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つばさ文庫小説賞《大賞》受賞・吹井乃菜さんの新シリーズが読める!
超一流プロの頭脳が手に入る極秘(ごくひ)アプリで、芽衣と大地が大事件を解決する!
誘拐事件に巻きこまれて、危機からの大脱出! ドキドキの物語が始まる!
(全5回・毎週火曜更新予定♪)
19秒でわかる!「超一流インストール」の内容がわかる公式動画
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・夏沢芽衣(なつざわ めい) 小6
得意なものも才能もないけど、勇気は――ある!
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・速水大地(はやみ だいち) 小6
クールに見えて、やさしい!?
運動神経がバツグン!
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『プロ✕プロ』
超一流プロの頭脳と技が手に入る極秘アプリ!
ただし、3時間だけ!?
吹井乃菜さんの新シリーズをどこよりも早くヨメルバで大公開!
『超一流インストール プロの力で大事件解決!?』は2024年1月11日発売予定です! お楽しみに♪
第5回 許せないこと
「はぁああーーー」
つぎの日の昼休み。あたしは、校庭のすみの木かげで、ひざを抱えていた。
いつもは教室ですごすことが多いけど、今日は、教室にはいられなかった。
昨日の算数のテストで、プリントの裏に書いていた落書きのせいだ。
算数好きの青山先生によると、なんだかすごい数式だったらしく、あれは正式に学会に発表すべきだとか、いっしょに数学オリンピックを目指そうとか、休み時間のたびに猛烈(もうれつ)なアピールをされて困っていた。昼休みもあたしをさがしまわっていたから、逃げてきたんだ。
こうなったのも自業自得だから仕方ないけど、ホント、失敗しちゃった。
『プロ×プロ』の能力は、使い方をまちがったらこんなに大変なことになるんだ。
「どうしたの、芽衣(めい)ちゃん。元気ないね」
となりにすわっている花音ちゃんが、あたしの顔をのぞきこんだ。
「給食、足りなかったの?」
「花音(かのん)ちゃん……あたしだって落ちこむことくらいあるんだよ?」
あたしの元気がないときは、おなかが空いてるときだと思っているらしい。
目の前の運動場では、うちのクラスの男子たちがサッカーをして遊んでいた。
「大地(だいち)、行けーーーー!」
声がひびいたので、そちらを見る。
パスを受けた大地が、ボールをドリブルしながら走っている。
相手のディフェンスを次々とかわし、グラウンドを縦横無尽(じゅうおうむじん)にかけぬける。
ゴール前で放ったシュートが、あざやかにネットをゆらした。
わあっ、と歓声が上がった。大地は友だちとハイタッチをして笑っている。
やるなあ、大地。運動神経が抜群(ばつぐん)で、どんなスポーツでも見事にこなしてしまう。味方に大地がいたら、チームは勝利を約束されたようなものだ。
「かっこいいなあ、速水くん」
花音ちゃんが胸の前で手を組んで、その様子を見ていた。
気がつくと、あたしたちの近くにいた女子たちも、グラウンドのほうを見て、きゃあきゃあ言ってさわいでいる。いつのまにか、大地が注目を集めていたらしい。
「いいよね、芽衣ちゃんは。速水くんと幼なじみなんて、ホントうらやましいよ」
「家がとなりってだけだよ。すごいとは思うけど、そんなにかっこいいかなあ?」
昔からいっしょにいるから、あたし的にはほとんど家族みたいな感じで、よくわからないんだよね。
「かっこいいよ! んもう、なんでわかんないかなあ。ほらこれ、見てよ」
花音ちゃんは、持っていた手帳を開いた。
ページの間から取りだしたのは、一枚の写真だった。去年の運動会のときの写真で、リレーでゴールテープを切っている瞬間の大地が写っている。
うちの学校では、行事の写真は、学校でたのんだカメラマンが撮影(さつえい)したものを、あとから自由に選んで買えるようになっている。大地しか写ってないのに、この一枚だけが異常に売れてたから、写真をプリントする業者さんから、発注ミスじゃないかって問い合わせがあったんだとか。
「花音ちゃんも買ってたんだ、これ」
「えへへ、だってこれ、ベストショットじゃない?」
花音ちゃんにとっては推しのアイドルみたいな存在なのかもしれない。
と、そのときだった。
「なんだ、これ」
ひょいっと後ろから手がのびてきて、写真が目の前から消えた。
降りかえると、あたしたちの後ろに一人の男子がいて、その写真をながめていた。
となりのクラスの馬場(ばば)っていう男子だ。体が大きくて、いつもいばっている。
「速水じゃん。へえ、白石って速水のこと好きなんだ」
馬場は、ニヤニヤしながら言った。花音ちゃんは真っ赤になって、何も言えなくなっている。
「そうだ、白石。これ、おれにくれよ。絶対高く売れるぞ。あいつ、最近、うちのクラスの女子にも人気あるからな」
