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「天下分け目の関ヶ原」は地理的にもかなりの重要地点 第4回 地域の歴史|『すごすぎる地理の図鑑』


地理を身近なテーマで楽しく学べる『地理がわかれば世界がわかる!すごすぎる地理の図鑑』の試し読みです。地図記号や地形など知っているようで知らないトリビアが満載。社会の勉強にも役立つかも!
※ためし読みでは、本書の内容の一部を抜粋してお届けします。

第1~3回を読む


51. 上総と下総、上下が逆に見えるのは?

 旧国名には、上野(群馬県)や、下野(栃木県)のように上・下がつくものや、備前(岡山県東部)、備中(岡山県西部)、備後(広島県東部)のように、前・中・後がつくものがあり、いずれもから近い国に上や前、遠い国に下や後があてられています。
 千葉県の房総半島には、明治時代に廃藩置県が行われるまで安房、上総、下総の3つの国がありました。現在の房総半島への道すじで見ると、東京に近い方が下総、遠い方が上総になっています。これは逆ではないのでしょうか?
 答えは、かつての房総半島へのルートにあります。都から房総半島、その先の常陸(茨城県)方面へは、三浦半島から東京湾を船で渡って上総に上陸するのが一般的でした。東京湾が波の穏やかな内湾で、船を使って早く安全に渡れたこともありますが、現在の東京の下町は縄文海進の名残りの湿地帯で、都から東に向かう陸路は通りづらかったことも一因でした。

土地の名前も地形が決める



旧国名はなぜ読みにくい?

713(和銅6)年、元明天皇が全国各地の風俗を記録した『風土記』をつくるよう命令したとき、諸国の地名を中国(当時は唐)風に縁起の良い漢字2文字で書くよう命じ、無理に漢字をあてたためだといわれている。




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中国で都市の名前が2文字になっていくのは秦時代以降だといわれています(咸陽など)。それ以前は1文字の名前も多かったようです。後漢時代に名前の原則が研究され、隋・唐時代に運用され始めました。




52. 「天下分け目の関ヶ原」は地理的にもかなりの重要地点

「天下分け目の関ヶ原」。これは1600年、徳川家康率いる東軍と石田三成率いる西軍の合戦が関ヶ原で行われたことに由来します。じつはこの場所、地理的にも天下分け目といえる重要な場所なのです。
 岐阜県と滋賀県の県境近くにある関ヶ原は、近畿と東海地方や関東地方を結ぶ交通の要衝でした。関ヶ原は低地帯であるため、昔、このあたりには、京都や奈良の都を守るために不破関と呼ばれる関所が設けられていました。関所が廃止された後も、非常時にはいつでも通行止めできる交通の要衝として残りました。
 天候面でも関ヶ原は重要な場所です。冬に日本海で発生する雪雲が関ヶ原を通過します。日本海側と太平洋側の間に高い山があると、雪雲は太平洋側まで進入できません。ところが、関ヶ原は低地帯なので、雪雲はここを通過して濃尾平野まで雪を降らせることがあります。関ヶ原は雪雲の通り道となるのです。



関ヶ原古戦場と不破関跡
関ヶ原は東西を分ける要衝で、両軍の戦いにふさわしい場所だった。

 



新幹線から見る関ヶ原付近の雪景色
若狭湾から伊吹山の横を通って吹き込む季節風で、冬は雪が降りやすい。

 



関ヶ原に雪が降る理由
雪雲は日本海側から流れ込む。高い山にさえぎられないため、関ヶ原に雪をもたらす。

 

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古戦場としての関ヶ原は、「ヶ」を使って「関ヶ原」と表記します。本文では、「関ヶ原」と書きましたが、自治体名としての正式な名称は「ケ」を使い「岐阜県不破郡関ケ原町」です。



53.江戸時代の日本は丸裸の山だらけだった!?

 現在の日本は、国土の約7割が森林におおわれ、普段都市部に住んでいる人も、電車や車で少し移動すると豊かな森の自然に触れることができます。じつは過去には、これらの森が荒廃していた時代がありました。
 現在の私たちの生活は、輸入した石油などの化石燃料を主なエネルギー源として営まれています。しかし江戸時代には鎖国政策により輸入はできませんでした。主要なエネルギー源は国内の薪。人々は近くの森を里山として管理し、数十年かけて木々を育てながら計画に伐採してエネルギー源として利用していました。
 ただ、そのようなかたちで得られるエネルギーには限度があり、木を切りすぎた結果、裸の山(ハゲ山)がいたるところに出現しました。
 現在の日本で豊かな森が維持できているのは、エネルギー源の多くを海外から輸入しているから。ある意味皮肉な結果かもしれません。


意外!? 江戸時代の深刻な環境破壊



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江戸時代の日本は、究極の循環型社会ともいわれています。例えば江戸では江戸前の海産物を食べ、溜められた排泄物を江戸近郊の農地の肥料にして、農業を行うといった無駄のない循環で暮らしていました。


次回は、「すごすぎる世界の地理」をご紹介します!(7月18日公開予定)



好評発売中!『すごすぎる地理の図鑑』




監修:日本地理学会 編著:山本 健太 編著:長谷川 直子 執筆:宇根 寛 執筆:平野 淳平 執筆:矢野 桂司 執筆:秋山 千亜紀 執筆:宋 苑瑞

定価
1,430円(本体1,300円+税)
発売日
サイズ
四六判
ISBN
9784046060044

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