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ものがたり

『絶体絶命ゲーム3 東京迷路を駆けぬけろ!』【新刊発売!リプレイ連載】第3回


11月9日発売の最新刊『絶体絶命ゲーム12 ねらわれた歌姫を守れ!』には、
初代・絶体絶命ゲーム王者が、ふたたび登場。
あの熱いゲームをもう一度読みながら、最新刊を待とう!(全4回)
毎週月曜日更新予定!

◆第3回
[これまでのお話]
今回のゲームは、タイムリミットまでにチェックポイントの場所を推理して、その場所に移動する。
第1、第2チェックポイントまでに次々と脱落者が、そして脱落者には電気ショックがおそいかかる。
次は第3ポイント。場所を示すメールを開いた春馬は、わけがわからず思わず声をあげた。いったいどんなメールだったのか……!?
(この小説は『絶体絶命ゲーム3 東京迷路を駆けぬけろ!』に収録されています)


◆11 1人じゃ解けない

 

「これは、なんなんだ!?」

 添付されていた、ヒント画像に、春馬は頭をかかえた。

 ほかの参加者の様子をうかがうと、未奈は額に八の字のしわをよせ、理子は眉を曇らせ、大樹は首をかしげている。

 奏と竜也は、うしろをむいていて顔は見えない。

 亜久斗はいつもの無表情だ。

「1つ、お知らせだよ。第3チェックポイントでは、最低1人、脱落するよ」

 タツの言葉に、春馬はすかさず質問する。

「全員が時間内にチェックポイントに到着しても、1人は絶対に脱落させるってことですか」

「そうサ。お前さんたち、仲がいいみたいだからね。この先も協力してチェックポイントにむかうだろ。そうすりゃ全員が時間内に到着する可能性があるってわけで、ゲームとしちゃおもしろくない。だから、こっから先は、必ず1人は脱落してもらうよ。ちょっとしたルール変更だ」

 一気に緊張が高まった。

「脱落者は、どうやって決めるったい?」

「教えられないねェ」

「到着順ですか。最下位の人が脱落するとか?」

 未奈の質問に、タツは首を大きく横にふる。

「教えられないって言っただろう。脱落者を決める方法は、お楽しみだよ」

「あの……」と理子が手をあげる。

「なぁに、まだ質問があるのかい?」

「ここで、ゲームをやめることはできないんですか?」

 理子の言葉に、タツは冷ややかに笑って答えた。

「やめたいなら脱落しな。すーぐに楽にしてあげるよォ、電気ショックでね」

「そ、そ、そんな……!」

「いったんゲームに参加したからにゃ、生きるか死ぬかだ。甘えた考えのやつは、あの世行きだ。あぁ、ムダ話をしちまったね。ここのゲームは難問だァ。1人も制限時間内に到着できないかもしれないよ。そうすりゃ問答無用で全員脱落。最悪の結果。それも一興だァね。ハハハハ……」

 大声で笑うタツと鬼吉は、部屋を出ていった。

 

 春馬はもう一度、送られてきたヒント画像を見た。



 なにかの記号だろうか?

 ほかの人にきたヒントも、見たいけど、なにも言える雰囲気じゃない。

 張りつめた緊張と重たい沈黙がつづく。

 その中、春馬はだれかの視線を感じる。

 ふりかえると、部屋のすみにいる亜久斗がじっとこちらを見ている。

 なにか企んでいるのかな?

 ……いや、そうじゃない!

 亜久斗がすぐに出ていかないってことは、彼もまだ、チェックポイントがわからないんだ。

 春馬は、記号のようなヒントをもう一度見た。

 ……そうか、1人のヒントだけではわからないようになっているんだ。

 でも、制限時間内に到着しても脱落させられると聞いて、みんなは疑心暗鬼になっている。

 イエローカードをもらっている春馬と大樹は脱落の候補だし、運動系のゲームで脱落者を決めるとなると、女子は不利だ。

 もっとかんたんにくじ引きやジャンケンになったら、運だよりになる。

 ヒントを見せあって、全員が制限時間内にチェックポイントに着いた場合、だれが脱落になるかわからない。だから、ヒントは見せたくない。

 でも、みんなで協力しないと全員が脱落。だが、協力しても1人が脱落。

 不安が、みんなを孤立させている。

 なんて意地悪なゲームなんだ!

 春馬が視線をむけると、亜久斗は、少しむっとした顔をしている。

 自業自得だ。

 こうなった原因の1つは、亜久斗がぼくたちをだまして脱落させようとしたことだ。

 このままだと、全員が脱落する。

 7人で、ヒントを見せあうしかない。

 亜久斗はそれに気づいた。しかし、自分が言いだしても、だれも信用しない。

 それで、亜久斗は、春馬に助けろと目で訴えているんだ。

 春馬がにらみつけると、亜久斗は肩をすくめる。

 「〜〜〜〜!」

 むかつくが、どうしようもない。

 でも、こんな雰囲気の中では、春馬でも言いだしにくい。どうすればいいんだ?

