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【先行連載】第10回つばさ文庫小説賞《特別賞》受賞作『学校の怪異談 真堂レイはだませない』第8回1-7 さあ考えよう。どうして幽霊は泣いているのか


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表紙・もくじページ

【1-7 さあ考えよう。どうして幽霊は泣いているのか】

 屋上へとつづく階段、理科室の奥にある準備室、水の張っていないプール――学校のひとけのない場所を、わたしと先輩はいくつもめぐった。

 そして、

「先輩、いました……!」

 校舎(こうしゃ)わきの、使われていない焼却炉(しょうきゃくろ)の裏に、幽霊さんは身を隠(かく)すようにしてうずくまっていた。

 幽霊さんの顔は、いまも涙でぬれている。

「そうか、そこにいるのか」

「先輩には、視(み)えませんか?」

「うむ。なにも視えないよ」

 先輩は残念そうに言った。それを聞いて、わたしも残念だった。

 やっぱり、わたしの世界と先輩の世界は、交わらないんだ。

 ……いや、いまは残念がってるときじゃない。

 わたしは幽霊さんのほうに向きなおって、大きく息を吐いてから、

「あ、あのっ」

 と呼びかけた。

 ビクッと肩を震(ふる)わせる幽霊さんを見て、わたしの胸にヒビが入ったかのような痛みが走る。幽霊さんはきっと、だれかに見つけられるたびに、あんな風におびえていたんだ。

「ま、まってください! 行かないで!」

 逃げだそうとする幽霊さんに、わたしは必死で呼びかけた。だけどその必死さが、よけいに彼女をおびえさせてしまう。

 どうしよう、どうしよう、どうしよう。

 このままじゃ、わたしのせいで。わたしの、わたしのせいで――

「ちがうだろ、柊(しゅう)

 先輩が、焦(あせ)ってとり乱すわたしの肩に、そっと手を置く。

「その言葉はちがう。そうじゃなかったはずだ」

 先輩の声が、耳から入り、全身にひびく。わたしの中にあった焦りが、魔法のように消える。

 そうだ。この言葉はちがう。胸に手を当て、わたしは長く息を吐く。

 ……よし。

「Just a moment please(待ってください).」

 わたしがそう言うと、ふたたび幽霊さんはビクッと肩を震わせた。

 さっきとちがうのは、おびえているのではなく、たぶんおどろいているのだということ。

「Just a moment please.Please listen to me(待ってください。話を聞いてください).」

 幽霊さんはあきらかに、わたしの言葉に耳をかたむけている。

 先輩の言ったとおりだ。やっぱり幽霊さんは、日本語がわからなかったんだ。

 前もって用意しておいた英文を読みながら、わたしは幽霊さんにうったえつづけた。

 さっきはひどいことを言ってごめんなさい。あなたを傷(きず)つけるつもりはありませんでした。わたしはあなたに、伝えたいことがあります。

 あなたはすでに亡(な)くなっているんです。だから、隠れる必要はありません。

 あなたを傷つけていた人たちは、みんないなくなりました。だから、あなたにはもう、学校にとらわれる理由がないんです。

「I'll help you too(ボクも手伝うよ).」

 先輩も幽霊さんに呼びかける。姿が見えていないので、目線はおかしな方向を向いていた。

「I pray for your soul may rest in peace(キミの冥福をボクは祈るよ).」

「m、me too(わ、わたしも)!」

 幽霊さんは、わたしと先輩を交互(こうご)に見る。その目にはもう、涙を浮かべてはいなかった。

「Sara(サラ)」

 やがて、そっとつぶやく幽霊さん。

「サラ……そっか、サラっていうんですね? あなたの名前はサラさん。えーっと、グ、グッド、good name(グッドネーム)です!」

 必死に言葉をつむぐわたしがおかしかったのか、サラさんの表情が、フワッと花が咲くようにほころんだ。

 と、思った、そのとき。

 目の前のサラさんが、一瞬で消えてしまった。

 なんの前ぶれもなく、なんの痕跡(こんせき)も残さないで。サラさんはわたしたちの前からいなくなってしまった。

「柊、どうしたんだい?」

「……サラさんが、消えてしまいました」

「そっか。いってしまったんだね」

 わたしは空を見上げた。抜けるような青空が、どこまでも広がっていた。

 

 

 

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<第9回は2022年11月29日更新予定です!>

※実際の書籍と内容が一部変更になることがあります。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体・伝承等とは一切関係ありません。


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学校の怪異談 真堂レイはだませない

  • 作:星奈 さき 絵:negiyan
  • 【定価】770円(本体700円+税)
  • 【発売日】
  • 【サイズ】新書判
  • 【ISBN】9784046322104

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