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ふと思い出したように、クレアが話し出した。
「ディエゴは――だれにも心を開かなかったわ。動物たちをつかまえて、はくせいにすることも何とも思っていなかった。でも、ミーティアだけはちがった」
クレアは海にうかぶミーティアを見つめている。
「ある日、ディエゴが海に落ちたの。このままディエゴが助からなければ…なんて考えてしまった。でも、ミーティアがすくったの。落ちたディエゴをだきしめるようにかかえて海から顔を出したのよ。その日からディエゴの様子が変わったわ」
ミーティアたちは海の上をゆったりと円をえがくように泳いでいる。
「時おり海岸におりてミーティアに話しかけるすがたを見かけるようになった。彼は子どものころから親もなく、ずっと孤独と不信感の中で育ったらしいの。やさしいミーティアの存在が、ひょっとしたら彼の心に変化をもたらしたのかもしれない」
「まさか…あのディエゴが?」
君はすぐには信じられなかった。でもあのミーティアの包みこむようなやさしい表情を思い出す。ステラーカイギュウはとても仲間思いの生き物だと聞く。ディエゴの孤独を感じ取ってなぐさめていたのかもしれない。
「私にはまだやり残したことがあるの。あとで合流するから、先にヘリポートへ向かって。ディエゴのやしきのとなりにあるわ。もしかしたら脱出の手段が残っているかも…」
と、クレアが言ったので、みんなその場をあとにする。