 そのとき、明るい声で未奈が言ってきた。

「春馬、ヒントを見せあおうよ」

「えっ?」

「なにをそんなに驚いてるの。また協力しようって言ってるのよ」

「あ、そう、うん。そうだよね」

「しっかりして、春馬。チェックポイントの場所がわからないと脱落なんだよ」

 未奈のひと言で、呪縛から解かれたように、みんなの空気がかるくなった。

「ほら、あたしのヒント、見てよ。まったく意味不明なんだから」

 未奈は、なんの警戒もせず、スマホを春馬にむける。



「ぼくのもこれと似ている!」

 線の角度はちがうが、○につながった2本の直線というのは春馬と同じだ。

 春馬も、送られてきた画像を未奈に見せる。

「ほんとうだ。あたしのと似ている」

 ふと見ると、理子が自分のスマホと、春馬たちを交互に見ている。

「理子、どうしたんだ?」

 春馬が声をかけると、理子がほっとした顔をして、おずおずとスマホをさしだした。   

「○と2本の直線なら……多分、わたしのヒントも同じです」



 その話を聞いていた大樹が、腕組みをして考えている。

「おれんは、それとはちがうばい……」

「見せてくれないか?」

 春馬が言うと、大樹はきまり悪そうな顔をする。

「しょうがなか。こういうの背に腹はかえられんっていうんやろう」

「はぁ?」

「春馬たちの話ば聞いとったら、おれのヒントはみんなのとちがう。きっと重要なヒントばい。だけん、おれの脳ミソじゃ、これがなにかわからん。おれの言いたいこつがわかるか?」

「いや」

 春馬だけではない、未奈も理子も首を横にふる。

「おれのヒントは重要ばい。だけん、全員が制限時間内にチェックポイントに到着できたとき、おれば脱落させんでくれ」

 ああ、そういうことか……。

「大樹、その気持ちはみんながおなじだ。でも、脱落者を決めるのは、おそらくタツさんだ」

「あぁ、そうだな……」

「それで、大樹のヒントは見せてくれるのか?」

 大樹は黙りこむ。

「このままだと、チェックポイントの場所がわからないままだぞ」

「わかった、見せるばい」

 大きく深呼吸してから、大樹はスマホのディスプレイを見せた。

「おおげさに言ったくせに、これだけ?」

 未奈が呆れるように言った。

 たしかに、もったいぶったわりには、大樹のヒントは期待外れだった。



「春馬たちのとは、ちいと、かたちがちがうやろう!?」

「線が1本なだけじゃない。これじゃ、たいしたヒントにならない」

 未奈に言われて、大樹は小さくなる。

「アタシたちも参加したほうがよさそうやね」

 奏と竜也も近づいてきた。

 竜也のヒントは、大樹と同じように○に斜めの横線が1本だった。



「アタシの、ほかのとちがうみたい」

 奏がそう言って、ヒントを見せた。



「どうして、奏のだけ丸じゃなくて星なんだ?」

 春馬が言うと、亜久斗が反応する。

「……星だって? ちょっと見せてくれないか」

 亜久斗が近づくと、みんなはスマホのディスプレイを隠す。

「そうか、おれは嫌われているんだったな」

 とうぜんだろう、と言いたかったが、春馬は黙った。

「おれのヒントを見せるよ」

 亜久斗がスマホのディスプレイを見せてくる。



 それでも、亜久斗にスマホを見せる者はいない。

「おれのヒントを見ただろう。みんなのヒントも見せてくれ」

「亜久斗が勝手に見せてきただけでしょう」

 未奈が言うと、大樹と理子がうなずく。

 春馬も思わずうなずきそうになったが、まだチェックポイントの場所がわからない。

 彼の頭脳は、たよりになる。

「しょうがない。ぼくのを見せるよ」

 春馬は亜久斗にヒント画像を見せた。

「全員のを見たいんだ」

「みんなが協力しないとダメってこと?」

 未奈がしぶしぶスマホを出す。理子、大樹、竜也も見せた。

 どれを見ても亜久斗の表情は変わらない。

 最後に奏が見せたが、亜久斗の反応は変わらなかった。

「なにかわかったか?」

 亜久斗は首を横にふり、部屋のすみにもどった。

「なによ! 結局、なにもわからないんじゃない」

 いや、ほんとうになにもわからなかったのだろうか。春馬は疑問に思った。

 どちらにしても、亜久斗には期待できないようだ。

 自分で、謎を解かないとな。

 ヒントはどれも似たような図形だ。奏は☆に1本の直線がつながり、大樹と竜也は〇に1本の直線、ほかの4人は、〇に角度はちがうが2本の直線がつながっている。

 これのどこが東京の場所を示しているというんだ。

 6つの○と1つの☆は、駅だろうか?

 ☆がチェックポイントの駅で、線は路線だろうか?

 春馬が考えていると、ドアが閉まる音がした。

「亜久斗が1人で出ていったよ」

 未奈がため息まじりに言った。

 


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