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ものがたり

『絶体絶命ゲーム3 東京迷路を駆けぬけろ!』【新刊発売!リプレイ連載】第3回


◆15 時間が止まる

 

 春馬は鷺ノ宮駅から電車に乗り、高田馬場駅で乗り換えた。

 時間も、検索どおりだ。

 日曜日の午後で電車は、それなりに混んではいた。

 電車が池袋駅に着くと、たくさんの人が降りて、おなじくらいの人数が乗ってきた。

 その中に、未奈がいた。

 目的地がおなじだから、おなじ電車でも不思議ではない。でも、車両がいっしょになるなんて。

 さっきのマギワの言葉を思いだした。

 ─未奈と春馬の出会いは、夏の『絶体絶命ゲーム』だ。

 春馬は、けがをした秀介の代わりにゲームに参加した。そして、ルール違反をした罰として秋のゲームにも参加させられ、そのときも未奈といっしょだった。

 そして、今回のゲームで、また出会えた。

「あー、よかった」

 未奈が春馬を見て、笑顔になった。

 春馬の顔もほころぶ。

 離れていたのは1時間もないのに、ものすごく久しぶりに会えたような気分だ。

「第4チェックポイントって、上野恩賜公園でいいんだよね」

 未奈に聞かれて、春馬はうなずいた。

 ヒント画像を見せあうと、未奈のは、西郷隆盛像だった。

「ずいぶん、かんたんなヒントなんだな」

 春馬が言うと、未奈は怒ったような顔をする。

「目的地はかんたんだけど、車で連れていかれたのがぜんぜん知らない場所で、大変だったのよ」

 未奈は、東武東上線のときわ台駅と都営三田線の本蓮沼駅の間で車を降ろされたと言う。

「東上線を選んで、池袋で乗り換えたんだな」

「だって、三田線は地下鉄だから、入り口が見つけにくいでしょう。それに比べて東上線は地上を走っているから、見のがす心配がないと思って」

 春馬は小さくうなずいた。

 彼女の直感と判断力は、あいかわらず優れている。彼女が都営三田線を選んでいたら、池袋駅で再会はできなかった。

 電車は、上野駅方面にむかっている。

 春馬は横目で未奈を見た。彼女は意志の強そうな顔でじっと窓の外を見ている。

 マギワのくれたヒントを思いだす。

 ─2人が助かる方法が1つだけある。

「ぼくが守らないと……」

「いま、なにか言った?」

「い、いや、なんでもない」

「ねえ、春馬。みんな、無事に上野にこられるかな?」

 窓の外に視線をうつして、未奈が聞いた。

 チェックポイントの上野恩賜公園には、不忍池、美術館、動物園など、たくさんある。

 ヒントには事欠かない。

 もし、全員が時間内に到着したら、だれが脱落になるんだろう……。

「まだゲームはつづくね」

「亜久斗がここで脱落するとは思えないからな」

 ゲームがつづくかぎり、春馬と未奈はいっしょにいられる。こうして話もできる。

 でも、それはいつかは終わってしまう。

 ほんとうなら、学校のことや友人のこと、もっと、なんてことない話がしたい。

「ねぇ、あれは理子じゃない?」

 未奈の声に春馬が目をむけると、山手線とならんで走るJR京浜東北線の車内に理子が見えた。

 彼女はひとりぼっちで不安そうだ。

「よかった。ちゃんと上野にむかっているみたいだな」

 そう言いながら、気持ちは複雑だ。

 全員で助かることはできないのだから……。

 そのとき、春馬たちの乗っている電車が、ゆるやかにスピードを落とした。駅の手前で止まる。

 ならんで走っていた京浜東北線が、先に上野駅に入っていく。

「どうしたんだろう?」

 なかなか電車は動かない。

「停止信号です。少々、お待ちください」と車内放送がかかる。

「時間は大丈夫かな?」

「だいじょうぶ、間にあうよ」

 春馬は自分に言い聞かせるように言った。

 待っている時間が、すごく長く感じる。

「─これより発車します。お立ちのかたはご注意ください」

 車内放送が入って、電車が動きだした。

 春馬と未奈は胸をなでおろす。

 電車が上野駅の3番ホームに到着するとすぐに、2人は飛び降りた。

  4時53分

 

