知る・まなぶ 2023.07.18

温室効果ガスの排出が少ない北極で温暖化が進むワケ　第5回　世界の地理｜『すごすぎる地理の図鑑』

地理を身近なテーマで楽しく学べる『地理がわかれば世界がわかる！すごすぎる地理の図鑑』の試し読みです。地図記号や地形など知っているようで知らないトリビアが満載。社会の勉強にも役立つかも！
※ためし読みでは、本書の内容の一部を抜粋してお届けします。

◆第1～4回を読む

62.　世界の気候帯は5つ　植物が重要なポイント

　世界には、暑い地域、寒い地域、日本のように四季がある地域など、さまざまな気候の地域があります。どのように分布しているのでしょうか。
　世界の気候は、大きく５つに分けることができます。気候区分を知ることは、その地域に生える植物などを理解することにもつながります。なぜなら植物は、特にその土地の気温や降水量の影響を受けやすいからです。
　20世紀初めに、ドイツの気候学者ウラジミール・ペーター・ケッペンは、地域ごとの植物の生え方に、似ているところと、違うところがあることに注目しました。その理由を考えていくうちに、植物の生育に重要な気温と降水量が大きく関わっていることを発見しました。そして気温や降水量で気候を大きく5つに分けたのです。
　植生は、農業や衣食住など、人々の生活・文化と深く関わっています。気候の特徴と、植生や人間生活との関連を見てみると、たくさんの発見がありますよ！

世界の気候を知れば生活や文化が見える

ケッペンによる気候区分
植生の違いで世界の気候帯を5つに区分している。

画像提供：ピクスタ

💡知

地球温暖化で気温や降水量が変わると、ケッペンの気候区分の境界線も変化します。亜寒帯や寒帯の面積は、過去100年間で小さくなっています。今後温暖化が進むと、さらに影響が大きくなる可能性も。

63．砂漠ができる理由は大きく分けて４つある！

　砂漠ができるのは、雨が少なすぎて植物が育たないから。雨が降らない原因をさらに詳しく見ていくと、じつは砂漠ができる理由は４つあります。
　１つ目は、地球規模の風の流れ（大気大循環）の影響でつくられる中緯度砂漠。赤道付近では強い太陽光によって地面が暖められて上昇気流が起こり、たくさんの雨を降らせます。その後、上空で中緯度方向に移動した乾いた大気が地表付近に降りた地域に中緯度砂漠が分布します。
　２つ目は、沖合を流れる寒流によって大気が冷やされる地域にできる海岸砂漠。大気が冷やされると上昇気流が発生しづらいので、雨が降りにくく乾燥します。
　3つ目は、海から遠く、水蒸気が届きにくい内陸部にできる内陸砂漠です。
　4つ目は、高い山脈の風下側にできる雨陰砂漠です。湿潤な風が吹き付ける山脈の風上側で雨や雪が降ってしまい、風下側では風は水蒸気をほとんど含まないので、雨が少なく砂漠になるのです。

見た目は同でも、できる仕組は大きく違う

💡知

砂漠の地表面の状態は、砂が分布している「砂砂漠」、硬い岩盤が露出している「岩石砂漠」、地表面が礫（石ころ）におおわれている「礫砂漠」の３つに分類することができます。

71. 温室効果ガスの排出が少ない北極で温暖化が進むワケ

　最近、地球上の気温が上昇しているといわれますが、その上昇率は地域で異なり、北極をはじめとした高緯度で特に高くなっています。この地域には人が少なく人為的なCO2排出も少ないはずなのになぜなのでしょうか？
　高緯度の雪や氷は、太陽光の多くを反射します。太陽光が反射されると、地面に吸収される太陽光が減って、地表付近の気温はあまり上がりません。
　気温が上昇し雪や氷が融けると、地面や海面が現れます。茶色の地面や青い海面は太陽光を吸収しやすいので温度が上がり、その結果、気温上昇が加速されるのです。　　
　北半球の高緯度では温暖化によって氷や雪が溶け、さらに温暖化が加速するという悪循環が起きていると考えられます。
　高緯度地域の温暖化は、ホッキョクグマやアザラシなどの生息に大きな影響を及ぼします。このように、温室効果ガス排出源（大都市や工場）ではない場所で温暖化の影響が大きく表れることがあるのです。