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知る・まなぶ

どっちが強い!? 記憶の島 第3話-30


 …どれだけ時間がたっただろうか。気がつくと君は海岸にいた。砂浜じゃない、どういうわけか、やわらかな草地の上だ。
「大丈夫?」
 だれかがそう言ってのぞきこんでいる。女性の声だ。くり色のかみが風にゆれる様子を、君はぼうっとして見ていた。
「マ…ママ!」
 近くでソフィーの声がした。そうか、ソフィーの母・クレアだ!
 君は重たく感じる頭を、声のしたほうにかたむける。見つめた先でソフィーとクレアがだき合ってよろこんでいた。クレアは、ひとしきり再会のよろこびをかみしめると、君のほうへやってきて、声をかけてきた。
「大丈夫? 立てるかしら? ここは居住区ドーム。あなた達が落ちたのは、となりの農場にあるほし草の山の上よ。自給自足のためにウシやニワトリなどを飼っているの。あと少し島の外側に向かって落下していたら海の中だったわ。あぶなかったわね」
 君は体を起こし、周りを見た。小さな農場に数頭のウシがいて、彼らの飼料の山がへこんでいる。あそこに落ちたんだ。
「うーん…。あれ? ここは?」
 あとからジェイクとターゼンも起き出したので、君たちはクレアにみちびかれ石の階段を上がった。居住区のほうではシェリーが先に起きていて、見なれないカップを使って水分補給をしている。シェリーの後ろを見ると、シンプルな形の白いドームの家が目に入った。クレアの家だろうか。
「あなたがソフィーのお母さんのクレアさんですね。いったいあなたの身に何が起こったんですか?」
 君はクレアの前に出て聞いた。そこでクレアから語られたのは島の秘密だった。

 クレアのつとめていた施設はかなり昔に設立され、種の再導入をこころみて絶滅種を人工繁殖して自然に帰すために少しずつふやしていた。
そのためにも施設を大きくしたいと思っていたところに、ディエゴという男がやってきて、彼が持っている島をまるごと買い取らないかと持ちかけてきたのだ。
 ところがディエゴという男、実は希少価値の高い動物の売買などに手をそめる環境マフィアだったのだ! 
 ディエゴはクレアたちをだまし、繁殖させた絶滅種をこの島まで船で運ばせた。
 ディエゴたちは今までたくわえてきた財力を使って、技術者をよびよせ、あらゆる気候と環境を再現できる人工島を作らせた。それによってひとつの島の中に、さまざまな気候の土地をつくったのだ。クレアも後からよびよせられた研究者のひとりだった。
「ぼう大な飼育コストや資源は、絶滅種のはくせいの売買でまかなっているの」
「そんな売買、ネットでも見たことない――」
 シェリーの言葉をクレアはさえぎった。
「富裕層――お金持ちね、それも王族のようなとてつもないお金持ち。彼らだけに開かれている秘密のマーケットよ。マフィアたちは絶滅種のハンティングを楽しんでいる…」
 そう言ってクレアはくやしそうに下を向いた。
「――私の紹介は、もうすんだかな?」
 その声にクレアがハッとしてふり返った。白い建物のわきから、真っ赤なスーツに毛皮のストール、黒光りする靴といったいでたちの男が、黒服の男数名とともに現れた。
「お前が環境マフィアのボス・ディエゴだな!」
 君とジェイクはとっさに仲間たちを守るように一歩前に出て言った。
「どこまで話してくれたか聞いてなかったが、いいだろう。続きはゆっくり私が話してやる。どうせ知ってしまったら、この島から生きて出られないのだから――」
 いつの間にか君たちを黒服の男たちが取りかこんでいた。
 あっという間に君たちはつかまってしまった!

▶第4話に続く
 


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