「公園口から出れば、上野恩賜公園はすぐだ! いそごう」

 春馬と未奈が公園口にむかって走りだそうとしたとき、4番ホームの京浜東北線に目がいった。

 理子を乗せたまま、電車が動きだす。

「えっ、なぜ降りなかったんだ!?」

「─理子を助けにいく」

 未奈が、まだとまっていた山手線にもどろうとする。

「ダメだ! リミットまで、あと6分しかないんだ」

 春馬は未奈の手をつかんでとめた。

「まだ間にあうよ。この電車に乗って、次の駅で理子を捕まえて、すぐに引きかえすの」

「今でもギリギリなんだぞ!」

「間にあうってば!」

 発車を知らせるメロディが、ホームに流れる。

「前のとき、春馬はみんなを助けようとしたじゃない!」

「ぼくだって、理子を助けたい。でも、時間が……!」

 山手線に乗って、次の御徒町駅まで、2分。

 むかいのホームにいる理子を電車から降ろし、すぐに、反対方向の山手線か京浜東北線に乗る。

 電車の待ち時間に1分はかかるだろう。

 上野駅まで、もどってくるのにまた2分。

 最速でも5分はかかる。そこから公園までいくのは……。

「ダメだ……どうしても間にあわない」

「理子はPKのとき、ずっと春馬を応援していたのよ!!」

「知ってるよ! それでも、助けにはいけない!」

「あたし、1人でもいく」

 春馬は未奈の手をはなさない。

「手、はなしてよ!」

「未奈をいかせることは、絶対にできない!」

   プシュー

 音がして、山手線のドアが閉まる。

 未奈は、くやしそうに立ちつくしている。

「走ろう、未奈……。ぼくたちが脱落したら、元も子もない」

「わかってる。でも……」

「どうした?」

「東京タワーで、理子は高所恐怖症のあたしを勇気づけてくれた。それなのに……」

「御徒町駅で気がついて、もどってくるかもしれない……」

 春馬は言葉がつづかなかった。

 気がつくと、もう4時55分になっている。

「未奈、急ごう。このままだと、ぼくたちも危ない!」

 2人は、走りだす。

 上野駅は人でいっぱいだ。

「なんなの、この人の数?」

「パンダを見にきた人だろうな。帰りの時間に、ぶつかってしまったんだ!」

 人をかきわけるようにして、春馬と未奈は、公園口の改札へむかう。

 改札から出ても、ぎっしりと人がいる。ほとんどが駅にむかってくる人なので、なかなか前に進めない。

 目の前の道路をわたってすぐ先が、上野恩賜公園なのに、たどり着けない。

「この人たち、どうにかならないの!?」

 少し歩いても、前からきた大人たちに押しもどされてしまう。

 こんなとき、子どもは非力だ。

「あれって、竜也じゃない!?」

 未奈に言われて目をむけると、春馬たちの少しうしろで、竜也が必死に前に進もうとしている。

  4時58分

 

「こうなったら、体当たりして、ムリヤリに進もう」

「でも、イエローカードになるかもしれないわよ。春馬は2枚めになって脱落でしょう!?」

 どうすればいいんだ。せめて、この人たちが立ち止まってくれたら。

 そのとき、不思議なことがおきた。

 駅にむかっていた人たちが、とつぜん立ちどまったのだ。

「春馬、これって……」

「あぁ……」

 公園から、透きとおるような美しい歌声が聞こえてきた。

 人々が思わず足を止めて、聞き入っている。

 心が震えるようなここちいい歌声に、まるで時間が止まってしまったようだ。

「この声は…………奏だ。奏が、歌っている」

 



