「将来、どんな仕事につきたい?」
そう聞かれて、すぐ答えられる人は、そんなに多くありませんよね。
まだ決まっていなくても、大丈夫。途中で変わっても、もちろん大丈夫。
このお話は、主人公のアドさんと同級生の中学生たちが、“異世界”で仕事を選ぶ授業から始まります。
勇者や魔法使い、商人や治療師。ちょっと変わった仕事も、見たことのない仕事も出てきます。
でも、これはただのファンタジーではありません。
「自分は何が好きなんだろう」
「向いている仕事って何だろう」
そんな、きみの中にあるモヤモヤを探るために、物語の世界に入ってみよう!
※本連載は『5分でわかる私たちの未来の仕事 2040年のハローワーク』から一部抜粋して構成された記事です
プロローグ
異世界に転生すると、神様からもらえる特別な才能。
そんなチートな才能の持ち主は、
この本には一人もでてきません。
主人公たちは、日本のどこにでもいそうな
中学生です。
かれらは、異世界の職業を選ぶ授業で、
自分の適職を考えます。
勇者になると宣言したり、
声優を目指したり。
前作のキャラクターたちも成長した姿で登場します。
資格取得や結婚願望など、登場人物たちの
夢や悩みはさまざま。
進路を考えるときの参考にしていただけたら、
と願っています。
※ なお、中学生以上の世代や保護者向けの部分も含んでいます。
第1章:総合学習は、異世界転生のジョブ選び?
異世界ジョブとリアルな仕事
「みんな! 今から大冒険に出発するぞ!」
担任の先生は、ときどき、聞いているほうが恥ずかしくなるセリフを口走ります。
――また先生がテンションをあげてるぅ。
アゴが外れそうな大あくびをしたのは、最後列に座るアドさんです。
ポニーテールの髪は寝ぐせ隠しで、目の下には睡眠不足のクマがあります。最近、両親ともに忙しいのをいいことに、ゲーム三昧で毎晩夜更かししているのです。今朝は寝坊しましたが、家族もなぜか寝過ごしたので、怒られずに済みました。
三つ上の姉はマジメな高校生なので、朝食抜きで飛びだしていき、早朝会議だという母はとっくに出勤したあとでした。その後、アドさんはゆっくり菓子パンとミルクの朝食をとって、家をでました。だらしないことが嫌いな金融機関勤めの父は幸い出張中です。アドさんは朝礼を素通りして、無人の教室にこっそり忍びこみました。
あわてず騒がず、怒られず。それがアドさんのモットーです。
六時間めの総合学習の時間、生徒たちは半分居眠りをしています。アドさんもうとうとしかけたとき、先生が爆弾を落としました。
「じつは先生は、異世界転生物に夢中になっています。異世界転生を知らない人は?」
異世界転生! アドさんは反射的に頭をあげました。
周囲の生徒も急に目がさめたような顔をしています。好きな話題がでてくるだけで、頭がこんなにシャッキリするとは。
いやいや、異世界転生物を知らない人はいないでしょう。常識だよ? そう思いながらアドさんが教室を見回すと、なんと五人のクラスメートが手をあげていました。
「異世界転生がわからないのは五人か」
アドさんは挙手した人をみていきました。
運動部が多めという印象。
アドさんは運動が苦手ではないのですが、疲れることと強制されることが大嫌いなので、体育の授業は手抜きです。とくに持久走ではいつもビリのほう。
隣席の男子も手をあげていました。暗本さんといって先週同じ班になりましたが、ほとんど話したことがありません。
先生が手をおろすよう、指示しました。
「手をあげた人たちに質問だが、大阪と千葉にあるテーマパークは知っているかな」
五人とも知っていました。
「テーマパーク内に作り物の街があるね? ヨーロッパ風のお城や魔法学院。ああいうファンタジーの街の住民として働いてみる、というのが異世界転生の設定だ」
その説明で、五人は納得できたようです。
「この授業の目的は、あとで説明します。まずは異世界の設定から。設定にないことは自由に決められます。ではいくよ」