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うどんつゆの味と色が東西で全然違ちがうのは……第3回 暮らしと地理|『すごすぎる地理の図鑑』


地理を身近なテーマで楽しく学べる『地理がわかれば世界がわかる!すごすぎる地理の図鑑』の試し読みです。地図記号や地形など知っているようで知らないトリビアが満載。社会の勉強にも役立つかも!
※ためし読みでは、本書の内容の一部を抜粋してお届けします。

第1~2回を読む


35. 東京の地下鉄は地上を走ることも多い

 東京都内を走る地下鉄は全部で13路線あり、都心部の建物や道路が密集した地域でも、地下を走り抜けてくれるのでとても便利です。その中に、“地下”鉄なのに地上を走るところも意外とあります。
 その理由は、路線の末端で他の路線と接続するためや、大きな川を鉄橋で越えるため、都心から離れて地上での鉄道建設が容易だったためなど。これらの理由以外では、銀座や丸ノ内線などは地形的な要因でたまに電車が地上を走ります。
 東京の山の手台地は、数万年前までに主に多摩川の扇状地として形成されたもので、その後、台地の上を流れる川が侵食して谷ができた凸凹の多い地形です。銀座線、丸ノ内線など初期の路線は比較的浅い地下につくられたので、地形の影響を受けて谷部分で地上に出ます。丸ノ内線の茗荷谷駅~後楽園駅は、このような谷に沿って走る区間です。また渋谷駅周辺は渋谷川が削った谷地形になっていて、銀座線が渋谷駅に着くと、そこはなんと地上3階なのです。

東京の凸凹地形を走る地下鉄




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日本の地下鉄でいちばん深い場所にある駅は、都営地下鉄大江戸線の六本木駅(地下42.3m)です。大江戸線は、2000年に全線開業した新しい路線で、他の路線やさまざまな地下施設を避けるため深いのです。




36. 地形の特徴は海産物からわかる!

 海に囲まれた日本では、昔から海産物をたくさん利用してきました。これらの海産物の種類は、じつは地形と密接に関係しています。
 日本はプレートの境界付近に位置しているため、プレートが沈み込む周辺などでは水深がとても深くなっています。例えば、静岡の駿河湾や高知の室戸岬沖には深海魚のキンメダイが生息していて、新鮮なキンメダイを朝獲ってその日のうちに食べることができます。駿河湾には深海性のタカアシガニも生息しています。
 一方、内海内湾は、比較的波が穏やかで、水深が浅くイカダ養殖に向いています。瀬戸内海や伊勢湾のカキ養殖、三重県の英虞湾の真珠の養殖なども内湾で行われるイカダ養殖です。九州の有明海や伊勢湾ではノリ養殖が盛んに行われています。東京湾もかつてはノリ養殖が盛んでした。このような湾では、川から流入してきた土砂が海流に流されることなく溜まるので、泥地を好むキスやハゼ、アナゴも獲れます。
 さまざまな海の地形によって、獲れる海産物の多様性が生まれるのです。

さまざまな海底地形が生み出す海産物




画像提供:ピクスタ

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富山湾は急峻な地形で、ホタルイカやシロエビはこの地域で獲れる海産物です。有明海は干潮と満潮の海水位の差が大きい内湾で、泥地を好むムツゴロウやワラスボが生息しています。



40. お正月のご馳走・お雑煮でわかる日本の食文化

 みなさんの地域では、お正月にどんなご馳走を食べてお祝いしますか? じつはこれにも地域差があるのです。
 お正月料理の定番といえばお雑煮。お雑煮は餅を入れた汁物ですが、餅のかたちが角餅と丸餅の地域に分かれます。丸餅地域ではほかの食材も丸く切ることが多く、「角が立たないように」という縁起の意味も込められているようです。一部の丸餅地域では、小豆あん入りの丸餅を入れます。そしてお雑煮の汁にも地域差があります。大きく、すまし汁、味噌仕立て、小豆汁仕立てに分けられます。これらの組み合わによって、地域ごとにさまざまなバリエーションがあるのです。
 また、お正月といえばどんな魚を思いうかべますか? 大きく分けて、東日本では低い水温を好むサケ、西日本ではブリを食べます。この境界は天竜川~松本市~新潟県の西頸城郡から佐渡島のようです。
 こうやって調べてみると、地域ごとの特色がよくわかりますね。


全国お雑煮・正月魚MAP




PICK UP:ブリ圏とサケ圏
大きく分けて東日本では冷水性の魚であるサケ、西日本では暖水性のブリを食べる。その境界は、糸魚川–静岡構造線と呼ばれる大断層あたりで、新潟県の多くはサケだが佐渡と西頸城郡ではブリ、長野県は長野市など北東部ではサケだが、松本より西はブリ、静岡県では天竜川より東はサケだが西がブリとなっている。

 

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最近、海水温の上昇により魚の生息場所や水揚げ地域が変化しつつあります。日本ではサケが獲れる場所が減少し、ブリが増える可能性が指摘されています。お正月に食べるものも変化するかもしれませんね。




43. うどんつゆの味と色が東西で全然違ちがうのは……


「西のうどんつゆは薄すぎる」「関東のうどんつゆは、真っ黒で塩辛いだけ」と度々話題になり、その味やつゆの色は関東・関西で違います。その理由は、江戸時代の航路に鍵がありました。
 17世紀後半、西廻航路・東廻航路が開拓されました。当初の東廻航路は東北地方から江戸に向かい、西廻航路は米どころ酒田の藩米をのせて天下の台所・大坂(現在の大阪府大阪市)を経て江戸に向かうルートでした。航路を北は蝦夷地(現在の北海道以北)に延ばした北前船は、蝦夷地で特産の昆布、ニシン粕などを買い付け、下関を経て大坂に向かいます。昆布は、以前から交易のあった新潟、敦賀などの寄港地で順次降ろされたり、瀬戸内海、大坂の食卓に浸透していきました。
 一方、江戸の庶民の食卓にまでは昆布が十分行き渡らず、関西は昆布ベースのつゆ、関東醬油ベースのつゆとなりました。船が戻る際は大坂や京の絹織物などが輸送され、寄港地では京文化が取り入れられました



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東廻航路は、潮の流れに逆らって江戸に向かうため、当時の航行技術では危険を伴いました。西廻航路は日本海が荒れる冬季以外は比較的穏やかで、北前船が頻繁に行き来する主要な航路となりました。


次回は、「すごすぎる地域の歴史」をご紹介します!(7月11日公開予定)



好評発売中!『すごすぎる地理の図鑑』




監修:日本地理学会 編著:山本 健太 編著:長谷川 直子 執筆:宇根 寛 執筆:平野 淳平 執筆:矢野 桂司 執筆:秋山 千亜紀 執筆:宋 苑瑞

定価
1,430円(本体1,300円+税)
発売日
サイズ
四六判
ISBN
9784046060044

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