「でも、どうして?」

「そうか、そういうことか!」

 春馬は未奈の手をとると、歌に聞き入って立ち止まった人の間を、すりぬけていく。
 おなじように、竜也も走っている。

 こんなことができるなんて……。

 奏は、歌うことで、春馬たちを助けようとしてるんだ。

 たくさんの人が、彼女の歌声を聞いて、すべての動きを止めた。

 彼女の歌には、すごいパワーがあるんだ。

 なんて、不思議なんだ。

 奏の歌を聞いていると、涙があふれてくる。

 春馬と未奈は道路をわたって、上野恩賜公園に入った。竜也も遅れて飛びこむ。

   ブルブルブル……

  第4チェックポイント 到着

 ぎりぎり間にあった。
 時間は4時59分だ。

 春馬たちが到着したのを確認して、奏は歌うことをやめた。

 彼女の歌声を聞こうと、たくさんの人が集まってきていた。

 中には号泣している人もいる。

 先に到着していた亜久斗も、奏の歌を聞いていたらしい。

 さりげなく、目もとをぬぐうのが見えた。

「うわァ、なんなんだい、この人たちは!」

 文句を言いながら、タツがあらわれた。

「これじゃ、収拾がつかないじゃないか! ついておいで、おまえさんたち!」

 タツは春馬たちを、近くにとめてあったバスに連れていく。

 第4チェックポイントに到着できたのは、奏、亜久斗、春馬、未奈、竜也の5人だ。

「脱落は─二階堂理子ね」

 バスに乗ると、タツが宣言した。

 全員のスマホに、メールが送られてくる。

 レンガ造りの東京駅の前で、理子が倒れている。

 彼女の体は、ガクガクとけいれんしていた。

「春……馬……くん……たすけ……て……」

 理子の声がとだえる。春馬は唇をかんだ。

「理子は、チェックポイントが東京駅だと思ってたらしい。ざんねんだったねェ」

 助けられなかった。

 ……助けなかった。

 この後悔は、一生つづくだろう。

 でも、いまは、考えちゃダメだ。目の前の戦いに集中するんだ。

 でなければ……未奈を、守ることができない。


 



◆16 なさけ無用の脱落者予告

 

 春馬たちは、上野駅近くの駐車場にとまったバスに乗っていた。

 運転席には鬼吉が、バスガイドのように、最前列にタツが座っている。

 バスの中にいるのは、春馬、未奈、奏、竜也。それに亜久斗だ。

 「きゃっ……!」

 とつぜん、まんなかあたりに座っていた奏が、奇声をあげた。

「おい、どうした!」

 奏は体をぶるぶると震わせ、歯を食いしばっている。

 これは……電気ショックか?

「竜也、奏にさわっちゃダメだ!」

 でも……どうして、彼女が?

「上野恩賜公園で、あんなに大きな声で歌うなんて、迷惑行為に決まっているだろう」

 タツは、めんどうくさそうに説明をする。

「イエローカードということ?」

 未奈の問いに、「もちろんサ」とタツが答える。

「そんなのおかしい! 彼女の歌を迷惑に思った人はいないはずです!」

 春馬も同じ考えだ。

「タツさんだって、奏の歌に聞き入ってましたよね」

「あぁ、彼女の歌声は最高だねェ。あたしゃ、魂を持っていかれそうだったよ。まぢかで聞けて最高だったね。……でも、それとこれは、話はべっこだ」

「ど、どうしてですか?」

「彼女の歌を聞いて、立ち止まった人がたくさんいただろう。中には横断歩道をわたっていた人もいた。信号が赤になっても、彼女の歌を聞いて立ちつくしていたよ。これは迷惑だろう」