「は?」
あたしは馬場をにらんだ。花音ちゃんをからかいたいだけなんだ。
それがわかったから、余計に腹が立った。
「返しなさいよ。なんで人のもの、勝手に取ってるのよ 」
「うるさいな、夏沢には言ってないだろ。いいよな、白石。もらってくぜ」
馬場は、ひらひらと写真をふって、あたしたちに背中を向けた。
「ちょっと! 待ちなさいよ!」
どなったあたしの服のそでを、花音ちゃんが引っぱった。
「芽衣ちゃん、いいよ! あきらめるから!」
そう言ったけど、花音ちゃんの顔は泣きだしそうになっている。
それを見たら、あたしは、おとなしくしていられなかった。
「よくないよ! だって、あれは花音ちゃんのものだもん。勝手に取っていいわけない」
あたしは馬場を追いかけると、その前に立ちふさがった。
「あ? じゃまだな。そこ、どけよ」
「どかない。それは、あんたのものじゃないでしょう。返して」
「なんだよ、そんなにこれが大事なのか? あ、わかったぞ! おまえも速水のこと好きなんだろ。そういやおまえら、仲いいもんな」
馬場は、まったくズレたことを言ってる。くだらなすぎて、言い返すのもばかばかしくなる。
「人の大切なものをうばうなんて、ゆるせない! 返して!」
あたしは馬場が持っていた写真に手をのばした。
「なにすんだよ!」
突きとばされて、尻もちをついた。だけど、あたしはすぐに立ちあがって、馬場に飛びかかった。体が大きいだけあって、力も強い。それでも引き下がる気はなかった。
突きとばされるたびに向かって行ったから、だんだん馬場も息があがってきて、うんざりしはじめる。
「ああもう、しつこい~~~~~~~っ!」
「しつこくて悪かったわね! 返しなさいよ、あと、からかったことも、あやまりなさいよ!」
「ふ、ふざけんな、なんでおれが!」
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あたしと馬場が 言いあっていると、
「こらーーー! なにやってるんですか、そこーー!」
保健室の先生が、こっちに向かって走ってきた。
近くにいた女子たちが、呼んできてくれたらしい。
先生の姿を見たとたん、馬場があわてて、逃げだした。
「芽衣ちゃん、だいじょうぶ!?」
真っ青になってかけよってきた花音ちゃんに、あたしは写真を差しだした。
「ごめん。ちょっと折れちゃった…… 」
馬場が逃げるときに放りだしていったのだ。
花音ちゃんは写真よりも、あたしを見て目をうるませた。
「……ありがとう、芽衣ちゃん」
「ううん。破れなくてよかった」
さわぎに気づいた大地たちもこっちに走ってきたから、花音ちゃんはあわてて写真をかくした。 やってきた先生に事情を説明して、なんとかその場は収まった。
その日の帰り道。
「まったく、びっくりさせるなよ。馬場とケンカなんて。かなうわけないだろ」
大地はちょっと怒っていた。
「だって、ゆるせなかったんだよ」
無茶をしてしまったのは認めるけど、後悔はしていなかった。また同じことが起きたら、相手がだれだろうと、やっぱりあたしは向かって行ってしまうと思う。
「ああいうの、大っきらいなんだよ。人の大事なものを取って、気持ちまでふみにじって、へらへら笑ってたりするのが」
泣きだしそうな花音ちゃんの顔を見たら、だまっていられなかった。写真を取りかえしてあげたかったのと同時に、まちがってると思うことに負けたくなかったんだ。
「まあ、芽衣らしいと言えば、芽衣らしいけどな」
大地はそう言って、ため息をついた。
昔から、あたしのこういうところ、一番わかってくれてる。
「だけど、そういうときはまず、いったんよく考えること。飛びかかる前にな」
「うん。……努力する」
あんまり自信はないけど。
「……ママとパパにはだまっててくれる? 男子とケンカしたなんて、心配するから」
「わかったよ。まあ、悪いのは向こうだしな」
大地がそう言ってくれたので、ちょっとホッとした。
「それにしても、白石さん、馬場になにを取られそうになったんだ?」
ふと思いだしたように、大地が言った。
「えっ? ええと――」
口ごもってしまった。大地の写真だなんて、言えるわけない。
「推しのアイドルの写真だったみたい」
これなら、ウソってわけじゃないもんね。
ふうん、って言った大地、自分がアイドル並みにモテてることは、全然気づいていないらしい。
お話の続きは新刊『超一流インストール プロの力で大事件解決!?』を読んでみてね♪
いよいよ2024年1月11日発売です!
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目次と人物紹介のページを先行公開!
【書誌情報】
つばさ小説賞《大賞》受賞作家の新作! 超一流プロになって大事件を解決!
芽衣はふつうの小6で、大地はスポーツも得意な人気者! 二人は誘拐事件に巻きこまれてしまうが、超一流プロの頭脳が手に入る極秘アプリ『プロプロ』で大事件を解決する! つばさ小説賞《大賞》受賞作家の新作!