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鳥取砂丘は砂漠のようで砂漠ではない!? 第2回 地形と自然|『すごすぎる地理の図鑑』


地理を身近なテーマで楽しく学べる『地理がわかれば世界がわかる!すごすぎる地理の図鑑』の試し読みです。地図記号や地形など知っているようで知らないトリビアが満載。社会の勉強にも役立つかも!
※ためし読みでは、本書の内容の一部を抜粋してお届けします。

第1回を読む

15. 地形が教えてくれる自然の営み

 大雨や地震などで地形が大きく変化することがあります。地元のお年寄りが「これまで生きてきた中でこんなことはなかった」というのを聞きますが、本当にそれまで起こっていなかったのでしょうか?
 大地がつくられていく時間の間隔はとても長く、人の一生とは規模が違います。数千年、数万年という長い目で見ると、大洪水や山崩れは何度も繰り返し起こり、その結果、大地は大きく変化してきました。
 自然の営みの痕跡は、じつは地形に記録されています。川は山を削り、その土砂が下流に運ばれて川沿いや河口が埋め立てられて平野になります。平野の地形をよく見ると、周囲と比べてわずかに高さの違う場所がありますが、これらは平野がつくられる過程で、川が流路を変えたり、洪水を起こして土を堆積させた痕跡。山地には過去に起きた山崩れの跡が残されています。
 このような地形を調べて、その土地の現在までの成り立ちを知れば、将来起こるであろう自然災害を予測できるのです。

それぞれの地形から災害のリスクを知ろう

山の地形と平野の地形
このような地形を読み取ることで、土地の成り立ちを知ることができる。




💡

国土地理院のHPにある地理院地図から、土地の成り立ちと災害リスクを知ることができます。地図→土地の成り立ち・土地利用→地形分類(ベクトルタイル提供実験)→地形分類(自然地形)で、表示されます。




16. 人々の生活を豊にしながら災害ももたらす「川」

 川は、上流から下流まで、さまざまな違う姿や機能を持っています。そもそも川は地表に降った雨が最終的に海に流れ込むまでの流路のこと。
 山をつくっている硬い岩石は時間の経過とともに劣化(風化)し土砂に変わります。土砂は川の流れにより削られて(侵食)、下流へ運ばれ(運搬)、川の流れが緩やかなところでは運ばれた土砂が溜まります(堆積)。
 自然状態の川は、くねくねと曲がりながらかたちを変えます。その様子は蛇の動きに似ているので、蛇行といいます。蛇行が進んだ結果、かつての流路の一部が残ることで、三日月湖ができることもあります。
 川は平野に水や土砂を供給し、川がつくった氾濫平野は豊かな農地として利用しやすく、自然堤防は集落として利用され、人の生活に欠かせません。
 一方でときには洪水などの災害も起こります。人々は水害が起こりにくくなる知恵を重ね、川と上手に付き合ってきたのです。



💡

埼玉県春日部市に、首都圏外郭放水路(通称:防災地下神殿)という治水施設があります。世界最大規模の地下放水路で、調圧水槽には67万トンもの水を溜めることができます。首都圏の水害を防ぐ役割があります。



17. 三角州と扇状地は似ているけれど全然違う!

 三角州扇状地という言葉を聞いたことはありますか? どちらも川によって運ばれる土砂でつくられ、扇形をした地形なので、同じようなものと思うかもしれません。しかしこれらの地形は、形成される場所とでき方がまったく違います。
 扇状地は、川の傾斜が緩やかになる山の麓に、三角州は川が海や湖に流れ込む河口付近に、土砂が溜まることでつくられます。どちらも規模が大きいので、現地に行ってもその地形を実感しにくいと思います。
 また、日本は山が多く、山と海の間の距離が短いため、静岡県の大井川、富山県の黒部川のように、山の麓にできた扇状地の先がそのまま海岸になっている例外的な地形も見られます。
 三角州は比較的細かい砂や泥でつくられますが、扇状地は山間部からの土石流(大雨で大量の土砂が一気に押し流されるもの)で形成され、比較的大きな石ころが堆積しています。そのため扇状地は水はけがよく、それに適した果物栽培が盛んです。


大地の神秘! 扇状地と三角州の違いを知ろう

地形で見る侵食作用と堆積作用がはたらく場所
V字谷海底谷侵食作用(削る力)が大きい。
扇状地三角州堆積作用(溜まる力)が大きい。



日本で最大級の扇状地
岩手県の胆沢扇状地。衛星写真を東方向から立体表示したところ。胆沢川の扇状地になっているのがわかる。




三角州の例
広島県の太田川流域に見られる三角州。海側は干拓や埋め立てで土地がさらに広がっている。



 

💡

東京都の西部は、多摩川がつくった巨大な扇状地です。青梅市街地が扇の要で、ここから東に向かって広がっています。練馬区の石神井池、杉並区の善福寺池などは、扇状地の地下に流れる水が湧き出している場所です。




23. 鳥取砂丘は砂漠のようで砂漠ではない!?


 一面の砂地が広がる鳥取砂丘。鳥取砂丘は砂漠なのでしょうか?
 砂漠は雨が少ない場所にできるものですが、鳥取は植物の成長に十分な雨が降ります。航空写真を見ると、砂丘の周辺には森林があり、砂ではないことがわかります。
 ではなぜここに砂丘があるのでしょうか。その理由は、「川」と「風」です。鳥取砂丘の西側には、中国山地から日本海に流れる千代川の河口があります。千代川上流には、岩が風化してもろくなってできた大量の砂があり、川によって日本海まで運ばれます。 
 日本海では冬になると北西から季節風が吹き、千代川によって運ばれてきた砂は、季節風の強い風と波によって河口近くの海岸(鳥取砂丘)に堆積します。そこに再び強い風が吹くと砂は少しずつ移動します。このように砂が動くと植物が根を張れません。つまり砂が動くために植物が育たないだけで、降水量は全く関係ないのです。



💡

冬に強い北西の季節風が吹く日本海側の新潟県新潟市や山形県酒田市にも、砂が堆積してできた砂丘があります。クロマツの植林などによって、砂の移動を防止して砂丘を固定しているところも。


次回は、「すごすぎる暮らしと地理」をご紹介します!(7月4日公開予定)



好評発売中!『すごすぎる地理の図鑑』




監修:日本地理学会 編著:山本 健太 編著:長谷川 直子 執筆:宇根 寛 執筆:平野 淳平 執筆:矢野 桂司 執筆:秋山 千亜紀 執筆:宋 苑瑞

定価
1,430円(本体1,300円+税)
発売日
サイズ
四六判
ISBN
9784046060044

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