「それは、その人が悪いんです。奏のせいじゃない!」と春馬。

「そんな理屈は通用しないよ」

「だ……大丈夫よ……覚悟して、やったことやから」

 1分間の電気ショックに耐えた奏が、肩で息をしながら言った。

「奏、ごめんよ。あの歌声のおかげで、ぼくたちは間にあったんだ」

「それに、感動的だったよ。あたし、奏のファンになっちゃった」

「おたがいさまや。春馬と未奈がいなかったら、アタシも竜也も、とっくに脱落しとる」

 つらそうな笑顔の奏を見て、春馬は胸をしめつけられる思いだ。

 このゲームで勝ち残れるのは、たったの1人だ。

 今、助けてくれた奏も、いつかは敵になる。

 でも、彼女の夢をかなえてあげたい。

 歌うだけで、多くの人に感動を与えられる。そんなことができる人は、世界でも、ほんのひとにぎりしかいないのに……。

「ところで、お前さんたち、ここで重大発表だァ!」

 タツの言葉に、春馬たちがいっせいにふりむく。

「今回の『絶体絶命ゲーム』、残りのゲームは、たったの2つだよ! ……最初に言ったけど、勝ち残れるのはたったの1人さァ。ってことはァ?」

 メンバーの中に、サッと緊張が走る。

 残っているのは春馬、未奈、奏、竜也、亜久斗の5人。

 この中で、勝つのは1人。4人は脱落する。

「もちろん、次のチェックポイントも、だれか1人に脱落してもらうよ」

 タツはゆっくりと視線をめぐらせ、1人1人の顔を見、そして、最後に1人に目をとめた。

 ─奏だ。

「……おい、待て! なんでや!」

 竜也がタツにつめ寄る。

「奏は、イエローカードをもらった。その罰だよ」

 竜也は、じっとタツを睨みつけている。

「皮肉だね。お前さんが守ろうとした奏は、逆にお前さんたちのためにイエローカードをもらっちまったんだ」

「うるせぇ……!」

「あたしを殴りたいなら、殴ってみるかィ?」

 タツは挑発するように竜也を睨みかえす。

「あたしに指1本でも触れたら、レッドカードだ。一発で脱落さァ! 奏を守るどころじゃないね。アハハハハハハ!」

 タツの笑い声に、竜也がこぶしをにぎりしめる。

「竜也、やめて!」

「挑発に乗ったらダメだ!」

 未奈と春馬が、竜也とタツの間に入る。

「あぁ、またお前さんたちかィ。ほんとうにバカだね、人がよすぎだよ。ここで竜也と奏が脱落すりゃ、お前さんたちには好都合じゃないか」

「そ、それはそうかもしれないけど……」

 春馬は、言葉がつづかなかった。

「奏もまだ、脱落すると決まったわけじゃないよ。次のチェックポイント、だれかが制限時間に間にあわないかもしれないだろ。どうしても彼女を脱落させたくないってんなら、なにか方法を考えるんだねェ」

「どうしたらいいんや!?」

「教えるわけないじゃない。アハハハハ!」

 笑って挑発したタツだが、竜也は怒りをじっとこらえる。

 

「さて、外の騒ぎは治まったようだ。そろそろ、次のゲームを始めようかねェ」

 春馬たちはバスを降ろされた。

 車が50台ほどとまれる広い駐車場だ。

   ブルブルブル……

 春馬たちのスマホに、メールが届いた。
 

  第5チェックポイント 制限時間は、午後6時30分

  時間オーバーは─脱落
 

 いつものように添付画像がついている。

 画像を開くとまたおかしな記号だ。



「のこり5人で□が5つ。5人が協力すれば答えがわかる仕組みだ」

 春馬はつぶやいた。
 現在の時刻は
午後5時25分

 全員が制限時間に間にあった場合、脱落するのは奏だ。
 

「春馬……どうしよう」

 未奈が声をかけてくる。

「こまったな」

「ヒントを見せあおうじゃないか」

 なにごともないかのように声をかけてきたのは、亜久斗だ。

 春馬は、未奈と顔を見あわせる。

「迷う必要はないだろう。制限時間まで1時間しかないんだ。このままだと、全員が脱落だ」

「それはわかってる。でも……」

 春馬は、竜也と奏をちらりと見た。

「あの2人のことなら、気にする必要はない。いい方法がある」

 そう言って亜久斗は、身をよせあっている奏と竜也に声をかけた。

「今のままだと、全員がここで脱落になる」

「おまえの話は聞かへん!」

 竜也が言いはなつが、亜久斗は気にもとめていないようだ。

「それなら、奏を助ける方法を教えることはできないな」

「なんやって!?」と竜也。

 春馬も耳をうたがった。

 奏を助ける方法を、思いついたっていうのか!?

