の世界をイラストイメージに落とし込んでくださった赤さん。児童書の売り場でも、きっと目立つはず! 



内容も、装画も、こだわりぬいた『透明なルール』。
書店で見かけたら、ぜひ手に取ってくださいね。
佐藤さんへの応援メッセージや作品への感想もお待ちしています♪



著者: 佐藤 いつ子

定価
1,650円(本体1,500円+税)
発売日
サイズ
四六変形判
ISBN
9784041145418

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