「かんたんだよ。竜也が、チェックポイントにこなければいいんだ」

 亜久斗のアイディアに、春馬は眉をひそめた。

「別に、逆でもいい。奏が脱落すれば、竜也が残れる。どちらでも、おれはかまわない。おたがいのことを思うなら、そういう選択肢もあるはずだ」

「……少し時間をくれへんか。奏と相談して決める」

 竜也はそう言うと、奏といっしょに春馬たちから離れていった。

 そのとき、春馬はなにものかの視線を感じてふりかえる。

 駐車場にとまった黒い車の中から、黒服の男がこちらを見ている。

「春馬、あれを見て」

 未奈に言われて見あげると、1台のドローンが春馬たちの上を旋回している。

「監視されてるのかな?」

 これまでにも、いたんだろうか。

「いやな感じね」

「それよりも、今はあの2人だ」

 小声で話しあっていた竜也と奏は、今はなにか、言いあらそっているようだ。

「じつは、もう1つ方法があるんだけどな……」

 春馬は、まわりに聞こえないように、小声で言った。

「えっ、なに?」

「─4人で協力して、亜久斗を倒すんだ」

「あっ!」

 ヒントが5つそろわなければチェックポイントがわからないとは、かぎらない。

 もし、1つくらい欠けていても推理できるとしたら、春馬、未奈、奏、竜也がヒントを見せあい4人でチェックポイントにむかえばいい。

 それで、亜久斗を脱落させられる。

「なにを、こそこそ相談しているんだ」

 亜久斗が春馬のそばにやってくる。

「いや、なんでもない」

「1つ忠告しておくけど、その考えは、やめたほうが賢明だぞ」

 見透かしたように亜久斗が言った。

「なんの話だ?」

「とぼけなくてもいい。春馬は人をだますのが苦手だし、卑怯な手段は使えないだろう」

 春馬の考えは、完全に見やぶられているようだ。

「おれを仲間はずれにして、チェックポイントがわからなかったらどうするんだ。おまえたちがどんなにあやまっても、おれは絶対にヒントを見せないぞ。たとえ、全員で脱落になってもな」

 はったりに決まってる。

 しかし、ここまではっきり言われると、効果は大きい。

「それにだ、4人のヒントでチェックポイントがわかったとしても、おれはおまえたちを尾行すればいい。春馬と奏はイエローカードを1枚もらっているから、おかしな行動はできないだろう」

「最初から、そんなことは考えてないよ」

 春馬が、なにくわぬ顔で否定した。

 そのとき、竜也が1人でこちらにもどってきた。

 奏も、少し遅れてやってくる。

「おまえたちと協力する」

 竜也が、決意の表情で言った。

 奏は下をむいたままだ。

 目を合わせないようにしているらしい。

「時間は貴重だ。すぐにヒントを見せあおう」

 亜久斗が言って、5人はスマホのディスプレイを見せる。

 

未奈のヒント。
 




亜久斗のヒント。




竜也のヒント。




奏のヒント。




すべてをあわせると、
 



 5つのヒントが集まれば、答えはかんたんに出た。

「上からこのまま読むだけでいいみたいね。ODAIBA─お台場でしょう」

「ひねりや引っかけは……ないようだな」と春馬。

「ない。お台場で決まりだ」

 亜久斗が断言する。

「お台場って、島みたいなとこやろう。テレビ局やショッピングセンターがあるんやんな」

 そう言った竜也を、春馬はちらりと見た。

 彼はチェックポイントにこないで脱落するつもりなのだろうか?

「上野からお台場なら、遠くないよね」と未奈。

「そうだな。乗り換え検索しないと正確にはわからないけど、30分くらいで着くはずだ」

 トラブルがなければ、余裕で到着する。

 未奈が、アプリで検索をする。

「上野駅を5時37分発のJR山手線・外回りに乗ると、5時48分に新橋駅に到着するわ。そこで5時57分発のゆりかもめに乗れば、6時10分にお台場海浜公園駅に到着する」

「竜也はどうするんだ?」

 春馬が聞くと、竜也は意外なことを口にした。

「オレもいく」

「え? でも、それじゃあ……」

「……奏、悪いけど。おまえには脱落してもらう」

 竜也が、冷ややかに笑った。




 



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